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『フォースタス博士』感想:★★★☆☆

2011.10.30 Sun

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 NO IMAGEもNO IMAGE、Amazon含めどこにも書籍データがなくて泣いた。
 クリストファー・マーロウによる戯曲「フォースタス博士」は複数の本に収録されているが、今回私が読んだのは岩波文庫の『フォースタス博士』。翻訳者は松尾相、発行は昭和四年一月二十五日、定価は二十銭。
 岩波文庫はかつては★の数で値段を表しており、この頃は星一つで二十銭だったようですよ。昭和一桁の時代には既に郵便による注文も受け付けていたのですね。

 っと話がズレた。
 今回の戯曲の主人公はフォースタス博士。綴りはFaustus、つまりはファウスト。
 1589年には初演が行われていたと言われるこの「フォースタス博士」は、ドイツで出版された『実伝 ファウスト博士』そのものか、その英訳版を読んだマーロウが、ファウスト博士を彼の手で書き直した作品であります。
 マーロウの「フォースタス博士」は、1600年には既に書物としての登録が記録されているものの、実物は現存せず、現存する最古のものは1604年、その後1609年、1611年と版を重ね、1616年には他の作家による改編版が出、1631年まで重版を重ねた後、1663年にはさらに改編版、つまりはマーロウの物とはかなり趣が異なる、が出たのだと言う。
 今回、翻訳者が底本としたのは1901年のWard版であり、これは1604年本に基づいたものである。が、この1604年版も純粋なるマーロウの作とは呼べず、他の作家の手がかなり入っているのだそうな。


 その他の詳しい解説は本書を読んでもらうとして、私の感想としては一言。「『実伝 ファウスト博士』とほぼ一緒だなぁ」に尽きる。
 ファウストの面白可笑しい世界旅行や地獄見学のくだりはかなり割愛されているが、それで特に印象が変わるわけでなし。
 だが翻訳者曰く、
しかしマーロウは、後のレッシングやゲーテの如くフアウストの救濟を考へず、原傳説を忠實に劇化しこれに深刻な表現を與ふることに力めたやうである。現存の半ば以上他人の筆になる不完全なテクストに依て斷言することはできぬけれども、フアウスト本に於ては魔法の興味にのみ動かされ勝ちであつたフアウストに限りなく知識を求め魔法の研究により神の如き權能を得むとする靑年學者の巨人的風丯を與え、信仰を失つた者の痛切な苦悶を寫すことがマーロウの意圖であつたと思はれる。(p.87、解説)

 ……深刻な表現? う、うーん、ゴメンなさい、サッパリ分からなかったや。


 一旦ここで折りたたみ。








 翻訳者の言うような違いは全く分からなかったが、「実伝 ファウスト博士」との違いを言えば、
・ ファウストを諭す良き霊と、唆す悪しき霊が登場すること
(劇として分かりやすくするため?)
・ ファウストは友人でもある魔術師二人から悪魔を呼び出す術の手ほどきを受けること (「実伝」ではファウスト独学)
・ ファウストは最初からメフィストフェレスを指名していること
(「実伝」では呼び出した後に名前を尋ねており、それ以前にはメフィストフェレスの名も存在も知らなかった模様)
・ メフィストフェレスがフランシス派の灰色の老僧姿なのはファウストに命じられたから
(「実伝」ではメフィストフェレス自らその姿をとる)
・ ファウストはルーシファーによって、七罪(傲慢、貪欲、憤怒、嫉妬、貧食、怠惰、淫蕩)を紹介される
(「実伝」では七罪は登場しない。代わりにベリアルが家老や家来を連れてやってくる。ベリアルは最初におもだった七霊(ルチフェル、ベルゼブブ、アシタロテ、サタン、アヌービス、デュティカヌス、ドラフス)を紹介し、その後に他の霊も見せる)
くらいだろうか。

 先輩魔術師から手ほどきを受けて云々との流れで『悪魔の恋』を思い出してしまった。あれも悪魔を呼び出し、いかにその手から逃れるかの物語だった。
 『悪魔の恋』の主人公はファウストと違い、悪魔に決定的な契約書を渡しておらず、更にはマリアの如き強く賢い母親という存在があって救われるのだけれど。
 解説で翻訳者も書いているが、この手の悪魔との契約で破滅するファウストの方が珍しい存在なのだろう。なにせキリストと共に十字架刑に処されることとなった二人の強盗の片割れは、死の寸前に改心したことでキリスト(もしくはマリアの取りなし)によって救われるのだから。死を前に七転八倒するファウストだって、救われておかしくはないのだ。
 けれどもファウストはその救いが自分に与えられるとは信じられず、ただ絶望する。その絶望がメフィストフェレスと交わした悪しき契約のせいで強制的にもたらされたものなのか、それとも彼の本心から発したものなのかは判然としないが。
おゝ、地獄に墮ちた靈魂に定められし終は無い!
何故お前は靈魂を有たぬものでなかつたのか。それとも、何故お前の靈魂は不死なのか。
(略)すべての畜生は幸福だ、死ねば、その魂は間もなく四大に消ゆるのだ。しかし己の霊魂は何時迄も地獄に生きて苛責を受けねばならぬ。(p.64)

 この台詞の後、ファウストもといフォースタス博士はメフィストフィリス(メフィストフェレス)ら悪魔に引っ攫われていく。
 彼にはキリストもマリアも、誰も恩寵を垂れてはくれなかったのだ。



 実は岩波文庫の松尾相訳の前に、筑摩書房の世界文學大系14『古典劇集』収録の平井正穂訳の「フォースタス博士」を読んでいた。
 筑摩世界文學大系18『古典劇集』に収録されている平井正穂の翻訳による「フォースタス博士」も恐らく全く同じ。その前に付けられている作品解説が同じなので。
 平井正穂訳は1932年のボウアズ編集のテキストに依り、現存する「フォースタス博士」の1616年版を採用したと記載されている。ただこれは、松尾相が用いた1604年版に更に他人の手が入ったものである。

 そんな訳で、平井正穂訳版には松尾相訳版にはなかった場面がいくつか挿入されている。
・ 堕落したローマ教皇から、ブルーノーを救う場面の追加
(平井正穂訳版の第三幕 第一場、第二場の一部、ところでブルーノーって誰?)
・ フォースタスに頭に角を生やされた騎士の復讐譚と、その失敗譚の追加
(第四幕 第一場から第四場)
・ 馬買(馬商人)がフォースタスの足をもいでからの展開が違う (第四幕 第五場)
・ フォースタスが御者の荷馬車一台分もの干し草を喰った話の追加
(これは「実伝」の方にはある挿話、第四幕 第六場)
・ 馬商人、御者等のフォースタスの被害者一同の結託と、彼らによるフォースタスへの復讐譚とその顛末の追加 (第四幕 第六場、第七場)
 私が気が付いたのはこれくらい。まぁ、物語に大きな差異を生むような内容ではない。



 マーロウの「フォースタス博士」は他にもいくつもの翻訳がある。折角調べたので以下、見つけた限りを並べてみる。だがそれらが底本としているのが何年版なのかまでは分からなかった。
『フォースタス博士』 松尾相訳、岩波文庫、1871年
『世界文學大系14 古典劇集』 平井正穂訳、筑摩書房、1961年
『筑摩世界文學大系18 古典劇集』 平井正穂訳、筑摩書房、1975年
フォ-スタス博士の悲劇 英語対訳』 佐竹龍照訳注、大学書林、1982年
『英潮社新社英文学叢書カルタゴの女王ダイドウ/フォスタス博士』 永石憲吾訳、英潮社フェニックス、1988年
『エリザベス朝演劇集1 マルタ島のユダヤ人・フォースタス博士』 小田島雄志訳、白水社、1995年
 どれも新本では入手不可。


関連記事:
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テーマ別:ファウスト|レーベル別:岩波文庫
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