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『蜘蛛 (世界恐怖小説全集・11)』感想:★★★☆☆

2015.08.22 Sat

蜘蛛 (1959年) (世界恐怖小説全集〈第11〉)
蜘蛛 (1959年) (世界恐怖小説全集〈第11〉)植田 敏郎

東京創元社 1959
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 H・H・エーベルスの短編集かと思ったが、違ったぜ。
 収録作品は以下。

・「ロカルノの女乞食」 クライスト
・「たてごと」 ケルナー
・「蜘蛛」 エーベルス
・「みいら」 エーベルス
・「死んだユダヤ人」 エーベルス
・「イグナーツ・デンナー」 ホフマン
・「世襲地」 ホフマン

 エーヴェルスとホフマンが同居してるって時点で結構アレだよなぁ……。
 特にどこにも書かれていないけれど、ドイツ縛りでお送りしている模様です。
 あとどうでもいいが、目次では解説は251pからとなっているが、実際は283pから。







 冒頭を飾るのは、有名どころなクライストの「ロカルノの女乞食」。
 次も有名な「たてごと」だが、こうして並べると幽霊に対して抱く主人公達の気持ちが真逆で、なかなか面白い。
 気持ちは真逆なのに最終的に彼らが辿る道が同じなのも、面白い。正負の方向は違えど、強い感情を抱くことは人生を終焉に導くのかもしれない。……が、強い感情を抱くこと無く生きるのは、それはそれで生きていると言えるのか。


 エーヴェルスの「蜘蛛」は、打って変わって都市的な物語。
 金曜日に部屋の主が首を吊る。そんな事件が三週続いたとあるホテル。今やすっかり話題の的となっている件の七号室を借りたのは、医学生の「ぼく」。
 安く借りられた上に、ホテルの持ち主はなんやかんやと世話を焼いてくれる。連続死の担当者である警部からの連絡はやや煩わしいが、全体的には「ぼく」にとって大満足であった。
 だがある日、「ぼく」は気が付いた。この七号室と道を挟んで向かい側の建物に、黒尽くめの素敵な女性がいるのだ。彼女は毎日厭くことなく糸を紡いでいる。
 「ぼく」は彼女にクラリモンドと勝手に名を付け、毎日観察し始めた。彼女も「ぼく」に気が付いたようだった。徐々にクラリモンドに、話したことすらもないのに!、魅入られていく「ぼく」。あれほど熱心だった勉強すら手に付かなくなって……。

 クラリモンド、ってネーミングがもう駄目だよ。前途ある修行僧を食いつぶした女吸血鬼じゃないですか、やだー。と、読者が絶叫できるなかなか憎い作り。
 とは言え、今作のクラリモンドは獲物に淫靡な夢を見せたりはしない。全ては窓越しのお遊びだ。またこの「遊び」が幼稚染みていて、想像すると奇妙に可笑しいのが興味深い。
 誰もが過ごす子供時代。だからこそ子供じみた部分は誰の心の中にも残っているのかもしれない。クラリモンドがくすぐるのは、もう失ってしまったが故に甘美な過去の残響なのやも。



 続いてもエーヴェルスの「みいら」。怪奇小説を書くならば一度は通らなくてはならないのだろうか、題材は「早すぎる埋葬」だ。
 「わたし」は新しい部屋を探して歩き回っていた。漸く良さそうな部屋を見付けたものの、間取り上、隣の部屋の人間に自分の部屋を通さねばならないと言う。
 「わたし」がとんでもないと断ろうとした時、もう一人部屋を見に来た人物があった。「わたし」と同じく部屋探しに疲れ切っていた彼ベッカースの提案で、この妙な間取りの部屋を一緒に使ってみることとなった。
 隣同士としてそれなりに良好な関係を築いていた「わたし」とベッカースだが、ある日訪ねて来た「わたし」の妹エニーは彼を酷く毛嫌いした。それこそ、彼女の病んだ心臓が耐えられないほどに。
 突如発作を起こしたエニーのために、「わたし」とベッカースはそれぞれ医者を探して家を飛び出した。だが「わたし」が医者を連れて戻って来た時には、エニーの姿は見えなくなっており……。

 「早すぎる埋葬」系統の話にしては、得体の知れないお隣さんが犯人という構図はなかなかに現代的。最後に登場するミイラも、異国情緒があってなかなか異端だ。
 途中の謎めいた登場人物ラウレンツは、個人的には蛇足に過ぎないと思うものの、だが実にエーヴェルスらしい。



 都会的なエーヴェルスの短編に続くのは、中世の香り高いホフマンの「イグナーツ・デンナー」。
 善良で忠実なる召使いアンドレスの弱みにつけ込んだイグナーツ・デンナーの奇妙奇天烈な人生が、可能な限り善良であろうとするアンドレスの生活と絡み合って展開する。
 
 デンナーというキャラクター自体は結局地獄落ちする方のファウスト博士やメルモスと同種のキャラクターであり、同二作にも配されていた対となる善良なる存在がアンドレスと、物語は割と典型的ではある。
 が、アンドレスが単なる阿呆や善良なだけの存在ではなく、宝石に心奪われた妻のためにデンナーに協力してしまったりと微妙に人間臭いのが面白い。
 が、今の時代に読むとストーリーラインがやや冗長すぎる。



 「世襲地」も中世の香りのする一篇。舞台となるのは片田舎に建つ城。普段街に暮らしているローデリヒ男爵は、冬の狩りの季節だけこの城を訪れるのが習わしであった。
 今年もまた狩りの季節がやって来た。「わたし」は、男爵に深く信頼されている弁護士である伯父の手伝いとして、今年は一緒に城へと向かうこととなった。
 伯父から聞いていた城周辺での狩りの素晴らしさに心躍らせる「わたし」が出会ったのは、美しくもどこか寂しげな伯爵夫人であった。対して伯爵はどこか厳しく、「わたし」は夫人に同情を抱くのであった。
 伯父の忠告も虚しく、「わたし」は徐々に伯爵夫人へとのぼせ上がっていく。しかし伯爵一族には秘められた過去があり……。

 これもまたストーリーラインがかなり冗長だ。
 が、城、伯爵、夫人、秘められた過去、と王道ド真ん中なせいか、これはこれで良いように思えるから不思議。
 若いって良いよね、と思わせてくれる直情的な「わたし」がなんとも憎めない。対する伯父の歳を重ねた故の落ち着きと知恵が際立つ。



 こうやって全体を見渡すと、エーヴェルスの現代感が結構浮いてる。
 ホフマンほどではないにしろ、彼のストーリーテラーぶりも今となっては冗長なんだけどさ。


シリーズ別:世界恐怖小説全集|ジャンル別:怪奇小説
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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Theme:読んだ本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
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