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『森は生きている』感想★★★★☆

2015.08.11 Tue


森は生きている (岩波少年文庫)
森は生きている (岩波少年文庫)サムイル マルシャーク Samuil Marshak

岩波書店 2000-11-17
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 タイトルだけを見ると、環境問題を扱った作品かのように思えるが、これは『シンデレラ』に代表される継子イジメ物語のロシア版。
 なお原題は"Двенадцать Месяцев"、直訳すると『12か月』。これはこれで『クレヨン王国十二か月の旅』を連想する……のは私だけだろうか。
 人形劇のために書かれたので、物語は戯曲形式を取っている。そんな訳もあり、登場人物に名前はない。


 主人公である「ままむすめ」には、継子イジメ物語にはお約束ながら、継母と義理の姉が。そして二人の性格は悪い。
 しかしこの物語には、性格の悪い人物がもう一人。それはこの国の女王様。早くに両親を亡くし、ままむすめとそう歳の変わらぬ子供ながら、この国の君主となった。両親の悪いところばかりを受け継いだと作中で噂される彼女だが、しかし教えを垂れてくれる教師はいない。

 大晦日の寒い日、ままむすめは薪を取りに森へと行かされる。そこで見たのはリスとウサギの会話。
 思わず笑う娘に話しかけたのは、女王のための新年のモミの木を手に入れよと命令された老兵士。彼は言う、大晦日にはどんな不思議なことだって起こるのだと。老兵士は彼女に、彼のおじいさんのおじいさんのおじいさんが大晦日に12の月の全て、つまり1月2月3月…、と出会ったとことがあると教える。

 兵士に手伝ってもらいようやく薪を集め終えたままむすめは家へと帰るが、そこで待っていたのは意地悪な義理の家族だけではなかった。なんと我が侭女王による我が侭なお触れが出ていたのだ。
 なんの気の迷いか、女王は新年の祝いの席にはマツユキソウ(スノードロップ)がなくてはならぬと言う。この地では4月にしか咲かぬ花だ。目的の花を持ってきた者には褒美をやるとのお触れを出したものだから、さぁ大変。欲深い継母と姉は、早速ままむすめを再び森へと追い立てるのでありました。
 ままむすめに言い渡される、「マツユキソウを見付けるまで帰ってくるな」との残酷な命令。渡された籠は、失っても惜しくないボロなのだから、意地悪もここに極まれりである。
 己の死を覚悟しつつ夜の森へと踏み出す、哀れなままむすめ。しかし今日は大晦日。どんな不思議だって起こりえる日なのだ。









 虐められていた哀れな継娘が、最後には最高に幸せな娘になる。これが継子イジメ物語の答えであり、だからこそ継子に与えられる「最高の幸せ」はその時代その地域で何が「女の幸せ」と見做されているのかを如実に反映している訳ですよ。
 この手の物語の最有名選手シンデレラは王子様とゴールインし、平安時代に成立した我が国の『落窪物語』でのヒロインは、有力貴族の妻、それも一夫多妻の時代に唯一の妻となり、その娘は天皇に嫁ぐ。
 ここに女の最高の栄華がある訳ですね。
 まぁ日本の場合は『落窪物語』の前に、求婚してきた貴族に無理難題吹っかけて軒並み破滅させた上に天皇の求婚も蹴り倒して、それどころか人の心すら捨てて月に帰る最高に意味の分からない女の物語が成立してたりするあたり、この国の意味不明さを表していて私は結構好きですよ。キリスト教の原罪とはまた違う次元で、我々も面倒臭いなと。

 やや話がズレたけれど、継子がゴールする先は「最高の幸せ」のはずなのです。けれども、この『森は生きている』では結婚のケの字も出て来ない。恋の話はあるけれど、相手がなんかこう。
 言うなれば、ヒロインが最後に手に入れたのは……自立。
 シンデレラも落窪も、最後は継母と姉がハンカチを噛んで悔しがる。それは彼女たちよりも強い権威をヒロインが手に入れたから。その権威の源は、夫。
 けれど今作のヒロインは結婚しない。夫はいない。しかし家庭内での力関係は変わっている。
 その結末へと至るための継母と姉の処理の仕方が他二作とは全く違うのが実にロシア的で、非常に面白いなと思ったのです。

 継母と姉の処遇だけではなく、ヒロインの恋のお相手や、彼女が手に入れた素敵な指輪の顛末など、日本ではなかなかお目にかかれない展開を見せてくれるので、読んでいてワクワクした。
 ……まぁ要するに、ロシアの女は昔から強いという話なのかもしれない。


レーベル別:岩波少年文庫|テーマ別:ロシア
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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