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『植物(書物の王国・5)』感想:★★☆☆☆

2011.09.30 Fri
植物 (書物の王国)

オスカー ワイルド 国書刊行会 1998-05
売り上げランキング : 749452
by ヨメレバ


 各巻異なるテーマを掲げ、それに合う物語、エッセイ、評論などを収録するシリーズ「書物の王国」の第5巻『植物』が今回。
 同シリーズの内、私が既読な『吸血鬼』『人形』に比べると収録されている物語数が少ない印象。個人的にはエッセイや評論ではなく、物語を期待して読んでいるので、感想はどうしても辛めに。
 まぁ、面白ければ何でも良いんですけれどね。


 収録作品は以下。編纂責任者は須永朝彦。

・「花の教」 クリスティナ・ロセッティ、上田敏・訳
・「植物の眠り」 ファーブル、日高敏隆・林瑞枝・訳
・「望樹記」 幸田露伴
・「毒よりの脱出」 一戸良行
・「新曼陀羅華綺譚」 須永朝彦
・「疾める薔薇」 ブレイク、日夏耿之介・訳
・「ナイチンゲールと薔薇」 ワイルド、矢川澄子・訳
・「神秘のばら」 ピエール・ルイス、釜山健・訳
・「花魄」 袁枚『子不語』、前野直彬・訳
・「藤の奇特」 井原西鶴『西鶴諸国ばなし』、須永朝彦・訳
・「菊」 内田百聞
・「花のこころ」 小松左京
・「白いダリア」 ラスカー・シューラー、川村二郎・訳
・「相思」 王維、須永朝彦・訳
・「かざしの姫君」 「御伽草紙」、須永朝彦・訳
・「柳の精」 『裏見寒話』、須永朝彦・訳
・「清貧譚」 太宰治
・「牡丹と耐冬」 蒲松齢『聊斎志異』、増田渉・訳
・「晶子牡丹園」 興謝野晶子
・「零人」 大坪砂男
・「人間華」 山田風太郎
・「毒の園」 ソログープ、昇曙夢・訳
・「柏槇の話」 グリム兄弟、金田鬼一・訳
・「受難華」 ベッケル、高橋正武・訳
・「乳母ざくら」 小泉八雲、上田和夫・訳
・「百合」 川端康成
・「風景」 山村暮鳥
・「玉川の草」 泉鏡花
・「庭樹」 鏑木清方
・「サフラン」 森鴎外
・「銀杏とGinkgo」 木下杢太郎
・「植物の閨房哲学」 荒俣宏
・「巨樹の翁の話」 南方熊楠
・「蓮喰いびと」 多田智満子

 全部で34作品。
 例によって長くなるので、以下は折りたたみ。






 二作品目がいきなりファーブルで、あれ、そんな生真面目なシリーズでしたっけ、と驚いた。
 幻想風味に傾くことの多いこのシリーズの中では本書はやっぱりちょっと違うような気がする。


 内田百聞の「菊」は、とてもお気に入り。
 これぞ正統派幻想小説と申しましょうか。菊のくるりとした花弁に人間の指を見た主人公の胸中に浮かぶ、奇妙な幻想が見物。
 現実にも害を及ぼした(ように見える)幻想は、それ故に奇妙な存在感を示す。
 読んでいるこちらの心の隙間にも入り込み、数年後に気が付いたころには修復不可能な穴を開けられていそうだ。菊作りに邁進する人が多いのは知っているし、その展覧会的なものもよく見かけるのだが、それでも菊にポジティブなイメージを持てないのはどうしてなのだろう。


 次の小松左京の「花のこころ」は打って変わってSF風味。おそらく誰にも悪気はないのだが、主人公ノリコにもたらされる結末は。
 異種族との対話は難しい、ってことですかね。
 

 御伽草子からの「かざしの姫君」には、本当に男ってやつは……との感想しか浮かばない。この男は人間ではないけれど、そんなことは性質に何の影響をも与えないようですよ。
 勝手にンなもん残されても困っちゃうよ。そのせいで姫君は死んでしまう訳だし。
 ただこの物語はハッピーエンドなのだろう。この時代の女の最高位である「天皇の妻」の座にまで上り詰めている訳だから。しかし綺麗に納得できない。もやもや。
 このもやもや感で『落窪物語』のラストを思い出した。
 落窪姫は夫に愛され、平安時代だと言うのに夫も浮気せず、一夫一妻で幸せです。って言う癖に、娘が天皇の妻の一人になることが、落窪姫の幸福の一つの表現として書かれるのよね、確か。
 母親は一夫一妻で幸せだって言ってるのに、娘は一夫多妻の権化の天皇に嫁ぐのかよ、と思うとその非対称性になんだかなー、な気持ちになれる一作でした。まぁ、『落窪物語』自体は落窪姫が幸せならそれで良いって話なんだけれどね。基本シンデレラですし。
 そして私はこの物語の過程がとても好きだったりするのですよ。思うところはたくさんあるのだけれど、好きはコントロール出来ませぬ。


 翻って太宰治の「清貧譚」は、姉のために頑張る男のお話。この姉弟を拾った主人公の才之助は幸運だな。
 太宰はこの手の話も書けるくせに、本人は『人間失格』なのかと思うと、思うと、うん。
 

 大坪砂男の「零人」も幻想怪奇小説の雰囲気抜群で好み。
 推理小説作家の主人公が出会った男は単なる狂人なのか、それとも行き過ぎた天才なのか。男を追い詰める「零人」の正体に今となっては目新しさはないのだが、それでも会話メインで展開される男と植物と罪の物語には引き込まれる。
 女の美しさを得て花に魂が入る、との考え方は非常に耽美的で好きだ。西欧の神話の神々が女を花に変えたような技が、人間に出来るものなのかどうか。
 読み終わってから『ゾティーク幻妖怪異譚』に収録されている「アドムファの庭園」を思い出した。アドムファはこれっぽっちも美しくはないが、美も醜も、意味は同じだ。どちらも「普通」じゃない。


 山田風太郎の「人間華」がまた良い。
 腐臭と死臭に塗れて絶望のただ中にいながら、一縷の希望に縋り付き、そしてやはり絶望に落ちる。そんな美しすぎてもはや醜悪な夫婦愛が素晴らしい。
愛は、子供を残る手段としてのみ存在の意味がある(p.116)

 そう呟く主人公に同意しつつ、天の真理に反抗する天麻の真摯さと傲慢さよ。その結末の目撃者となった主人公は、全てが終わった後に何を思うのか。
 ……と、ベタ褒めしておいて何なのだが、天麻の最後のミスがポカすぎて、ずっこけた。予感はしていたんだけれど、あぁ、やっぱりやっちゃうのか、と。普通そこは最初に確認しないですかね。
 いやまぁ、人間切羽詰まると視野狭窄に陥って、普段はしないような考え足らずをやらかしちゃったりしますけど。それにしたって、それにしたって、さぁ。
 さらに言うなら、天麻の設定するゴール自体がおかしい。それがゴールで本当に良いのか。ただこの疑問は、私がクローンだの遺伝子だのと仲良しな世代だから思うのかもしれない。
 ま、なんにせよ、天麻と奥様が「それで良い」と言うなら良いのだ。何が残るかではなく、何かを残したという実績自体が大切なのかもしれない。
 そしてどうでも良いが、天麻から天馬を想像して『鉄腕アトム』を連想した。あの天馬博士も思えば可哀想な人ではある。アトムは完全なる被害者でもあるが。


 ソログープの「毒の園」は、えーっと、スベってませんかコレ、との感想しか抱けなかった。『ロシア怪談集』収録の「光と影」は素敵だったんだけれどなぁ。
 「毒の園」で作者は恐らく、悲劇を背負った美しきヒロインと、未来がないと知りつつも彼女に身も心も捧げる主人公の二人の悲劇とか何とかを書きたかったんだろう。……と頑張って想像はしてみたが、が、ヒロインが主人公を好きになる理由が分からなすぎて、脳内補完すら難しい。
 主人公がヒロインに恋するのは「彼女が美しいから」で納得しても良いが(現にヒロインは作中で何人もの男を虜にしているし)、ヒロインが主人公に惹かれるのは、何故?
 恋に理由も原因もヘチマもあるか!と言われれば、「まぁそうですね」って話なのだが、これは小説なのでやっぱりそこは説明して頂きたいかなぁ。だってこのヒロイン、すっごいモテモテなんだもの。対して主人公は特別秀でた物もなさそうだし、そうなると理由が気になって仕方がない。
 いつ説明が来るのかな、と首を傾げながらも待っていたら、結局特になく終わってしまいましたとさ。


 
 他の収録作品については、特に感想がないのが感想。
 他の書物の王国シリーズもこの『植物』と同じ程度の残念率だったら、読み続ける元気が出て来ないぞ。
 まぁ、あと1冊くらい読んでみるかな。何事にも当たり外れってあるし。



関連記事:
『ロシア怪談集』感想:★★★☆☆
『吸血鬼(書物の王国・12)』感想:★★★★☆
『ゾティーク幻妖怪異譚』感想:★★★☆☆


シリーズ別:書物の王国|編集者別:須永朝彦
その他は右カラムのカテゴリから選択してください。





 地味に改装してみた。
 凝り出すと終わりがないのが恐ろしいところ。

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