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『亡霊(英国ゴシック文庫・4)』感想:★★★★★

2014.05.19 Mon



 自費出版の「英国ゴシック文庫」から1冊。19世紀イギリスの下層階級が主な客であったチャップブックと呼ばれるもの。
 下層階級を主な販売層としていたとのイメージとは異なり、50ページ足らずの小品ながら、ゴシック小説の王道を織り込み、きちんと物語を畳んでいる。面白い。


 物語はある酷い雨の日に、かつての繁栄を失い今はもう古くからの使用人夫婦マーティンとベアトリスだけが暮らす古い城を舞台として始まる。彼ら二人が過去の思い出話をしていたところに、一人の若者が立ち寄った。馬が怪我をして立ち往生してしまい、困っていたのだ。
 彼ら二人は若者、ロドルフォに親切を施してやる。雨に濡れた彼の服の代わりに、かつての主人マンフレディ伯爵オズワルドのものを着せてやったところ、なんとロドルフォは彼そっくりであることが判明する。その類似の程は、長らく彼に使えてきたベアトリスをもって、余りの恐怖に失神させるほどだ。
 彼女が卒倒したのは、オズワルドが奇妙な死を遂げたことが大きく影響していた。そうロドルフォが偶然立ち寄ったこの古き城には、忌まわしい過去が染みついていたのだった……。







 装われた死、城の下の牢獄、近親相姦、とゴシック小説の王道満載でなかなか素敵。しかも物語が開始されるのが、雨の日と言うのがまた素敵。
 物語の締めが駆け足なのは、まぁこの長さなら仕方が無い。チャンプブックである以上、印刷代やら紙代やらであんまり長い作品は書けなかったのだろうし。

 そんな訳でオススメ。
「姉のみさおを守り、父を殺した者を許しなさい。彼の裁きは天に委ねるのです」(p.36)



ジャンル別:ゴシック小説|シリーズ別:英国ゴシック文庫
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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Theme:読んだ本。 | Genre:本・雑誌 |
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