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『こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます “こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です(impress QuickBooks)[Kindle版]』感想:★★★★★

2014.05.11 Sun

こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます
“こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です (impress QuickBooks)
こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます “こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です (impress QuickBooks)林 公一

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 私達は真実を理解出来るようには出来ていない。そんなことを念頭に設計されてはいないのだ。
 

 弟の奇行に悩む相談者に対して、「まさかとは思いますが、この『弟』とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」との意外すぎる返答で知られる精神科医・林公一のサイト「Dr 林のこころと脳の相談室」から、編まれたのがこの一冊。
 一冊と言っても手に触れられる実書籍のない、電子版のみだが。

 1997年4月に開設されてから数多の相談に答えてきたこのサイトだが、その相談数のあまりの多さは初見者を圧倒してしまう。
 サイトの解説者である氏本人も、相談に答えるのに手一杯でサイトの整理が行き届かないことを気にしていたらしく、それを叶えるために作られたのがこの『こころと脳の相談室名作選集』とのこと。


 己が正常なのか異常なのか悩む相談者の切実なる、けれども明らかに「おかしい」相談には心が痛くなる。
 対して、精神異常者を装ったメールもある。彼女の様子がおかしいと本人は必死だが、けれどもどう見ても単純に振られただけにしか思えない相談もある。
 暗澹たる相談もあれば、希望を伝えるものもある。悪戯もある。取り越し苦労もあれば、無邪気に断薬を勧め地獄へと続く善意の道を引こうとする相談もある。

 混沌たる相談の渦の中でも、氏の指針は明白でブレることがない。「事実だけを伝える。光か闇か、希望か絶望か、そういうことは意に介さず、事実だけを伝える」(まえがきより)。







 こんなところで明言するのもなんだが、私の父親の家系はどうやら精神病患者を何人も抱えているようだ。
 「ようだ」の三文字でも明らかなように、その情報は正確には私に伝わってはいない。だがどう考えても死因がおかしすぎる人が存在している。
 情報が私に正確に伝わらない理由は明らかだ。それが秘匿されているからだ。いや、この表現は正しくない。
 恐らくは誰も知らないのだ。誰も知りたくないのだ。秘匿される以前に、直視もされていない。知らないものは語れない。だから語られない。それだけだ。

 他人のことならば、目を逸らせば済む。けれども自分のことだったら?
 私は自分が正常なのかどうか、ずっと疑問を抱いてきた。だが正常とは何を差すのか、実のところは漠然としている。
 自分のことを深刻に疑う時期と、疑いすぎなのではないかと楽観視する時期とを繰り返しながら、けれども事態を直視することなく日々を暮らして来た。
 だが自分が何を恐れているのか、正直なところよく分かってもいなかった。「精神病」が指す内容を吟味したことはなかった。
 それは語られない、語ってはならない禁忌のように思えて、だから私も目を逸らしてきたのだろう。

 そんな曖昧に疑問と恐怖を緩和させてきた私に、光を提供してくれたのが林公一開設による「Dr 林のこころと脳の相談室」だった。
 とは言えども、このサイトに寄せられた相談はあまりに莫大だった。だから私は自分の興味を引くものだけをピックアップして読んでいた。
 だがその読み方は著しい偏りを生む。故に、この『こころと脳の相談室名作選集』のように解答者自らがピックアップしてくれるのは有り難い限りである。


 周囲の人たちに自分の考えが読まれている、だから家から出られないと悩む相談者。毎日毎日私のことを監視しているでしょう、と身に覚えのないことで隣人に怒鳴り込まれた相談者。自分は生きている価値がないのではないかと苦しむ鬱治療中の相談者。鬱だと休職中の身で毎週愉しそうに遊び回る部下の態度に悩む相談者。外面だけは良いが、言うことが支離滅裂な同僚のせいで職場が崩壊しそうだと苦しむ相談者。家族に薬を飲むことを止めさせられそうな相談者。

 本書に登場する相談者たちは多種多様。そこから示されるのは、正常と異常の境目はあまりにも不明瞭だという事実。
 そもそも、私達は真実を理解出来るようには出来ていないのだ。そんなことを念頭に設計されてはいないことを、しみじみと実感する。

 けれども考えてみれば、それは自明のことだ。事実を理解するよりも、自己の精神的ダメージを緩和する方が簡単で、その上に心に優しい。
 ウチの猫などは、自分にとって不愉快なことは全て飼い主である私のせいだと思っている節がある。悪いことが怒れば彼女は私に噛みつき、スッキリしている。その態度は事実とはほど遠いが、彼女の精神的ストレスを和らげることには大成功している。

 私の猫ほどでなくとも、人間も同じようにして生きてきたのだろう。だがその態度は、個々が密集して生きる現代では許されない。
 互いに密着して生きる今、我々は数多のルールを踏まえて生きている。現代の「普通」はあまりにも狭いのだ。
 そしてその「普通」からはみ出した人たちは、一般に考えられているよりも多く、恐らくは身近にも存在しているのだ。そして私もまた彼らの一員なのかもしれない。


 寄せられる相談の殆どは余りにも暗い。それでも、本書には救いがある。
 それはこうして真摯に解答してくれる精神科医がいるということだ。
 その医者が「貴方の担当医はとても素晴らしいと思われます。だから貴方が治るまで誰にも教えないことをおすすめします」などと答えるところに、精神病を巡る暗い現状がまた見えるのだけれど。

ジャンル別:心理学|作者別:林公一
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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