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『飛行船ものがたり』感想:★★★☆☆

2014.03.25 Tue

飛行船ものがたり
飛行船ものがたり天沼 春樹

NTT出版 1995-04
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 飛行船に魅入られた作者による、飛行船に纏わる一冊。
 空気よりも軽い機体を袋に入れ、その浮遊力で飛ぼうという概念が生まれた。最初は暖かい空気を用いた熱気球、そして後には水素、下ってはヘリウムを用いた飛行船へと繋がって行く。
 科学の勃興と共に飛行船は見世物として、そして後には夢のある技術としてその命脈は繋がり、第一次世界大戦を経て洗練を増す。

 だが一度目の世界大戦で戦時に投入されるにはあまりに不安定要素が多いと判断された飛行船は、飛行船先進国ドイツではもはや商業路線でしか生き残る道を持たなかった。
 一時はグラーフ・ツェッペリン号の世界一周旅行により名声を得たものの、ドイツ―アメリカ定期便として着実に実績を積みかさねていたヒンデンブルク号の印象的すぎる爆発炎上事故により、夢は潰えた。
 未だ飛行船を所持していたアメリカ海軍も、ヒンデンブルク号の後、その二隻を解体しここに飛行船の歴史は幕を下ろす。


 ヒルデンブルク号の事故は、ヘリウムではなく水素を浮揚ガスとして用いていたことが原因とされている。
 ナチス政権下のドイツにアメリカがヘリウムの販売を許可しなかったがために、ヒルデンブルクは水素で飛び、何度も安定的に飛び続けていたにも関わらず、その日、炎上したのだった。
 人間の抱いた夢によって育まれ、戦争により洗練され、そして国家間の諍いにより燃え尽きた飛行船の過去と今を描く一冊。 







 見返し部分には各飛行船の姿がカラーで収録されているほどの凝りっぷり。前見返しには飛行船がまだ夢だった時代のものが、後ろの見返しには飛行船の技術が成立して以降のものが乗せられている。

 映画などの虚構部分と、現実の部分が入り交じりやや読みにくいのが難点ながら、作者の飛行船への入れ込みっぷりが伝わって来て、なんだかちょっとほっこりしてしまう。
 世界一周中のグラーフ・ツェッペリン号が日本に寄港した折りの出来事や、船上で行われた二人の日本人新聞記者のスクープ合戦なども描かれている。
 一応、日本でも飛行船開発に着手した時代があったりと、日本もまた飛行船とは無縁ではない。第一次世界大戦後、ドイツから戦時賠償として飛行船を一隻貰い受けていることだしね。


 ちなみにその飛行船のその後はここでは描かれていないが、『飛行船の歴史と技術』によると、件の飛行船は日本まで来ることなく解体され部品取りに使われただけであったそうだ。
 これまた『飛行船の歴史と技術』の情報によるが、戦時賠償として日本が貰い受けたもう一つのもの、格納庫、は日本の霞ヶ浦まで運ばれ、その倉庫を後に日本を訪れたグラーフ・ツェッペリンが使ったりもしている。賠償として差し出したドイツ製の倉庫と日本で再会したドイツ人の心境や如何に。

 更に本筋から離れるが、ナチス政権の頃、ドイツではグラーフ・ツェッペリンなる名前の航空母艦を建造していたりする。既に空母を有していた日本の協力を得て建造されたそうだが、正直、日本の貢献度は不明だそうだ。
 飛行船のグラーフ・ツェッペリンとその弟(妹?)たちもナチスの人気取りに使われたりしているので、大きな建造物は大変だなぁ、と。飛行船の技術者たちが内心どう思っていたかは定かではないものの、時の政権に尻尾振らないと予算は貰えないしね……。



 話を戻して。本書で作者は、飛行船は飛行機ほど速くはないものの燃料の消費が少なくエコだと述べ、飛行船の復活を唱えている。
 が、個人的にはあまり賛同出来ない。確かにエコではあるだろうが、今やヘリウムの需要は右肩上がりであり供給は逼迫しているからだ。
 今や化学系どころか生物系にも必須となったNMRに、大抵の大きな病院にはあるMRI。彼らには液体ヘリウムが不可欠だ。そしてこれらの設備は、中国インドなどの新興国などを筆頭に増え続けている。台数に加え、NMRは大型化が著しい。
 他にも液体ヘリウムを必須とする工場があるらしいが、一方の供給は覚束ない。
 アメリカはヘリウムを伴わないシェールガスに傾き、ロシアは一向にプラントが完成しない。今後の世界状況如何では、ロシアなんて論外になってしまう。

 供給が逼迫すれば値段が上がるのは資本主義の論理であるからして、今後のヘリウムの値段もまたあまり考えたくない状態だ。
 そんなヘリウムに依存して空を飛ぶのは如何なものか。飛行船の場合は液体ではなく気体だから、その実、使用量はたいしたことはないのかもしれないが、何にせよヘリウムの奪い合いのプレイヤーが増えることを喜ぶ者がいるだろうか。

 空気よりも軽ければ良いのだから……とヘリウム以外の安定した気体を考えてみたが、窒素は空気と重さは変わらないし、ヘリウム以外の希ガスは空気よりも重かった。
 ……もう水素で飛べば良いんじゃないかな。水素エンジンを積んで、水素を浮揚ガス&燃料として飛ぶとかエコなんじゃないかな。


テーマ別:飛行船|ジャンル別:科学史
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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