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映画『妖婆 死棺の呪い』感想:★★★★★

2014.01.06 Mon

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 原作はゴーゴリの短篇小説『ヴィイ』(ヴィーとも)。原題は『Вий』、1967年ソ連。

 ホラーなのにほっこりする不思議な映画だった。心温まるような出来事など皆無、至って普通に人が死んでいるにも関わらず、ほっとする。
 ただ謎は謎のまま放置どころか謎があることすら極普通にスルーして一顧だにしない作品なので、細かい辻褄が気になる人には不向きなのは確か。

 タイトルが意味不明状態なのは、日本デビューが映画館ではなくテレビの深夜放送で、B級ホラーにありがちな現象「何故か元の題名が一ミリも残っていないオリジナリティ溢れまくる邦題が付けられちゃった」が発動したせいらしい。
 それでも何度か放送される度に徐々に人気を博し、小規模ながら映画館での公開に至った出世作品でもあるそうな。
 その出世も当然と思えるほどに、奇妙な面白さを持つ作品である。恐ろしい設定の合間に見える、平和な笑いと日常、そして日常そのものが孕む恐ろしさ、同時に逆説めいて、恐怖に潜む笑いが何の味付けもなくさらりと自然体で提示されるのが良いのだ。

 原作では只管にクソ学生であったホマーに影を持たせたことが、個人的には成功の秘訣じゃないかと思っている。
 女優さんの美人っぷりと、三日目に登場する妖怪たちのいっそ陽気なまでの群れもだけれど。







 神学校の学生たちは、長期休暇を前に心躍らせていた。既にはしゃぎ始める彼らを前に校長は釘を刺すが、当然ながらそんなものは何の役にも立たない。
 休みの開始と共に学生たちは市を荒らし、娘たちを拐かして省みない。彼らは様々な悪事に手を染めながら、それぞれの家路を辿り始める。

 神学生の学生であるホマー(レオニード・クラヴレフ)も、友人二人と連れ立って旅をしていた。だが道に迷ってしまった。
 己が神学生であることを盾にキリスト教徒の誼を武器とし、旅すがら出会った人に世話になるのが彼らの旅の基本方針である。それなのに人っ子一人いない荒野に出てしまったのだ。
 野宿はゴメンだと周囲を必死に探った三人は、ようやく一軒の家を見付ける。中にいたのは、一人の老婆(ニコライ・クトゥーゾフ)。

 泊めて欲しいと必死に懇願する三人に対して、老婆はそれぞれ別の場所で寝るならばとの不思議な条件付で家に招き入れてくれた。ホマーに宛がわれたのは、家畜小屋であった。
 眠れぬまま一人天井を見上げるホマーの元を、家主の老婆が訪れる。老婆の纏う異様な雰囲気に気圧されるホマーだが、それも当然、なんと彼女は魔女だったのだ!
 恐怖のあまり魔女を滅多打ちにするホマー。遂に倒れた老婆を見れば、何と彼女は美しい娘(ナターリア・ヴァルレイ)に変わっていた。

 意味の分からぬ事態に怯えて神学校に戻ったホマーだが、彼の不幸はまだ始まったばかりであった。
 校長を通じて、有力な地主から祈祷の依頼が来たのだ。彼の娘が誰かに滅多打ちにされて瀕死に陥っており、最後の祈祷にホマーを指名したのだと言う。
 己が魔女に行った所業と奇妙に符合するその娘の状態に、ホマーは恐怖を抱き必死に断ろうと言葉を尽くすのだが、高額の礼に釣られた校長に無理やりに送り出されてしまった。
 ホマーが地主の元に辿りついた時には、既に件の娘は死んでいた。涙に暮れる地主の隣に横たわっていたのは、ホマーが怖れていた通り、彼が滅多打ちにした老婆、美しい娘、であった。

 恐怖に戦くホマーに対して、地主は娘の眠る教会で三日三晩の祈りを捧げて欲しいと依頼する。再度必死に断ろうとするホマーだが、地主は娘の最後の頼みを聞いてやりたいの一心で引かない。
 最終的に脅迫される形で娘が安置された教会に赴くホマー、その扉は鍵が掛けられ朝まで開かない。さてさて、ホマーが体験する三晩とは如何ほどに? 彼は生きて三夜を乗り切れるのでありましょうや?



 神学生たちの素行が極悪ですが、これで普通です。村人たちが昼間っからウォッカ漬け&寝こけてますが、これも普通です。
 ホマーも酒浸りだし、窮地に於いては神への信仰以上に己がコサックであることを心の拠り所にしちゃっているけれど、何故だかこれが可愛い。原作ではもう少し荒くれ者の印象があったのだが、ここでは己の出自を知らず、故に未来への指針も持てぬ一種の流離い人の雰囲気がある。

 ところでこのホマー、パッケージの裏のあらすじでは「哲学生ホマー」となっており、作中でも村人から哲学者先生と呼ばれている。彼は、実は哲学専攻だったりするのだろうか。神学部哲学科的な?
 実は老婆の家を訪れるシーンで、それぞれ学科と名前を名乗っているのだが、ホマー(愛称?)ではなく正式名を名乗っているのか、名前が一致しなくてサッパリ分からない。

 本作のクライマックスかつメインでもあるホマーの三晩の祈りと、彼を狙う魔女との対決は怖くて楽しい。対決と言うよりも、只管ホマーの防戦だし、ホマー自身は全く楽しくないだろうが。
 一日目、二日目と魔女の攻撃手段が異なり、徐々に大仰になっての最後の三日目、妖怪たちのカーニバルとも呼べそうな大量の彼らの跋扈は圧巻である。異形の者たちが大集合しているにも関わらず、微妙なチープさのせいでやや気の抜けた様になっているのも良い。
 作り物めいた(いや実際に作り物なのだが)彼らの中で、魔女を演じるナターリア・ヴァルレイの可愛らしさが引き立つのだ。
 ナターリアの、そして魔物たちが皆楽しそうであるが故に、ホマーの身に不幸が起こるにも関わらず、見終わった感想が「ほっこり」になるのだろう。



 ちなみに私が購入したのは、2013年12月発売の廉価版DVD。ただ以前に発売されたDVDの方が、色々と特典映像も付いてかなりお得だった模様。
 その特典映像とは、短編記録映画「ゴーゴリゆかりの地を巡って」と「ロシアクラシックホラー映画3作品」。後者には、無声映画「肖像画」「スペードの女王」「歓喜する悪魔」がそれぞれ10分ほど収録されているらしい。

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 正直、古いほうを買った方が良かった気がしてきたぞ。でも同じ映画のDVD2枚も要らないし。



 以下、ネタバレ
 魔女の姿の変化は一体何なのだろう。ホマーが最初に出会った時点では老婆、彼に滅多打ちにされると娘に、最後ホマーを屠った後にもまた老婆になる。
 これはもしかして、力を得ると老婆に変化し、力を失うと娘の姿になるのか? 実は娘の姿が本来で、力で老婆に化けていたり?
 若い娘の姿の方が素晴らしいもの、老婆の姿は力を喪失したが故と考えたくなるが、そこに確固たる根拠はない訳だし、逆でも特に問題はない……はず。


参考:
魔女伝説ヴィー(妖婆 死棺の呪い)」(缶詰の映画サイト)
●妖婆・死棺の呪い」(パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★ブログ)



覚え書き(本に纏わるあれこれ):映画感想
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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