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映画『マッキー』感想:★★★★★

2013.11.01 Fri


マッキー


 突然歌いだす様はまるでディズニー映画のよう。けれどもここまで真っ直ぐに馬鹿街道を邁進した挙句、清清しい好青年の域にまで到達する馬鹿はディズニーには描けないだろう。
 死の淵から蘇ったと思ったらマッキー(ハエ)になっていたなんて設定の馬鹿馬鹿しさと、それでも諦めずに必死に足掻く主人公の姿が見せる真摯さと勇気、彼の前に立ちはだかる悪役の非道さと同時に黒い魅力。その全てがそれぞれ互いを際立たせながら共存しており、映画をただのコメディーから一歩進んだより深いものとしている。
 笑って笑って、ちょっと泣いて、そして笑える。そんな映画。



 ジャニ(ナーニ)はもう2年も、ビンドゥ(サマンサ・ルス・プラブ)に片思いをしている。彼はビンドゥの気を引くためにあれやこれやと手を尽くすのだが、ビンドゥからは色よい返事どころか返事そのものすら貰えない有様。
 それでも彼女はきっと自分を愛してくれているのだと信じて疑わないジャニはへこたれない。友人から呆れられながらも、それでも毎日ビンドゥのことを思い続ける。
 ジャニが片思いを続けるビンドゥは、マイクロ・アーティスト。米粒に細工が出来るほどの腕前である。彼女は作品作りの傍ら、恵まれない子供に教育援助を行うボランティア活動も行っていた。

 だがそのNGOが資金難なのだ。ジャニは毎月15ルピー(ちなみに今日のレートでは1ルピー=約1.6円)を寄付し続けているが、当然焼け石に水以下。
 新たな出資者を募るべく、ビンドゥが飛び込み営業に向かった先で出会ってしまったのが、建築会社の社長であるスディープ(スティープ)。彼は根っからの女たらしであり、またクレー射撃の腕前も素晴らしく良い。
 先日もなかなか同意しようとしない役員の妻がクレー射撃を趣味にしているのを縁に、己の腕前と男前さを武器に彼女を取り込み、ついには夫から契約の承諾を取り付けたばかりだ。やり手なのである。
 そんなスディープが美人のビンドゥに興味を示さぬはずはない。早速、彼女をモノにしようとまずはNGOへの多額の出資で気を引き、更にはあの手この手で迫るのだが、当事者のビンドゥはジャニを気にするあまり、スディープのことなど目にも入っていない。

 これを屈辱と取ったスディープが、ビンドゥを手に入れるためにジャニの殺害を計画する。
 それが実行に移されたのは、ようやくビンドゥがジャニに自分の気持ちを素直に話そうとした直前のことであった。連れ去られたジャニの携帯には、ビンドゥからの伝言が吹き込まれる。愛している、と。2年もからかって悪かったと。
 しかしその傍らでは、ジャニはスディープによって窒息死させられようとしていた。
 折角念願叶ってビンドゥと両思いになれたのに。殺人も厭わないスディープをこのままビンドゥに近づけてなるものか。そう強く誓うジャニは、死の世界から蘇った。マッキー(ハエ)となって。








 何故、ハエ?と思わないでもないが、たぶんそこに理由はない。
 ちっぽけなハエとなってしまったジャニは、それでもビンドゥを守ろうと孤軍奮闘する。最終目標は自分を殺した彼の殺害。ただのハエでしかない彼だが、知恵と勇気で嫌がらせを重ねに重ね、徐々にスディープを追い詰めていく。

 この過程が実に面白い。動けない状況でのハエの襲撃がいかに嫌なものか、姿は見えないくせに羽音だけが耳の傍でブンブン聞こえるのがどれほど煩わしいか、それは誰だって知っている。
 しかも被害者が自分ではなく悪役となれば、彼があたふたする姿はただただ笑える。しかもこのハエ、なんとスディープに宣戦布告までやってのけるのだ。これが素晴らしく怖い。相手はただのハエなのに、凄く怖い。
 ハエから真っ直ぐな殺意を向けられたスディープは、当然ながら狂乱の最中へと足を踏み入れる。
 ハエが、ハエが!とあたふたするスディープの姿は、彼の配下の連中からは精神錯乱に陥ったとしか思えず、事実ハエの恐怖に取り付かれたスディープは自滅に次ぐ自滅へと陥っていく。


 さらにジャニは、愛しのビンドゥと再会を果たす。しかし今のジャニはハエである。繰り返すが、ハエである。宇宙人と地球人並に二人の距離は遠い。サイズ的な意味でも、意思疎通の難易度でも。
 だが彼はやってのけるのだ。
 これはスディープに対する宣戦布告と同じくこの映画の見所となっているが、それぞれ工夫が凝らされている上に意味合いも内容も対照的となっており印象に残る。
 ジャニとビンドゥの意思疎通が段々と上手くなっていくのが、また面白い。加えて、ビンドゥがマイクロ・アーティストで細かい細工が得意だという伏線がここで生きてくる。


 この映画は、ジャニの健やかな馬鹿さっぷりと、ハエに生まれ変わってもなおビンドゥのために、己の復讐のために必死に努力する姿が魅力なのだが、しかし忘れてはならないのが悪役スディープの存在感。
 敵を倒してめでたしめでたしでも、敵の強大さ如何でその印象は大きく変わる。
 ジャニの猛攻に反撃の糸目も見出せず、精神の前に社会的に終わりそうになるスディープに途中で少し同情してしまい、ジャニの復讐は少しやりすぎなのではないかと思ったりもしたが、なんとこのスディープ、後半で復活する。

 スディープが精神的に病んだのは、敵が誰だか分からなかったからだ。それがジャニだと分かったとたん、スディープは精神的に破綻しそうな被害者から悪徳企業家スディープへと立ち戻り、得意の射撃と持ち前の性格の悪さでジャニを追い詰める。
 全てが真っ黒邪悪なスディープと、純真で健気なジャニの対比はラストシーンで鮮やかに輝き、そして全てはビンドゥの前で終結する。



 「複眼を根本的に誤解してるだろコレ」だとか「ハエの目と口を覆った程度で無力化できるほど殺虫剤は優しくないよ。そもそもハエの呼吸器は腹にあるよな?」とか、「そもそもハエの成虫ってそんなに長いこと生きられるの」とか無粋なツッコミをしたい衝動がないでもない。
 が、場面の切り替えの巧みさや意表の突き方、伏線を全て回収した手並みや、大きなスクリーンで見ると気持ち悪いはずのハエをちょっと可愛いかもと思わせるデザインと演出の魅力、後半の意味があるんだかないんだかのハエダンス、無駄におどろおどろしい呪術師の存在、ハエごときに追い詰められる悪役の演技の見事さなどなどが文句なく素晴らしかったので、それらの疑問を封じて余りある。
 是非是非、観ていただいて、そして最後に「またハエかよ!」と叫んでいただきたい作品。




覚え書き(本に纏わるあれこれ):映画感想
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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