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『標本 グスタフ・マイリンク疑似科学小説集』感想:★★★★☆

2013.08.08 Thu




 エディション・プヒプヒから1冊ご紹介。
 収録作品は以下の4作。

・「標本」
・「土星の輪」
・「菫色の円錐」
・「蝋人形展覧室」


 私にとってのマイリンクは、「レオンハルト師」の作者である。己の奇想を極限まで歪め、更には思いつくだけの奇抜な飾りつけをした上で、綱渡りに挑む馬鹿である。
 当然ながら割りとよく滑落死している。贔屓してあげたいのは山々ながら、それでもやっぱり「こりゃアカン」としか思えないことも多い。
 それでも私はマイリンクが好きだ。
 「どうだ、この奇抜さ!」と言いたげな自尊心と、「これしか出来ない」との悲鳴の両方が聞こえる気がして、無視できないのだ。


 私にとってのマイリンクのイメージは上記の通りだが、この短編集では少し調子が違う。
 悲鳴も自慢も鳴りを潜め、そこにあるのは楽しげな奇想のみだ。強調も過剰もまだその全貌を見せてはいない。
 人生に疲れてもいなければ、強迫観念にも駆られていない、ありのままの等身大の姿が作品の影から覗いている。

 しかしそうは言っても、相手はマイリンク。
 作品の中央を貫くのは、結露しそうなまでに湿り、そしてやはり「くだらない」奇想である。








 「標本」、「蝋人形展覧室」は共に、ペルシャ人科学者ダラシェコ博士の悪魔的所業に、サンクレールとその友人たちが挑む物語。
 挑むと言ってもダラシェコ博士は姿すら見せないにも関わらず、彼の「創作物」の激烈な存在感にサンクレールたちはただ圧倒されるのだが。
 最終話に「蝋人形展覧室」を持ってきたのはズルイ。
 読み終わって本を閉じた瞬間に表紙絵が目に飛び込んで来、また同時にその絵が何を描いたものかを理解して、思わずぎょっとしてしまった。

 このシリーズの日本語訳は他に、『現代ドイツ幻想短篇集』に「壜の上の男」とのタイトルで収録されているそうな。
 マイリンクは他にも書いていたりするんだろうか。


 「土星の輪」は至極真面目にオカルトを語ったかと思ったら、終盤にかけてまさかの展開をする一篇。
 あのくだりで二度見ならぬ二度読みをしないで済んだ人は、どれほどいるのだろうか。
 このくだらなさと、博士も牧師の女房をも切り捨てるその刃の鋭さと、しかもそれをミュラーの説で糊塗する発想には、流石はマイリンクだぜと苦笑いをするしかない。
 こうなりゃ私も博士の魂の安寧を一緒に祈ってやるよ!

 「菫色の円錐」ではトンデモ展開は「土星の輪」と比べると控えめながらも、予想よりも一歩踏み込み、こちらを振り返って笑う作者の姿が見えような気がする話。
 行き着くところまで行き着いちゃうところが、マイリンクだなぁーとしみじみ。



 「土星の輪」、「菫色の円錐」は流石に怒られそうだけれど、ダラシェコ博士シリーズはまとめてくれると面白いんじゃなかろうか。
 単純に私が読みたいだけなんですけどね。

シリーズ別:エディション・プヒプヒ|作者別:グスタフ・マイリンク
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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Theme:読んだ本 | Genre:本・雑誌 |
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