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"THE SWEET-SCENTED NAME, AND OTHER FAIRY TALES, FABLES, AND STORIES"感想:★★★☆☆

2013.08.03 Sat


The Sweet-Scented Name, and Other Fairy Tales, Fables and StoriesThe Sweet-Scented Name, and Other Fairy Tales, Fables and Stories
Fyodor Sologub Stephen Graham

Nabu Press 2010-08-19
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 "THE OLD HOUSE AND OTHER TALES"と同じく、今では無料で読めるソログープ短編集。
 とは言えども書影がないと寂しいので、復刊(?)されている内で一番私が好きな表紙のを貼っておく次第。

 収録作は以下。日本語翻訳がある場合は、その隣に邦題を付した。
・WINGS:翼
・THE SWEET-SCENTED NAME:よい香のする名前
・TURANDINA:ツランディナ
・LOHENGRIN
・WHO ART THOU?:お前は誰だ?
・THE DRESS OF THE LILY AND THE CABBAGE:百合の着物とキャベツの着物
・SHE WHO WORE A CROWN:花冠
・THE DELICATE CHILD:かよわい子供
・THE BIT OF CANDY:砂糖菓子のかけら
・THE LUMP OF SUGAR:砂糖の塊
・THE BULL:牡牛
・THE GOLDEN POST:金色の柱
・SO AROSE A MISUNDERSTANDING:こうして誤解は起こった
・FROGS:蛙
・THE LADY IN FETTERS:囚われの女
・THE KISS OF UNBORN:生まれてこなかった子供のキス
・THE HUNGRY GLEAM:餓の光
・THE LITTLE STICK:小さな杖
・EQUALITY:平等
・ADVENTURE OF A COBBLE-STONE:小石の冒険
・THE FUTURE:未来
・THE ROAD AND THE LIGHT:道と灯り
・THE KEYS:合鍵
・THE INDEPENDENT LEAVES:独立した葉
・THE CRIMSON RIBBON:赤いリボン
・SLAYERS OF INNOCENT BABES:少年の血
・THE HERALD OF THE BEAST:獣の使者
・ON THE OTHER SIDE OF THE RIVER MAIRURE:森の主
・THE CANDLES:二本の蝋燭、一本の蝋燭、三本の蝋燭








 上記の通り、日本語訳がないのは唯一'Lohengrin'のみ。
 ただ他は翻訳があるとは言えど、戦前の雑誌に載ったっきりの物もあり、近所の図書館で読めるかと言われると無理。
 本屋で買える作品は、この中にはない。ただ'Slayers of Innocent Babes'だけはネット上で翻訳が読める。下のリンク先でどうぞ。
 「少年リーンの奇蹟」 竹田円翻訳
(『Slavistika:東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室年報第28号』283-290p掲載)


 'Slayers of Innocent Babes'は、ソログープお得意の「現実の醜さに絶望して死を望む子供」がモチーフ。舞台として古代ローマの周辺を設定している点が、他のソログープ作品と異なる。
 このモチーフを突き詰めた先にあるのが'The Kiss of Unborn'であり、こちらの子供はもはや産まれてくることすらをも拒絶する(との設定になっている)。
 しかし'The Kiss of Unborn'の子供は主人公の想像の産物に過ぎないと見做すことも出来、そちらの見解を取ると物語は一気に不気味さを漂わせる。主人公がしっかりと現実に回帰するだけに、疑問は解答も置き場所をも失う。

 上記の作品に於いては絶望するのは子供であり、故に無垢な自分と醜い世界の落差故に「これ以上生きていたくない」と死を選ぶのだが、これが主人公が大人となるともはや自身を無垢とは表現し得ない。
 ならば生き辛いこの世界にサヨナラを告げる理由を別のところに求めることとなる。
 この理由として社会の不平等を選んだのが'The Hungry Gleam'であり、自己に責任を向けたのが'The Smile'(「微笑」)と分類出来る。
 が、後者の'The Smile'は本書には未収録。
 また変わらず己の純粋を信じ、故に死ぬ物語'The Beauty'(「美」)もあるのだが、同じく未収録。


 死の賛美者などと形容されることのあるソログープではあるが、この作者は決してそれだけの作家ではない。
 'Who Art Thou?'では主人公である少年は貧しさ故に空想をでっち上げる。彼の楽しみであったはずの空想は、しかしいつからか辛辣な意図を有するようになり、彼に「お前は誰なのか?」との究極の問いを突き付けるようになるのだ。
 ソログープは彼に空想を手掛かりとして辛い現実からの逃避、即ち死、をもたらしはしない。
 少年の空想は最後の場面で現実に打ち砕かれ、しかし「お前は誰なのか?」との鋭い疑問だけは突き刺したままで、彼を現実に追い返すのだ。

 この「辛い暮らしをしている主人公が空想に楽しみを見いだす」モチーフは'She Who Wore a Crown'にも見ることが出来る。ただ主人公は大人であり、その上、彼女の空想は壊れない。
 読み手としてはその2点のせいで、彼女の行く末に不安を抱かずにはいられない。

 同一のモチーフの作品としては「とらはれ」も素晴らしいのだが、どうも雑誌に掲載されたっきりのようだ。
 こちらの主人公は'Who Art Thou?'とは違い裕福な子供だが、過保護な母親に辟易し、彼女は自分の母親ではなく自分を捉えている悪い魔女だと思い込むに至る。
 この作品で面白いのは主人公の空想が他人をも巻き込む点だ。ソログープの描く主人公たちは一人理解されぬ孤独に浸っていることが多いので、目新しい。

 このモチーフでは同じく裕福な家の子供が周囲の無理解に空想を膨らませていく「星の世界へ」、貧しい子供が空想にのめり込み現実を見失う「慰安」があるのだが、前者の翻訳は未完、後者は掲載された雑誌の一部が現存しない。
 ソログープは後者には現実を見失った末の死を与えており、前者にも同じく死の扉を示しているように思うのだが、なにぶん翻訳がない。
 誰か翻訳しておくれよ。


 ソログープには死の臭いのしない作品も多い。その極地が何故か日本語翻訳のない'Lohengrin'である。
 「お姫さまは幸福に暮らしました」で終わる'The Sweet-Scanted Name'の後に、ソログープ版天女の羽衣とも言える'Turandina'を持ってくるだけでも酷いのに、その直後に今度は'Lohengrin'とはね……。
 'Lohengrin'はタイトル通りにローエングリンの物語を前提に展開する話なのだが、余りにこっぱずかしくて作中人物ではなくて私が死ぬ。
 一緒に死んでくれる方を募集中なので、詳細は書かない。

 それにしてもどうして日本語訳がないのだろう。
 個人的にインターネットがカバーしているのは1980年代半ばまでに過ぎず、それ以前は全く戦力にならないと思っているので、アメリカの議員図書館の検索を全面的に信頼するわけではないが、それでもソログープ作品の日本語翻訳は英語翻訳以上に豊富に思える。
 超短篇すらも翻訳しているのに、どうして'Lohengrin'がないのかとても疑問だ。この作品が発表された頃には、日本のソログープブームは終焉していたのだろうか。
 つまり、誰か翻訳してくれないかな。


 単なるソログープ話になった気もするが、これにて感想終わり。
 'Wings'から開幕し、前半では'The Sweet-Scanted Name'、'Lohengrin'と明るい話が続くのに対し、後半には'Slayers of Innocent Babes'、'On the Other Side of River Mairure'と重たい作品に切り替わり、その上'The Candles'で最後を締めるなんて割と心に悪い構成なのでした。
 まぁ陰鬱な作品の後に明るいのを持って来られても、どういう顔していいのか分からないけどさ。

 ただ選択と配置の妙はJohn Cournosの"THE OLD HOUSE AND OTHER TALES"に劣る。
 こちらは重たい作品から開幕し、中盤で畳みかけ、その癖に最後に爽やかに終わり読者を満足死させようとの意図に満ちている。翻訳者が存命ならオシャレな便箋に長々と呪詛を書いて、美味しいお茶菓子と一緒に送って差し上げたくなるほどの出来映え。

 そうは言ってもこのクラスの短編集がそうポコポコあったら精神的に保たないし、この"THE SWEET-SCENTED NAME, AND OTHER FAIRY TALES, FABLES, AND STORIES"はソログープの明るい面をも伝えてくれているので、それはそれで良い。
 これまた本書には収録されてはいないが「レーリカ」のような、ソログープが優しい目の持ち主でもあったことが知れる作品がもうちょっと有名になると良いなと思う。
 そして「死の勝利」や「愛」以外の戯曲も翻訳して貰えると嬉しいなと……。


作者別:ソログープ|ジャンル別:幻想小説
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


関連記事:
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『童話集 よわい子供』感想:★★★☆☆
『かくれんぼ・白い母 他二篇』感想:★★★★★
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 そう言えば近々、盛林堂ミステリアス文庫から『いい香のする名前 -ソログーブ童話集-』が出るらしいですよ。盛林堂さんのブログはこちら

 ソログー「プ」ではなく、ソログー「ブ」なのがミソ……なんですかね、コレ。
 英語表記ではSologubだし、日本でも明治末期から昭和にかけてはソログーブ表記が多かったりするので、実際の発音は濁音の方が近いのかも? ただ日本語表記の方は、単に表記法が今と過去で違うだけな気もする。
 なんにせよ、Googleさん的にはソログー「プ」の方が断然通りが良いと思うんだけどな。

 なんて要らんお世話は置いておくとして、『いい香のする名前 -ソログーブ童話集-』の底本は、1922年発行の精華書院『世界少年文學名作集第21巻 影繪』とのこと。
 ただし表題作の「影繪」(「光と影」)は収録されず、「翼」、「いい香のする名前」、「森の主」、「少年の血」、「捜索」、「地のものは地へ」、「花冠」、「魂の結合者」、「獣の使者」が予定。
 「捜索」は「身体検査」の方が通りが良いかも?

 予価は税込み1,000円、200部の予定だそうなので、発売予定が発表された際には気になる方はお早めに。
 とか書いてる私が買いそびれそうな気がするのはどうしてだろう。



 ちなみにこの精華書院の『世界少年文學名作集第21巻 影繪』、何故かソログープの後にマリア・エッヂョオスの「跛のジヤアバス」なる作品が収録されている。
 時間の関係で読み飛ばしたのだが、今更ソログープと同席させられた作品が気になりGoogleに尋ねたものの、ヒットしない。
 微かな記憶によると、作者は恐らくマライア・エッジワースだと思うのだが、「跛のジヤアバス」に該当すると覚しき作品が出て来ないぞ。
 手抜きせず、もう一度行った時に読めという思し召しか。

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