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『ロシア・ソビエト文学全集24 サーニン 赤い花 マカールの夢 他』感想:★★★☆☆

2013.07.21 Sun


ロシア・ソビエト文学全集〈第24〉アルツィバーシェフ等 (1964年)
ロシア・ソビエト文学全集〈第24〉アルツィバーシェフ等 (1964年)
平凡社 1964
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 本のタイトルが判然としない一冊。「24」という数字も末尾のシリーズ紹介にしか載っていないし。
 まぁ気にしたところで解決するわけではなさそうなので、あまり深く考えないことにする。

 収録作は以下。
・「サーニン」 アルツィバーシェフ、昇曙夢・訳
・「赤い花」 ガルシン、中村融・訳
・「マカールの夢」 コロレンコ、落合東朗・訳
・「白いお母様」 ソログープ、昇曙夢・訳
・「深淵」 アンドレーエフ、石山正三・訳
・「生活の盃」 ブーニン、原久一郎・訳
・「静かな曙」 ザイチェフ、昇曙夢・訳
・「生活の河」 クープリン、昇曙夢・訳


 特筆すべきは「サーニン」、実に本書の2/3ほどを占めている。








 物語の中では、何かが起こる。その「何か」こそが物語を物語足らしめるのだ。
 起承転結の全ての要素が必要とは限らない。けれども、何かしらが起こらなければならない。
 「サーニン」に於いては、題名通りにサーニンなる青年の思想と行動がその「何か」の一つではあるのだが、彼一人では物語には成りえない。
 何故ならばこのサーニン、若いながらも既に「生とは欲望である」との確固たる信念を持ち、それを実行しているからだ。彼の中では一つの思想の元に全てが支配されており、そこには一片もの動揺はない。

 けれどもそのサーニンが、とある田舎町にある実家に戻ってきたことで、物語は幕を開ける。
 常識や慣習をものともせず、あるがままの自分を受け入れ、素直な欲求の元で暮らすサーニンは、純朴な(あるいは愚鈍な)田舎の人々には驚きと摩擦を引き起こすこととなる。
 母親すらもサーニンを理解出来ず、妹リーダもまた不安を感じる。一方のサーニンにとっては、周囲の人間たちのその反応こそが煩わしくて仕方がない。
 彼は思う、どうして皆が皆、常識なり模範なりを振りかざし、誰を彼をも型に嵌めようとするのだろうか。その強制こそが不愉快を生むのに、と。
 サーニンにとってはリーダは妹である前に、若く美しい魅力的な女でしかない。また彼女のやらかした火遊びとその顛末、そのためにリーダは自殺まで考えるのだが、も悩むに値しない単なる欲望即ち生の刹那の出来事に過ぎないのだ。

 サーニンの考える欲望はそれ自体が自然であり、抗う必要などない。けれども世の中はサーニンとは違い、あらゆるところで慣習が、常識が、決まりが、見張りの目を光らせている。
 例えば純潔。女は男にみだりに身を任せてはならない。だがそう謳う一方で男の純潔は問題にされないのだ。
 この非対称性にではなく、その「概念」そのものをサーニンは嘲笑い、そんな下らぬものを後生大事に崇める連中を蹴飛ばす。

 すると突然、烈しい憎悪と嫌悪の念が、サーニンを襲った。自分が性行しようと思っている女が、まだ誰とも性行していないのだと思って、幸福な気持ちになった男の顔を、彼はしばらく無言のままみつめていた。心からの悲しみと苦しみのために形の変った、善良な、人間らしい眼から、卑しく浅ましい露骨な動物的嫉妬が、毒蟲のように、覗いていた。(p.126, 「サーニン」)


 サーニンはどんな蒙昧をも見逃さない。その都度に彼は、嫌悪を抱くのだ。
 そのようなサーニンの抱く迷いも無ければ指針も無い説に従うか、それとも常識が支配する純朴で鈍感な「普通」を支持するのか、読者は常に選択を迫られる。
 作者がサーニンの方向を示しているのは明白ではあるし、彼の意見の具現であるサーニンの発言は苛烈であり行動は堂々としたものだ。あまりに一方的、と感じるのも確かではある。
 だがそれでもこの物語を嫌いになれないのは、サーニンの魅力と、彼もまた愚鈍さに翻弄されているからであろうか。それとも彼の侮蔑する蒙昧に宿る人間の醜さと小ささに、卑下と共に親しみを感じてしまうからだろうか。

 そんな開けっぴろげなサーニンと鮮やかな対象を見せる人物がいる。ユーリイだ。
 革命家として挫折しモスクワから戻ってきた彼は、「崇高なるもの」「絶対的なるもの」を求めて止まない。しかし同時に生に空虚さを感じてもいる。
 一体何のために生きるのか、ユーリイには分からない。彼にはどうやって生きていくかとのビジョンを描くことが出来ない。
 妹を持ち、親からは理解されず、都会から戻って来た田舎以外の世界を知る異邦人であり、また美貌と健康に恵まれ、そしてインテリでもある。
 サーニンとユーリイは鏡で映したが如く、その身の上は良く似ている。けれども彼らの思考は、まるで正反対なのである。

 正解を希求しながらも、己がその正解に値しないとどこかで感じているユーリイと、正解なる概念の存在に頓着しないサーニンと。
 本来は出会うことのない二人は、とある田舎町で出会い、そしてもう一生出会うことはない。


 サーニンの健やかさに嘆息しながらも、私はどうしてもユーリイにこそ親近感と、また同時にそれ故の嫌悪をも抱く。
 どちらが生き易いかは明らかだが、私はサーニンにはなれそうもない。インテリでもない私は、ソロヴェイチックにこそより一層の親近感を抱くが、それは。

「それは本当です。生きかたは誰も教えないでしょう。生きる技術もまた一つの才能です。この才能のないものは自分で滅びるか、自分の生活を光と喜びのないものにして、滅ぼしてしまうのです。」(p.193, 「サーニン」)

「君は死人です」と、サーニンは我にもなくぞっとして立ち上がりながら言った。「そして死人にとってもっとも必要なものは、本当を言うと墓ですよ……じゃ、さよなら……」(p.196, 「サーニン」)




 良い感じに陰鬱になって来たので、他の作品の紹介は割愛。
 この本は「サーニン」がメインを張っているので、この作品が合わない人にはかなり辛いかと。


シリーズ別:ロシア・ソビエト文学全集|作者別:アンソロジー
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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