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『暗く、深い、夜の泉』感想:★★☆☆☆

2011.08.14 Sun
暗く、深い、夜の泉 (一迅社文庫 は 1-2)
暗く、深い、夜の泉 (一迅社文庫 は 1-2)萩原 麻里 Fuzzy

一迅社 2008-07-19
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 「私」はどこまで「私」の支配下にあるのか、という問いかけがずっと以前から気になっている。
 良くも悪くも何かに対して衝撃を受けたときに湧き上がる感情、それは激怒だったり感動だったり歓喜だったり嫌悪だったりするのだが、その源泉を私は知らないし、それが湧き出す勢いもタイミングも私のコントロール下にはない。けれどもそれは紛れもなく私自身の感情なのである。それなのに勝手にあふれ出る感情は、時に私自身をひどく驚かせる。コントロール出来ない私は、一体何に規定されているのであろうか?

 最も私が驚愕するのは、私の『落窪物語』に対する偏愛だ。私はとてもこの物語が好きだ。それは否定しようがない。けれども『落窪物語』は一言で言えば「何もせずに白馬の王子様が出現するのを待つ」物語であり、それを愛する自分自身が理解出来ない。泥にまみれてでも自分の足で歩くことこそを良しとするのが私の嗜好であるはずなのに、それでも私は座してなにもしない『落窪物語』が大好きなのである。素晴らしく矛盾している。
 けれども『落窪物語』を愛する私も、それに対して嫌悪を剥き出しにする私も、どちらも「私」なのであり、無理矢理に否定するのは間違っているように思う。矛盾を解消する術がない以上、私に出来るのはただただ見つめることだけである。

 突発的に湧き上がる感情を否定せずに見つめ続けた結果、一つ気が付いたことがある。私が持っている意外な願望だ。それは自殺願望と名付けられるものであった。私はどこかで己の死を願っているのだ。思考する主体から逃げ出して、ただの物になりたいとどこかで願っている。その願いは静かでその分根深く、そして他者に否定されることを最も嫌っている。
 名付けるならば、それは緩やかな自殺願望。それは意識されるかされないかの境界線上に存在するほどに緩やかであり、また他人に否定されたくないがために他人に説明するのをも嫌う性質を持つ。故に、説明を求められるような激しい行為に出ることはない。高層ビルの上から飛び降りるようなことも、手首を切りつけることもない。そんな激しさとは無縁だ。
 けれど、選択肢が複数あれば、その中で最も死に近づけるものを選ぶ。いつか必ず訪れる死を少しでも手元に引き寄せようと、静かに暗く、深く、願っているのである。

 そんな己の願望を再度意識させてくれたのが本書『暗く、深い、夜の泉』なのでした。
 前振りが壮絶に長くなりすぎたので、あらすじその他は折りたたみ。






 本書の舞台となるのは私立谷津柱高校。両親を亡くし天涯孤独の身となった主人公・左記子は、谷津柱高校理事長である倉宮創一郎からの誘いを受けて、この高校へと転入することを決める。
 高校卒業までの身元引受人になってくれるという魅惑的な、けれども出来すぎた創一郎の申し出に、感謝と同時に疑惑を感じる左記子ではあったが、彼女の手には選択肢などそう多くはなかったのだ。
 それでもやはり、降りしきる雨の中、谷津柱高校への道を歩む左記子は迷っていた。学校に近づくにつれて高まる不安感は一体何なのだろうか? やはり来るべきではなかったのか。左記子は今更ながら、己の「秘密」、父にも言えなかった、そしてもしかしたら父の死の原因になったかもしれない「秘密」を意識する。
 立ち止まる彼女の前に突如現われたのは、美しい少女。彼女は左記子を一瞥するなり「帰れ」と冷たく言い放つ。その激しい眼差しに戸惑う左記子。けれどももう全ては手遅れであった。
 左記子の視線の先、迎えに現われた黒髪の謎めいた少女。倉宮凪。左記子の特異な「秘密」、生徒の自立性を重んじると言いながらも監視するかのような環境、どこか普通ではない生徒たち、そして調べるだけで死ぬとされる『やっつめの怪談』の噂。


 高校、それも生徒の多くが外国籍でインターナショナルな雰囲気漂う高校を舞台とするホラーだなんて、好きな人には堪らない設定で、つかみはオッケーな本作品だが、残念ながら色々と問題がある。
 導入部分の主人公は左記子ではあるが、実質の主人公は凪なのである。そして凪こそが私が前振りで延々と語った「静かな自殺願望を持った人間」なのである。そんな凪の精神構造を受け入れられるかどうかがまず大きなポイント。
 しかし凪の思考以上に難題なのが、本来主人公であるはずの左記子の噛ませ犬、もしくは踏み台っぷりをどう受け取るかという問題である。彼女は主人公であって主人公ではないのだ。なんと途中で主人公は凪にシフトする。その方法がまた問題だ。最初から凪の方が気に入っていた私ですら「え?」と思うくらいに、左記子はあっさり主人公の座から陥落してしまう。本当に彼女は無力だったんだな……が感想になってしまうのは大問題だと思う。
 本書の最大の謎となる『やっつめの怪談』の真相に左記子の「秘密」が大きく関わっている展開は非常に面白そうに思えたんだけど。まさか途中で主人公がシフトするだなんて、想像外すぎた。
 結末にしても誰も救われていないのがこれまた、うーん。オチが中途半端なのはシリーズの1巻目として書かれたせいでもあるんだろうけれど、結局2巻で打ち切りくらってるし。
 凪のキャラクターと最初に提示された「インターナショナルな雰囲気漂う高校を舞台とするホラー」の雰囲気しか評価するポイントがない。主人公のシフトがもうちょっと上手に行われていたらまた印象も変わったのだろうけれど。



 ちなみにこの一迅社文庫の『暗く、深い、夜の泉』は、講談社X文庫ホワイトハートから刊行された『暗く、深い、夜の泉。―蛇々哩姫』に手を入れて再録したもの。イラストレーターも変更されている。が、一陣社の挿絵は潔いまでに背景がない。白い。表紙も背景ないけどね。
 講談社X文庫ホワイトハートでは2巻である『朱い、夜の鳥篭。蛇々哩姫』まで発売されている。レーベル自体が既に存在しないので、古書でしか入手不可ではあるが。


暗く、深い、夜の泉。―蛇々哩姫 (講談社X文庫―ホワイトハート)  朱い、夜の鳥篭。蛇々哩姫 (講談社X文庫 ホワイトハート)





 一迅社文庫を初めて読んだので、そっちの感想も。
 まず紙質が悪い。黒色の細い糸みたいなものが、ところどころで紙の中に封じ込められているんですけど。最初、汚れかと思って擦っちゃったよ。
 たまに文頭が一字分下がってないのは、演出なのか間違えたのか悩むところ。明らかな誤植も一カ所発見してしまったし。
 あとは完全に私の好みの問題だけど、字間・行間をもっと詰めていいから上下左右のマージンをもうちょっと取って欲しい。
Theme:読んだ本。 | Genre:本・雑誌 |
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