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『太古からの9+2構造 繊毛のふしぎ』感想:★★★★★

2013.06.24 Mon


太古からの9+2構造――繊毛のふしぎ (岩波科学ライブラリー)

神谷 律 岩波書店 2012-02-09
売り上げランキング : 179476
by ヨメレバ


 岩波科学ライブラリーって『ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』が出てたシリーズか、なら気軽に読めるな。
 と思って借りて来たのに、細胞分裂の機構や筋繊維の収縮する仕組みなんて、「そういえば昔、必死こいて覚えたっけ」な懐かしい記憶を揺さぶってくださって、絶妙に痛痒い気持ちになった。

 思い出せそうで思い出せない微妙なところを突かれた私は疲労感に塗れたけれど、それは私個人の問題に過ぎない。
 本書の語り口は平易だし、分かりにくい箇所には直後に例え話が入るなど、読み手のことを良く考えて書かれた一冊。
 しかも内容が面白い。


 以下は長い上に重たいので、注意。








 本書ではサブタイトルにもあるように「繊毛」が主役に据えられている。
 場合によっては鞭毛とも呼ばれるこの構造物で有名なのは、精子の後部に生えているものだろう。精子の鞭毛はくねくねと動き、卵子に出会うべく移動する精子の動力となる。

 だが繊毛は精子以外にも真核生物の様々な細胞に存在している。
 真核生物とは、乱暴に言ってしまえば細胞に核を有する生物のことだ。そこには顕微鏡の下で蠢くミドリムシも、人間も含まれる。
 当然ながら、ミドリムシと私の間には大きな差がある。ミドリムシはたった一つの細胞から成る。対する私は、俗に60億と言われるだけの数と様々な機能性を有する異なる細胞群によって構成される、巨大な生物だ。
 けれども私ののどや肝臓の細胞には繊毛がある。ミドリムシにだって頭に一本生えている(精子と同じく、通常は鞭毛と呼ばれるが)。
 私が有する繊毛も、ミドリムシの有する鞭毛も、基本的には同じ構造を持っている。周囲に9本、中心に2本の微小管から出来ているのだ。

 これは驚くべき共通性だと筆者は語る。
 真核生物はその細胞に細胞膜、細胞核、ミトコンドリア、ゴルジ体、リボソームなどの基本構造を持ってはいるが、長い時間をかけて変化を繰り返した今となっては、種によって特徴的な差異を有するようになっている。
 にも関わらず繊毛だけは、ほぼ共通のままなのだ。。

 私も有するこの繊毛だが、ただ運動性のために存在するわけではない。
 かつては繊毛の動きは周囲の溶液を動かして水流を産むことだと考えられていた。それにより特定物質の濃度差を発生させ、それをトリガーとして特定の反応を起こさせるのだ。
 或いは精子やミトコンドリアのように、その動き自身が水流ではなく自身を移動させるための動力となるのだと思われてきた。
 それが最近、一次繊毛と呼ばれる動かない繊毛の存在が知られるようになった。
 しかも腎臓の尿細管の細胞に生えている一次繊毛が短くなる遺伝子疾患を有するマウスは、腎臓の肥大を患うことが分かった。つまりこの動かない奇妙な繊毛は、腎臓を健常に保つ上で何らかの仕事をしているのだ。


 広大な領域の生物を含む真核生物に共通する(例外的に植物には繊毛はない。かつては持っていたのだろうが、失ったのだと考えられている)この「繊毛」とは一体何なのか?どんな構造を持ち、どのように機能するのか。
 本書はそんな壮大で微細な疑問に光を当てている。

 一時繊毛の存在は最近知られたばかりであり、未だに解かれない疑問だらけだ。分からないことの方が多いと言っても良いのかも知れない。
 けれどもその繊毛なる小さな器官に興味を抱き、長く研究に携わってきた作者が語る内容は面白く、分かりやすい。
 平易な文章で書かれてはいるが、決して読みやすいとは言えない。何度も行ったり来たりを繰り返すことになるだろう。
 生物を学んだことがない人には、見知らぬ単語のオンパレードかもしれない。それでも本書は面白いと私は思う。


シリーズ別:岩波科学ライブラリー|ジャンル別:自然科学
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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 本書でちょくちょく出てくる繊毛研究のモデル生物であるクラミドモナスさん。
 あとがきで作者が「二本の鞭毛を動かして泳ぐ姿が健気で、初めて見た時から惹かれた」と書いていたので、動くクラミドモナスの動画を探してみた。



 ちょっと古いけど、ちゃんと鞭毛まで見えるのを見つけたので持ってきた。
 クラミドモナスの動く様子を見せてくれる動画は多いけれど、特徴的な2本の鞭毛まで見えるものは少ない。
 これは鞭毛がパタパタ動くことと本体の方が圧倒的に大きいから、そちらにピントを合わせることのが多いせいだろう。

 一方、この動画ではちゃんと鞭毛が見える。素晴らしい。……でも可愛いかなぁ?
 それに一生懸命に鞭毛を動かしてるけれど、画面内の位置が変わらない&画面がブレないことを思うと、このクラミドモナスさんちっとも泳げてないんじゃ。

 ところでコレ、アップロード者のコメントに、"Video from Kamiyasan from the 70s of a Chlamy cell swimming using its two flagella"とある。
 KamiyasanつまりKamiya-san、そして本書『太古からの9+2構造』の作者は神谷 律。つまりこの動画、作者の?


 と思いながら更に動画を漁っていたら、Kamiyasanの動画が一部使われた動画を発見した。



 冒頭に使われているKamiyasanの動画だが、右下に[Ritsu Kamiya]の文字が。これで確定っスね。
 この"C-Cilia in Motion"動画は『太古からの9+2構造』とも重複する内容を説明してくれていて、なかなか良い。


 更に繊毛の美しさに感心した動画があったのでペタリ。



 割と聞き取りやすい英語だと思うのだが、音質が残念すぎる。


 他にクラミドモナスの二種類の動き(普段の二本の鞭毛方向に前進する泳ぎと、緊急時の繊毛とは反対方向への泳ぎ)が見たかったのだが、見付からなかった。
 探し方が悪かったかな。


Theme:読んだ本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
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