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雑誌「幻想と怪奇」VOL.1 NO.1感想:★★★★☆

2011.08.08 Mon


 創刊号は魔女特集。この号だけ三崎書房からの刊行である。
 裏表紙に「我国最初の幻想怪奇文学研究誌」とある。そうか研究誌だったのか。


 掲載作品は以下。

魔女特集
・「魔女の樹」 M・R・ジェイムズ、紀田順一郎・訳
・「裏庭」 ジョゼフ・P・ブレナン、岡田三美雄・訳
・「ジプシー・チーズの呪い」 A・E・コッパード、鏡明・訳
・「白い人」 アーサー・マッケン、饗庭善積・訳

エッセイ
・「魔草マンドラゴラ」 種村季弘
・「さよなら、ドラキュラ伯」 権田萬治

・「顔」 E・F・ベンスン、鈴木栄吉・訳

連載
・Fantastic Gallery 「ヒリアルト・ミューラーの世界」 解説・麻原雄
・ホラー・スクリーン散歩1 「ドラキュラ血のしたたり」 瀬戸川猛資

・「女王の涙を求めて」 ロード・ダンセイニ、中原儀介・訳
・「妖犬」 H・P・ラブクラフト、団精二・訳
・「鼠の埋葬」 ブラム・ストーカー、桂千穂・訳
・「リーシュリップ城」 C・R・マチュリン、安田均・訳
・「焔の丘」 アルジャナン・ブラックウッド 、竹下昭・訳

幻想文学レビュー
・海外『ジ・オカルト』 石村一男
・日本『ブラックウッド傑作集』 山下武

・魔女文学案内 小宮卓

コラム
・地下なる我々の神々 秋山協介

・「だれかがエレベーターに」 C・R・ハートリー、伊丹皓一・訳
・「蒲団」 橘外男
・人でなしの世界 紀田順一郎

連載
・「悪魔の恋」第一回 ジャーク・カゾット、渡辺一男・平岡昇・共訳
・「世界幻想文学作家名鑑」1 荒俣宏・編



 魔女に特化しているのは巻頭の4作品くらいのもので、後は幻想怪奇文学全般からという構成。もうちょっと魔女作品が掲載されているのかと思っていた。
 三段組みだったり二段組みだったりと忙しい。同じ作品の途中で段組変わるとか、ちょっとビックリした。揃えて欲しい、ってのは挿絵の関係で無理な注文なのだろうか。
 感想は以下。






 トップバッターである「魔女の樹」は正統派な魔女モノで非常に良い。
 秦皮の樹には何か曰くがあるのだろうか。本作品では「スコットランドには秦皮の樹の傍で眠ると悪夢を見るとの言い伝えがある」としか言及されていない。が、これは悪夢なんて次元ではないわけで。

 次の「裏庭」は裏庭の草むらの描写が凄くいやらしくて素敵すぎる。子供の頃にセイダカアワダチソウなどの背の高い草むらに突入して、周り360度全部草!な経験をしたことを思い出してウンザリしてしまった。
 遠近感も方向感も見失う寸前だったが、それでも正常心を保てたのは友達が近くにいたことと、「叫べば声が届く範囲に一人くらい通行人がいるだろう」との確信があったからであって、それを助けも望めない単独でだなんて想像するだけで嫌である。しかもただの草むらじゃないし。

 「ジプシー・チーズの呪い」は因果応報なのだろうが、オチが良く分からなさすぎる。
 信ずるも信じないも、お好きなように――選ぶのは、あなただ。(p.27)

とのことなので、まぁ、うん……。
 「白い人」も良く分からない。が、それでも特に不満を覚えないくらいには面白いのが面白い。
 
 「顔」はオチがはっきりとしている作品。理由など諸々は謎だが。
 読んでいる間ずっと何かに似ているとモヤモヤしていたのだが、分かった。『八月の暑さのなかで』で読んだレノックス・ロビンスンの「顔」に似ているんだ。
 似ていると言っても私の主観でしかないレベルなのだけれど。人間が人間を人間として認識するポイントとなるのは顔と手であり、故に屍体の顔と手が一番怖いのだとの話も思い出した。
 どちらの「顔」作品も好きですよ。

 ダンセイニの「女王の涙を求めて」は色んな意味でグチャグチャでドロドロな本雑誌の作品群の中にあって、純粋たるファンタジーで清々しい作品。
 オチには「ですよねー」と笑ってしまった。

 ブラックウッドの「焔の丘」は描写が見事な作品。
 出展元は短編集"Pan's Garden"だとのことだが、これ日本ではそのまま1冊丸々翻訳されてはいないのね。まとめて読みたいのでまるっと翻訳してくれないだろうか。

 小宮卓の魔女文学案内は、連載されている「悪魔の恋」のネタバレをさらっとやっちゃってる気がするのだが、これは私の気のせいか。まだ連載一回目なので勘弁して欲しい。

 「だれかがエレベーターに」はもう嫌だ。ハートリーったらお上手すぎる。「あぁオチこう来るんだろうなー」と予想はしていたけれど、実際にここまで雄弁に描写されると、あぁ、もう、うん、ごめんなさい。夢に見そうなので、ホント、止めてください。

 「蒲団」も「だれかがエレベーターに」と同じく展開は大筋で読めるのだが、それでも興醒めにならないのが素晴しい。安いものには理由があるんですよね、分かります……。

 紀田順一郎の人でなしの世界は、江戸川乱歩の作品を怪奇小説として読み直す試み。乱歩自身は己の作品の一部が怪奇小説に属するものだと晩年に至るまで意識していなかった、との指摘は驚きだ。

 「悪魔の恋」は思っていた以上に面白かった。
 私は世界幻想文学大系の第一巻となったこの作品を、一度図書館で冒頭部分だけ読んだことがあるのだが、冒頭の時点でイマイチだなぁと切ってしまったのでありました。切り捨てるには早すぎたようだ。せめてこの第一回分くらいまでは読むべきだったなぁ。しかも良いところで「続く」になってるし。
 次回を楽しみにしようっと。



 以上が感想。予想していたよりもずっと面白かった。魔女特集だと言う割に、魔女を主題とする作品が少なかったのは残念だけれど。
 末尾の創刊の辞にも力が入っているし、相当熱意を傾けてこの雑誌を作ったのだなぁとしみじみ。
 1970年代から80年代に出された本を読む度に思うのだが、この時代は熱気があって宜しいですね。
 私自身がバブル崩壊後しか知らない世代なもので、実に羨ましい。「楽観論すぎる」だとか「単純化しすぎ」だとかこき下ろしたくなる時もあるのだが、そう思う自分の感情の底に妬ましさが存在することは否定出来ない。


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