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ドキュメンタリー『魔女狩りマニュアル』感想:★★☆☆☆

2013.06.07 Fri


魔女の誕生と衰退―原典資料で読む西洋悪魔学の歴史


 ナショナル ジオグラフィックによる1時間足らずのドキュメンタリー。
 かの悪名高き『魔女への鉄槌』がどのようにして生まれ、そして何故あれほどまでの影響力を振るったかを探ったドキュメンタリー。
 件の『魔女への鉄槌』は、異端審問官ハインリッヒ・クラーメルが魔女裁判に敗訴した後に生み出された。
 彼は魔女を魔女として裁けなかったことに屈辱を感じており、己の正当性を、そして魔女をあぶり出す方法を示すことに情熱を注いだのだ、と現存するラテン語の『魔女への鉄槌』の調査員は述べる。滅多に使われない、そしてあまりに感情的な単語が多すぎると言うのだ。








 しかしクラーメルはただ己の感情を文字に込めただけではなかった。彼は『魔女への鉄槌』が広く読まれ、彼の正当性を証明する書物となるように、あらゆる手を打ったのだ。
 この書物が有名に成り遂せたのには、全ての版に掲載された教皇教書の存在が大きい。これは教会がクラーメルの『魔女への鉄槌』をカトリックに相応しい書物として認めたことを意味している。
 だがそれは本物なのだろうか?
 調査員たちの判断は分かれる。だが偽造の可能性は拭いきれず、また例え本物だったとしても教皇による承認ではなく、単に金によって買ったものである可能性も残されているのだ。
 しかし当時の人々は、クラーメルが本に載せた教皇教書を信じたと思われる。彼の個人的な恨み辛みから書かれたと覚しき本は、こうして正当性を獲得したのだ。

 ここでふと疑問に思うことがある。有名な『魔女への鉄槌』だが、これの著者は二人いたはずだ、と。
 確かに『魔女への鉄槌』はクラーメル単独ではなくもう一人著者を持っている。彼の名はヤーコプ・シュプレンゲル。クラーメルとは異なり著名な大学教授だ。
 だが教皇教書と同じく、彼の関与もまた疑わしい。クラーメルが高名な彼の名を勝手に拝借した、あるいは金銭によって借りた可能性も否めない。
 『魔女への鉄槌』は余りにも感情的な、個人的な執念の色濃い代物なのだ。とてもではないが、複数人の手による作品だとは思えないと調査員は主張する。

 クラーメルは更にもう一つ、『魔女への鉄槌』のために労を取った。それは当時権勢を誇ったケルン大学からのお墨付き、つまりは認定書だ。
 だがこれもまた疑わしい。高名だったヤーコプ・シュプレンゲルを通して手に入れたのだとも、また金銭によったのだとも、更には偽造の可能性も捨てきれない。
 ただ最も確実なことは、認定書に名前を連ねた大学教授たちの内、『魔女への鉄槌』を精読したものはいなかっただろうという一点のみだ。


 クラーメルの目論見は成功した。
 既にグーテンベルグの印刷術の発明後の時代でもあった。彼の書物は最初に150部が印刷され、続いて数百部、数万部売れたとも言われている。

 ヨーロッパに混沌が渦巻く15世紀、ただ一人の男の屈辱が産み出した本が、終末論と結びついた恐怖によって「魔女」と呼ばれる存在を形作っていく。
 弱い女を狙って悪魔は人間に攻撃を仕掛けてきているのだ。裏で糸を引くのは神。
 人間の堕落を象徴する魔女たちは、終末を前に一斉に地獄へと舞い降りては、人間の醜さを弱さを汚さを全て報告する。その言葉たちは悪魔を通じて神へと届くのだ。そして終末が世界を焼く。
 そんな「物語」が真実味を持って立ち現れる。
 魔女を滅ぼさなければならない。神への告げ口をさせてはならない。

 魔女への疑問を口にする者は、魔女の手先なのだ。そんな風潮が広まる中で、『魔女への鉄槌』は空前絶後の影響力を博す。
 三部作の本書にはご丁寧にも魔女の見分け方から魔女への拷問の仕方、裁判の進め方、処刑の仕方に至るまで記述されていたのだ。悩むことは何もない。
 後は権威者の承認だけがあれば、それで全ては正義となる。

 魔女裁判の苛酷さは、もはやご存じの通り。
 裁判数の地域差は権威者が魔女の概念に同意したかどうかで大いに左右されるが、ヨーロッパ全土で見れば相当な人数が処刑されることとなった。



 一時間足らずのドキュメンタリーだということもあり、そこまで深い内容にはなってはいないが、実物の『魔女への鉄槌』を見られただけでも価値があったかなと。

 ただ疑問なのは、『魔女への鉄槌』そのものは果たしてどれくらい読まれていたのだろうという点。
 『魔女への鉄槌』そのものよりも、それが他の著名人により引用され慣用されたことによって影響力を広めていったイメージが私にはあるのだけれど。
 調査員が「あまりに感情的」だと指摘しているように、当時の人間だって読めば同じように感じただろうに。それを正当なものとするために、クラーメルの感情的な部分をそぎ落とし、お行儀良くした意図的な「編集」があったんじゃないかと思うのだが。
 とは言え、15世紀じゃあ追跡は困難を極めるよね……。


 一番上の書影は『魔女の誕生と衰退―原典資料で読む西洋悪魔学の歴史』。この書籍では一部だが『魔女への鉄槌』の日本語訳を読むことが出来る。
 まぁ私は絶賛積んでるんですけどね。


テーマ別:魔女|テーマ別:魔術
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 ちなみにこのドキュメンタリーはhuluで見た。WiiUを買ったので、2週間ではなくて1ヶ月のお試しが付いていたのでつい。
 ただ割と気に入ったので、このまま本契約するつもり。
 ナショジオのドキュメンタリーは色々と揃っている印象なので、また見たら感想を書く予定。
 需要? そんなものは知らぬ。



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