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『血の滴(「創造される傳説」の一)』感想:★★☆☆☆

2013.05.23 Thu




 国立国会図書館のデジタル化資料から読むことの出来る一冊。一般家庭のパソコンからもアクセス可能なので便利。
 ただところどころ薄くて読み辛いページがある上に、p.371からp374にかけては一部読めない箇所がある。

 「創造される傳説」の一、とのサブタイトルがあるが、二以降は日本語翻訳はない。
 この「創造される伝説」は全三部から成り、それぞれ«Капли крови»("Drops of Blood", 「血の滴」)、«Королева Ортруда»("Queen Ortruda", 「オルトルダ女王」)、«Дым и Пепел»("Smoke and Ash", 「煙と灰」)とのタイトルが付けられている。
 英訳版はちゃんと三部全てが出ている。気になる方は上の英語タイトルでGoogleにでも聞いてみてください。


 話の流れとしてはネタバレながら、譯者序に書いてあるので引用する。








第一部『血の滴』ではエリサヴエタとの戀を中心とする、詩人トリロドフの生活を描き、第二部『オルトルダ女王』では地中海の空想の島王國に於ける若い生れながらの女王オルトルダの生活を描き、第三部『煙と灰』ではこの二つの別々な物語が結びつけられて、新しい發展をなしてゐる。オルトルダ女王の死後島王國の新しい王を選擧する必要が起こつた時、トリロドフがその候補に立ち、種々な曲折を經て、王に選ばれるのである。その時丁度トリロドフの家は反動派の人々の攻撃を受けるのであるが、トリロドフはその庭園の温室を飛行船に變へてロシヤを逃れ、エリサヴエタ(その頃はもうトリロドフの妻)とキルシヤと共に地中海の島王國に下るのである。(「譯者序」p.11-12)


 と言う訳で、第一部である『血の滴』ではエリサヴエタとその家族である父親ラミエエフ、妹エレナ、両親を亡くしエリサヴエタの家に身を寄せる従兄弟ピヨートルとミーシャのマトフ兄弟との暮らしと性格が描写され、また若いエリサヴエタの恋への憧れと、ピヨートルの彼女への愛情が描かれる。
 またもう一方の主人公である、詩人であり私設学校の創立者兼運営者であり更には化学者でもあるトリロドフの物語も紡がれる。彼は既に妻に先立たれ、残された息子キルシヤを養育しているのだ。
 エリサヴエタとトリドロフの両者がいかに出会い、いかに関係を深めていくか、また彼らが生きるロシアがどのような時代の中にあるかが語られる。
 彼らの恋が結実に向かい歩を進めていく一方で、トリロドフをとりまく環境はますます不穏の度合いを強め、またトリロドフがマトフ兄弟の父親の失踪に関与したことが示され、様々な不安の中で第一部は終了する。

 第三部への複線を張り巡らせた状態で第一部が終焉するがために、読み終わった気分はなかなかに微妙だ。日本語翻訳の続きがないと知っているだけに、その気持ちは強い。
 だが正直、今更出版してよと言いたくなるほどに面白いわけでもないので、日本語翻訳はもはや絶望的かなとも。
 第二部は一旦全く関係のない島王国の女王、でもエリサヴエタとは何らかの関連があるのかも?、の話になるようなので、いっそ第三部を読もうかな。



粗悪で貧弱な人生の一片を取って、それから甘美な傳説を創造する。何故なら私は詩人であるから。(p.1)


 ただソログープは冒頭でこう宣言している以上、全てはソログープの、そして詩人であるトリロドフの創造したものであるのかもしれない。
 トリロドフとエリサヴエタは作中で、自分たちが創作された作品なのではないかとの疑問を交わしているのだから。
 彼も彼女も、彼の静かな子供たちも全ては人生の一片から切り出され、またそこから作り上げられた伝説なのだろう。

たゞ信じてゐただけである! 彼はたゞ眞理を探求してゐただけで、それを創造することは出來なかった、――非在から神を呼び出すことも、辨證的工夫から惡魔を呼び出しことも、偶然的な波動から勝利の愛を呼び出すことも、頑強な『否』から勝利の憎惡を呼び出すことも出來ないのであつた。(p.225)


 ただ私は、この後者の「彼」の方にこそより一層の親近感を覚えるのだけれど。


作者別:ソログープ|出版社別:春陽堂
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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