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『緋色の研究【新訳版】』感想:★★★★☆

2013.01.29 Tue


緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫)

アーサー・コナン・ドイル 東京創元社 2010-11-27
売り上げランキング : 50600
by ヨメレバ


 ご存知シャーロック・ホームズシリーズが初登場する記念すべき1冊。
 アフガニスタンに派遣されたものの、肩に銃撃を受けた上に病まで得、精神的にも肉体的にも疲れ果ててイギリスへと戻ってきた軍医のジョン・ワトスン。
 乏しくなる一方の財布の中身から、ロンドンで今まで通りの生活を続けることは出来ないと悟り、誰かと家賃を折半して部屋を借りたいと思い立つ。
 偶然出会った知人が紹介してくれた同居人候補者こそが、シャーロック・ホームズ。
 このホームズが天才的な観察眼と思考力の代わりに、倫理観その他の「普通」を捨て去った人間であることにワトスンが気が付いた頃には後の祭り。
 ホームズお気に入りの、ベイカー街221番地Bでの同居生活は既に始まっていた。
 そしてワトスンも興味心から、ホームズと共に事件を追うことになる。


 ただ、ワトスンのみならず読者も、ホームズの思考に付いて行くことはほぼ不可能だ。何せ犯人はホームズに捕まる場面で初登場するのだから。
 それでもホームズの言い分をそのまま信じるのならば、犯人が具体的に誰かまでは分からずとも、被害者とどのような関係にあるどのような属性の人物か程度ならば、分かることになるが。








 この『緋色の研究』は二部構成になっており、ワトスンがホームズと出会い彼の探偵業に巻き込まれ、そして犯人が捕らえられるまでの前半部と、犯人がこの凶行に及ぶまでの軌跡を描く後半から成る。
 ロンドンの込み入った町並みと、ホームズの奇妙さ、そしてそれに振り回される一般人ワトスンの悲喜劇が印象的な前半部とは打って変わり、急転直下の犯人判明を経ての後半部では、突如どこまでも続くアメリカの荒地で今にも行き倒れそうな男の物語が開始されるため、最初は面食らう。
 だがその男が契機となり、ごく普通の人間だったはずのある人間が連続殺人犯へと変わってしまうまでの流れは、印象的な風景描写と共に深く印象に残る。前半の舞台が人の多い都市ロンドンだっただけに、その落差がとても鮮やかだ。
 
 また、恐るべき執念を宿した犯人が、その情熱の一方で己の野望を果たすためにマメに仕事を渡り歩き、地に足の着いた暮らしをしているのも印象深い。
 彼にとって長年胸に秘め続けてきた執念は、もはや特異なものではなく、当たり前の存在になっていたのだろう。
 ただ、彼の標的となった被害者たちが、長い年月を経ても犯人とその動機を忘れずに抱えていたのが、腑に落ちない。
 彼らの行為は悲劇を生んだが、しかしそれが彼らにとって自身の良心を刺激するような、忘れがたい出来事だったとは決して思えないのに。だがこれは、直後から開始された犯人の行為が彼らに強い恐怖をもたらし、そのまま彼らの奥深くまで染み込んだ結果だと思えば良いのか。

 ホームズとワトスンの凸凹コンビがなんとも面白く、エンターテイメントとしては、今読んでも一級品。
 ただ謎解きなどの細かいところまでを気にし始めると切りが無いのも事実。


ジャンル別:推理小説|作者別:コナン・ドイル
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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 今でも人気のホームズとは言え、当時と現在では時代が違うのだから、当然ながら読んでいて引っかかる表現はある。今回では、特にモルモン教に関する記述。
 それは仕方が無い。が、少し前にアメリカドラマ『コールドケース』で、敬虔すぎるモルモン教徒の親族に厳格に育てられたがために自身の心をコントロール出来なくなり連続殺人鬼になった男の話を見たばかりだったのもあり、とても気になった。

 その点誤解が生じないように、原文を削除訂正しろとは言わないが、今日の観点から見て云々の記述くらいは入れても良かったんじゃないのか。もう古典だからと言われても、いやそれどうなのよ。
 古典だと言うならば、当時と現在の常識が既に変わってしまっていることを踏まえて、補足しておくべきなんじゃないの。
 モルモン教だって当時と今とでは随分と姿を変えているそうだし、それでもそのまま補足ナシで「新訳版」として出すんだ。へぇ。


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 NHKで放送した舞台を現代に移した『SHERLOCK シャーロック』の1話「ピンク色の研究」はどれくらい『緋色の研究』のネタを使っているんだろうとの興味から読み始めた今回。
 期待したよりも、相似点がなくて少しガッカリ。
 原作よりもドラマの方がガンガン人死んでるし、何よりも犯人の動機が全く違うしね。
 けれど原作を読んだせいで、「ピンク色の研究」ラストで犯人がホームズに持ちかける賭けが本当に頭脳で解決出来るものだったのか、それとも実は偶然に頼るものだったのかが更に分からなくなった。

 後者ってことで良いのかな……、自信がないぞ。

Theme:本読みの記録 | Genre:本・雑誌 |
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