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『モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集Ⅱミステリ編』感想:★★★☆☆

2012.10.19 Fri


モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)

エドガー・アラン ポー 新潮社 2009-04-25
売り上げランキング : 19102
by ヨメレバ



 文字が妙に大きくて読みにくい……のは、この本の前に読んでいたのが昔の岩波文庫だからそう感じるのも仕方が無いとして、翻訳された文章が妙に引っ掛かり何度も途中で躓いてしまった。
 ポーの翻訳物でここまで「ううん?」と思わされたことってないのだけれど、一体何が違うのだろう。と言うか、私だけ?


 新潮文庫のポー短編集Ⅱは「ミステリ編」と題して、6作品を収録。
・「モルグ街の殺人」
・「盗まれた手紙」
・「群衆の人」
・「おまえが犯人だ」
・「ホップフロッグ」
・「黄金虫」


 この短編集で気になったのは、「語り手」。
 どの作品も全て三人称ではなく、作中の一人が語り手となり彼の視点から物語は綴られていく。けれども彼はあくまでも「語り手」であり、物語の主人公ではない。
 語り手は作品によっては結局誰なのかすら分からないままに終わることすらある。ワトソン役を通り越して、黒子役に近い。








 名探偵デュパンが初登場する「モルグ街の殺人」では、パリに滞在する「わたし」が語り手となる。
 「わたし」が一体何者なのかは語られないが、彼はパリで偶然によりデュパンなる奇抜な男と知り合いとなり、彼の探偵としての能力の目撃者となる。
 彼らが遭遇したのは、モルグ街で起こった残虐な殺人事件。娘は殴られ首を絞められた上に暖炉の煙突部分に詰められ、母親は切り刻まれた上に階下に突き落とされていた。
 更に、悲鳴を聞いて現場に駆けつけた死体発見者たちは言い争う何者かの声を聞いていた。彼らはその片方は間違いなくフランス語だったと口を揃えて証言したが、もう一方についての意見はさっぱり一致を見なかった。
 果たして犯人は何者なのか?

 ……オチまで読んで、既視感を覚えた。同じように釈然としない思いを抱いて天井を見上げながら眠った日が遠い昔にあった気がする。
 記憶にゆるやかに浮かぶ映像の天井板の近さから、あれは私が二段ベッドを使っていた時期、小学生中学年の頃だったんじゃなかろうか。
 探偵物の原形だと言われて期待して読んだ記憶もある。が、原形と言うことはキッチリとして形にまで成熟した完成形ではなく、あくまでもその先行でありジャンルの切っ掛けだと理解すべきだったよ、過去の私。 


 続く、「盗まれた手紙」はデュパンシリーズ3作目。
 こちらはルール違反な気配のある前者とは違い、とてもオーソドックスなお話。
 これも過去に読んだ気がしないでもないが、この手の話は割とありそうだしなぁ。
 1作目と3作目が収録されているのに、2作目がないのはその作品が「ぶざまに失敗」しているからだとは翻訳者の弁だが、折角だから一緒に入れて暮れれば良かったのに。


 「群衆の人」は一風変わって、殺人も探偵も登場しないどころか、何も起こらない一作。
 無為な行為の末に、不条理な真実が突如目前に開ける様は面白い。
 追跡者である「わたし」が語り手の役目をも引き受ける。

 「おまえが犯人だ」の語り手の正体は一切不明なまま。しかし己のことを、「オイディプス王の役割を演じるだろう(p.139)」と予言しているのを見るに、この一連の事件を語ることで自分自身を破滅させてしまう人物なのだろう。
 話の筋はオーソドックスで、過去は知らねど現在の読者は全てを予見出来るだろう。
 事件の真相が発覚する下りが、中世の「殺害された死体は、殺人者に触れられるとその傷口から血を流す」との俗説を思い起こさせて、実に良い。

 「ホップフロッグ」での語り手も謎のままである。
 これは理不尽な扱いを受けた男の、権力者への強烈なしっぺ返しの物語。
 「モルグ街の殺人」を読んだ後では、両者に登場する要素に関連性を探してしまう。

 ラストは「黄金虫」。これは過去に読んだことがハッキリしている。
 お手本のような宝捜し物で、素晴らしい安定感。やや最後が尻切れトンボな気配もあるが。



 「短編集」なのだから当然とは言え、どの作品も簡単に読み終わってしまう。
 ミステリ、つまりは謎の発生とその解消という一連のフォーマットが存在し、落としどころが提供されているのために、幻想色の強いポー作品と違い、読み終わった後に悶々とする必要がなく、その点は安眠には良い。
 が、個人的にはやはりポーは、読み終わった後に煩悶とさせてくれる作品の方が好みだなぁ、と。
 

 ただそれでも、落ちぶれつつある家系に生まれた最後の世代、栄光の残滓によって高い教養を授けられ、同時に天賦の才によりそれを受け取るだけの資格を持った人物が「モルグ街の殺人」、「盗まれた手紙」、「黄金虫」に登場するのが印象的だった。
 彼らは頭脳明晰な人物ではあるが、その高い知能故に俗世間の「普通」から零れ落ちてしまっている。
 そんな彼らの隣には、「語り手」でもあり、基本的には世俗の人間でありながらも浮き世離れした彼らと交流を深めることが可能な人間がいる。
 この部分が気になってしまうのは、理解されぬことや己の孤独をも気にしないであろう彼らに、それでも理解者を配したポーの内心を想像してしまうのからだ。そこに切実さを察してしまうのは、単に今の季節のせいだと良いのだが。


ジャンル別:ミステリー|作者別:エドガー・アラン・ポー
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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 翻訳が凄く気に入らない。と言うか、単純に読みにくい。
 けれど、既に同じ翻訳者の『黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集Ⅰゴシック編』をも買ってしまっているという……。

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