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映画『ヴァンパイア(岩井俊二監督)』感想:★★★★☆

2012.10.14 Sun


20121014-2.jpg


 「『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』の監督岩井俊二最新作!」と煽られても、「はぁ、そうですか」としか感想を抱けない私がわざわざ映画館までこの映画を観に行ったのは、たまたま手に取った映画のチラシにH・H・エーヴェルスの小説『吸血鬼』を連想したから。
 観終わった後にもその感想には特段の変更はない。

 この映画はPG12ながら、血が飛び散るスプラッタではなく、血がじわりとじわりと抜かれていく描写が登場するので、後者が苦手な方はご注意ください。
 採血の度に「何だか損した気がする……」なんて感想を抱く私には、ややきつかったです。何人がスプラッタになろうが、腹を掻っ捌くシーンが大写しになろうが、全く気にしないタイプなのに、一緒に貧血になりそうになった。


 本作の主人公たる吸血鬼は、日光に当たると灰になる人の形をした人ならざる者ではなく、単なる人間。自殺サイト内で複数のハンドルネームを持つ彼だが、その本当の名前はサイモン・ウィリアムズ。
 彼は日常では高校の生物教師として、家ではアルツハイマーの母親の介護をしながらごく平凡そうに暮らしていたが、だが彼には血への欲望があった。
 その為に彼は自殺サイトに書き込んでは仲間のふりをして自殺願望者と会い、自殺の方法として過剰な採血を持ちかけ、そうやって血を得ていた。
 後をすぐに追うから。そうサイモンは複数の自殺願望者に告げたが、だがそれは嘘でしかなかった。彼は自殺願望の持ち主ではないのだから。








 だがサイモンの血への欲求は、日常に波を立て始める。
 血を抜かれた屍体が発見されたことから、自殺願望を持つ者から血を抜き取って殺す連続殺人鬼、ヴァンパイア、がいるとのニュースがネット上を駆け巡ったのだ。

 更に日常は彼の望まぬところで変化を続ける。
 アルツハイマーの母親がきっかけで出会った警官はサイモンを気に入り、妹ローラを紹介する。彼女はすっかりサイモンの彼女気取りで、彼の家を訪れては母親の世話を焼き、夕食を作るようになってしまった。
 一方で彼の高校の生徒である日本からの留学生ミナは、生物室で自殺を試みる。未遂で終わったものの、サイモンは彼女に「自殺なんてダメ」だと説教する羽目に陥る。そんなことを言っている自分は何なんだ?
 血を求めて自殺サイトから見つけた自殺願望者のハンドルネーム「ラピスラズリ」に会いに出向けば、彼女は一人ではなく、同じ志の仲間複数と現れた。しかもその中の一人が不思議な薬品での自殺を提案し、あわやサイモンも自殺仲間入りをしそうになる。

 咽せながらそれでも生を求めて足掻いたサイモンの後を追って這い出てきたのは、自殺願望を持つラピスラズリの仲間のはずの「レディバード」。
 彼女はサイモンがヴァンパイアであることを知りながらも彼を恐れず、彼女はサイモンの救い主となるかと思われた。だが。
 歪な日常に生きるサイモンは、どこまでもしなやかで逞しく押しつけがましい本物の生命力を持つ日常の住人であるローラによって破滅する。


 美しい映像で紡がれるこの映画が問いかけたのは、日常と普通、そして狂気との境目。
 サイモンは異常者なのか? 確かに彼は連続殺人鬼で、血への異常な欲求を持つ、普通ではない人だ。
 だが同時にサイモンは快楽殺人者であるレンフィールドの行為に強い嫌悪を覚える。また、彼は折角手に入れた血を飲んでも、吐き出してしまうのだ。
 彼が自殺を考えるミナに伝えた言葉には嘘があったのか。
 揺るがぬ強固な普通を体現するローラは、けれどもどこか邪悪に見える。彼女に浸食されつつあるサイモンの方が弱者で、そして己を守る力も無い正常者に見える瞬間がある。
 血は命そのものだ、とはよく聞く言い回しだが、けれども血が見えるほどに流される時には、それは同時に死へと接近しているのだ。
 死を感じずして生を実感できず、異常を糧としなければ正常でいられなかったサイモンの姿を、全て否定してしまえるだろうか。
 彼は、レディバードという自ら犠牲者となることの出来る救い主と出会えたのに、けれども直後に彼の異常は彼を飲み込んで弾け、彼は司法の手によって裁かれ、そして正常だけが残る。



 エーヴェルスの小説『吸血鬼』もこれくらいに綺麗な映像で映画化されれば良いのになぁ、なんて思ったけれど、絶対に採算摂れない。
 己の衝動を長らく知ることのなかった『吸血鬼』のフランク・ブラウンと、己の衝動を知り、それを解決するために平然と自殺願望者を見繕うサイモン・ウィリアムズ。
 吸血鬼に己の首筋を差し出す者自発的な犠牲者が勝手に現れる前者と、数多の犠牲者の上にようやっと出会うこととなる後者。
 前者の犠牲者が吸血鬼を支配し、独占することに腐心していたのに比べ、前者の犠牲者は無私である。
 だがどちらも、破滅する。
 フランク・ブラウンは己の正体を知ったが故に、サイモン・ウィリアムズは己の正体を知られたが故に。
 吸血鬼フランクが熱狂する時代の体現だったのに対し、サイモンは日常にギリギリで掴まっている疎外者だ。
 吸血鬼そのものに象徴される時代と、吸血鬼を犠牲者に捧げて成立する時代では、どちらが果たして真に「真っ当」なのだろうか。


ヴァンパイア 岩井俊二監督最新作 ヴァンパイア オリジナルサウンドトラック VAMPURITY


 映画『ヴァンパイア』には岩井俊二監督自らが書いた原作小説と、映画で使われたサウンドトラックがある。後者は画像がない。
 映画は映像がとても印象に残る美しさだし、音楽も耳に残る良い曲なのだが、スローモーション+周囲の音が徐々に消えてメインテーマが流れる演出が複数回登場することに、ややうんざり。様式美だと思えば良いのかアレは。


覚え書き(本に纏わるあれこれ):映画感想|テーマ別:吸血鬼
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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 金曜日の夜にわざわざ梅田スカイビルまで行って、梅田ガーデンシネマで『ヴァンパイア』を観た。
 スカイビル遠いよ……、もう少し大阪駅から近ければ良いのに。レイトショー料金が適応されて安かったのは良かったけれど。
 金曜の夜に一人で映画は寂しいかもしれないと思ったけれど、意外に快適でした。ガーデンシネマが元々からして一人客が多い映画館だってのがミソなのかもしれないが。

Theme:見た映画 | Genre:映画 |
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