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『ペンテジレーア』感想:★★★★☆

2011.07.10 Sun
ペンテジレーア (岩波文庫)
ペンテジレーア (岩波文庫)クライスト 吹田 順助

岩波書店 1991-03
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 旧字旧仮名。同じ人物が色んな名前で呼ばれるので、混乱する。

 まさか『サロメ』を可愛い女だと感じる日が来るとは思わなかった。そんな強烈な初恋物語。
 サロメと言い、ペンテジレーアと言い、何故そこまで苛烈な初恋に陥らねばならないのか。しかもその苛烈な初恋には、ちゃんと「甘酸っぱさ」や「切なさ」をも内包されているのだから、手に負えない。


 ペンテジレーアの舞台はギリシア神話の時代。ギリシア軍がトロヤ軍を包囲している最中、突如としてペンテジレーア率いるアマツォーネ族の大軍が押し寄せる。
 アマツォーネたちがトロヤに加勢するのではないかと恐れるギリシア軍。だがしかし、アマツォーネたちはトロヤにもギリシアにも加勢することはなく、彼ら2軍に襲いかかるのであった。その魂胆がどこにあるのか分からず、ギリシアの英雄たちは困惑するが、その間にもアマツォーネたちは優位に戦いを進めていくのであった。

 ギリシア軍を困惑させたアマツォーネたちの行動ではあるが、そこには当然ながら理由がある。それは「男狩り」である。
 女だけから成るアマツォーネ族は繁殖のために男、それも強い男を必要としており、戦場で刃を交えた上で己が認めた男を倒し屈服させて持ち帰るのである。
 女王ペンテジレーアの眼鏡に叶ったのは英雄アキレウス(本書ではアヒレス)。彼女は母から「アヒレスを夫とせよ」と遺言されていたのだが、本人を一目見た瞬間に恋に落ちてしまう。対するアヒレスもまた、戦場でまみえた彼女に恋をする。
 だがこのお互いを愛する思いは、すれ違いと勘違いとを動力源に、悲劇に向かって疾走することとなる。


 以下、ネタバレ注意。『サロメ』のネタバレも含む。





愛の神がわたしに追ひついたのです。
それでもわたしはすばやくも、二つに一つをえらばうと決心した――
あなたに打ち勝つか、さうでなくば死んで了はうと。
(p.185)


 ペンテジレーアの上記の台詞が全ての原因を示している。
 ペンテジレーアは全力を尽くしてアヒレスに挑み、そして負けた。けれど死は得られなかった。二つの道しか存在しなかった彼女に、第三の道が与えられてしまったのが悲劇への幕開けとなる。
 「あなたに打ち勝ちたい」との彼女の言葉に従うべく、決闘の流儀を投げ打って形だけの武装で現われたアヒレスと、彼に負けた己を許せず、今度こそ彼に打ち勝ち殺してしまおうと怒り狂うペンテジレーア。
 その結末はあまりに激烈だ。愛も憎悪も感情の全てを注いだアヒレスを、ペンテジレーアは殺してしまう。それもただ殺すだけではなく、犬に混じって彼の胸を食い千切るのである。
 喰らってしまいたいほどに愛してる、を実際に行動に移して後、彼女ははたと正気に戻る。そして己の行為を理解し、胸に吹きすさぶ感情の激しさ故に死ぬ。

 サロメを凌駕する程の、見事な狂人ぶり。ペンテジレーアを見てしまうと、サロメが妙に可愛い女に見えてくるから困る。
 サロメは恋しい男を殺すが、実際に手を下すのは彼女ではない。王に請い、首斬役人が殺す。対するペンテジレーアは己の手でこそ恋しい男を殺し、そしてその肉を喰らう。
 サロメは恋しい男の後を追って死ぬが、それは彼女の望みではない。彼女は王に殺されるのだ。対するペンテジレーアは武器も薬も使わずに、己の感情一つで望んで死んでいく。

それならば、それは錯誤であつた。接吻と噛付と、
それは平仄が合ふのだ。それで心から戀するものは、
一方の代りに、片つ方の手段をすら取ることもあるのだ。
(p.257)


 本当にごちそうさまでした。こんなクソ暑い時期にこんなクソ熱い物語を連続して読みたくなんてなかったです。
 

 ただこのペンテジレーア、人物造形が良く分からない。良い感情にも悪い感情にも引き摺られやすい、元々からして狂気とスレスレな女王様、ってことで宜しいのだろうか。
 しかし、物語終盤で司祭が、戦いに赴く前のペンテジレーアのことを
彼女は彼女の足の裏で遊んでゐる、
斑點の地蟲をも踏みつけなかつた。
(p.229)

と称したりしているので、よく分からない。
 女は優しい性格でなければならない法律でもあるのかよ、別に狂女で良いじゃない、と個人的には思うのだが。
 まぁそんな良く分からない性格の女王様だが、ちゃんと理解者たる部下がいるのにちょっと和む。彼女を諫め、場合によっては嘘すら吐くプロトーエは非常に良い子である。そんなプロトーエすら弓で射るペンテジレーアに疑問が膨らむが。

 このペンテジレーアをどう評価するか、そしてこんな顛末で殺されるアヒレスをどう考えるかによって、個人的評価が大きく変わりそうな作品である。
 ギリシア神話に思い入れがあるほどに叫びたくなる作品な気がする。




 ギリシア神話に思い入れのない私個人としては、一番気になったのが「女だけの国」設定を最初に生み出したのは誰なんだろうとの一点だったりする。
 私が初めて「女だけの国」設定を見たのは『ふしぎ遊戯』だったが、それは私が初めて買った漫画がこの作品だったから当然と言えば当然の話で、原作にはないけどアニメ『スレイヤーズ』でもやってたなぁ。
 今でも定番ネタだったりするのかしら。最近アニメ見ないから分からん。と言うか、この発言、年齢が分かるな。


 旧字旧仮名だと言うのもあるが、同じ人が色んな名前で呼ばれるのが辛い。アヒレス、アヒル、アヒロイス、ペリーデ全部同じアヒレスのこと。最初に「アヒル」表記を見た時は、頭の中を「あふらっく!」と叫びながら白いアヒルが通っていったよ。
 それに加えて、なんだか印刷にムラがあるのですが。これは私の本だけなのか。
 p.143の頭に2行分の空白があるんだけど、これって他の本もそうなってるの? それとも2行まるっと抜けてるのか。
 あとどうでもいいけど、ずっと「ペンテレジーア」だと思っていた。


関連記事:『サロメ』感想:★★★★☆
Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
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