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『ガラスの文明史』感想:★★★★☆

2012.07.08 Sun


ガラスの文明史

黒川 高明 春風社 2009-02
売り上げランキング : 785962
by ヨメレバ



 約五千年前に初めて作られて以来、人類と共にあった「ガラス」に関する歴史を描いた1冊。
 当初は宝石を模倣した色ガラスから始まったものの、その優れた特性から容器として、また芸術性のある贅沢品として発展し、現在でも窓ガラスを始めとして様々な分野で文明を支えているガラス。

 だがガラスの歴史は一筋縄ではいかない。
 新たな技術のパイオニアたちは自分たちの発見が盗まれることを恐れて、その秘密を文章またはそれに類似する方法で残すことはなかった。技術は人から人へとただ受け継がれ、故に戦争や政治的不安定により職人が離散した途端に失われてしまう。
 また技術が確立したところで、それを維持するには原料の安定的供給や商品の買い手、パトロンが必要なのである。
 燃料である木材の枯渇、環境への影響からの強制的な工場の移動、更には宗教的な、あるいは単純なる流行の変化からの資金繰りの悪化等の変化に晒され、ガラスを巡る環境は移り変わっていく。








 化学的な分析手段など存在せず、化学式すら知らなかった時代の職人達は、それでも数多の試行錯誤からガラスの技術を途絶えさせることなく、現在にまで生命を繋いだのだ。
 その変遷をガラスだけではなく歴史的な視点を交えながら語ったのが本書の第一章である。
 第二章では、ヴァルトグラスに話題は移る。


 ヴァルトグラスとは、八世紀末頃からヨーロッパで作られ始めたものを指すようだ。
 それ以前までは東地中海から原料を輸入していたのだが、エジプトで産出されていたナトロンの枯渇によりそれがままならなくなったことから新たなアルカリ源への圧力が高まり、結果として見いだされたのが特定の植物の灰であった。
 この灰は、他地域から輸入していた原料と比べれば供給が安定しており、更には輸送費も安価で済んだ。そのために、この新たなアルカリ源を用いたガラスは、長らくヨーロッパで発展していくこととなる。
 その様に焦点を当てたのが第二章になる。

 職人たちの身分制度や、現代の分析技術を用いて明らかにしたガラスの組成の移り変わり、実際の作品などの説明も楽しい第二章だが、末尾でクリズリングの問題に触れているのが興味深い。
 ガラスは安定な物質ではあるが、何世紀にも渡って空気中あるいは地中に放置されていれば、周囲の水分や化学物質により表面は変化を被る。これらの変化は風化と呼ばれるが、それとは異なり、表面にひび割れを生じる現象のことを「クリズリング」と呼ぶ。
 クリズリング、つまりは表面に細かな多数の亀裂が生じているガラスは、その透明性を失う。
 この現象が特に問題となっているのは、十七世紀から十九世紀の近世に作られたヴァルトグラスである。
 反応が起こるかどうかは保存状態に決定的な理由があるが、その根本的な原因はガラス自体の組成にある。透明度を求めたヴァルトグラスは、原料精製の過程で灰に含まれるCaOをも喪失してしまい、結果、クリズリングを生じさせやすい作品を多数生み出すこととなった。
 対してヴェネツィアで作られたガラスには、この問題に悩まされているものは少ない。これはヴェネツィアの職人達が、クリズリングを解決する秘訣を知っており、それを秘密にし続けたからである。
 ……なんて話が展開する第二章がまた面白い。


 最後の第三章は近代ガラスの始まりと題して、現代にまで物語は辿り着く。
 本書全体を通して多数掲載されているガラスの組成は価値があるのだろうが、全くの素人にはなかなか手強かった。
 ガラス組成の分析技術も気になる。どうやら非破壊検査ではなく破壊検査のようで、資料は失われてしまうようだ。分析技術はまだまだ発展するだろうし、現在の検査で資料を損失してしまうのは惜しいと感じる。



テーマ別:ガラス|ジャンル別:文化史
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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