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『マンク』感想:★★★★★

2012.07.01 Sun


世界幻想文学大系 第2巻 A マンク 上

井上一夫,マシュ-・グレゴリ・ルイス
国書刊行会 1985-08
by ヨメレバ


 読んだのは、国書刊行会から出された世界幻想文学大系のもの。
 ただし出版は上のデータと異なり、1976年3月。



 舞台となるのは、中世スペインはマドリッド。当地に建つカプチン教会は人間の熱気で充ちていた。
 そう宗教熱心とは言えないはずの人々がここまで多く集っているのは、ひとえにカプチン教会の若き僧院長であるアンブロシオの人気故なのだった。
 彼は未だ物心もつかぬ赤ん坊の頃にカプチン教会の前に捨てられ、その後は修道院の中で育てられ、今や院長にまで上り詰めていた。
 修道院の世界しか知らぬ彼は、徳の厚さと信仰心の確かさで知られ、その説教には説得力があり、更には見目も麗しく、マドリッド中の尊敬と崇拝の的となっているのだ。

 そんな彼の修道院に、二人の女が入ってきた。未だ己の美しさすら知らぬ純潔なる娘アントニアと、その叔母だ。
 アントニアは彼女の両親の望まれぬ結婚の末に、今や親族中から縁を切られ、貴族の娘の身分ながらそれに見合う扱いを受けられずにいた。
 そんな現状を打破し、少しでも生活を助けて貰うため、アントニアの父の弟にして現在のシステルナス侯爵を訪ねるためにマドリッドに出てきたのだ。

 アントニアは初めて聞くアンブロシオの説教に心を振るわせる。そしてそんな彼女に、マドリッドの有力貴族であるロレンゾは心を奪われ、システルナス侯爵と面識のある彼は、アントニアのために力を貸すことを約束するのだった。
 その一方で、ロレンゾの妹で、今はカプチン教会の隣にある聖クラレの尼僧院に入っているアグネスと、システルナス侯爵の間にも恋の炎が燃え立っていたのであった。
 こうして、ロレンゾとアントニア、システルナス侯爵とアグネスの二組の恋の物語が始まる。








 だがその頃、皆に崇められ、修道院の中で静かに暮らすアンブロシオは、尼僧であるアグネスがシステルナス侯爵と通じていることを発見する。
 誰にも言わないでくれと、許してくれと嘆くアグネスを振り切り、彼は尼僧院の院長に彼女の「罪」を告発するのだった。
 結果彼女には、執念深い尼僧院長による恐ろしい罰が科されるのであった。

 アグネスの罪を許さぬほどに、潔癖を旨とするアンブロシオだが、彼にも誘惑の魔の手が触れる。
アンブロシオは非の打ちどころのない人柄ですし、生涯を僧院の塀のなかですごした男だから、罪をおかそうとしても、たとえそういう傾向があったとしても、機会がなかったわけですよ。(上巻 p.34)

 清らかに育てられた彼は、その機会を逃さずに捕らえては、あっさりと堕落してしまうのだった。
 他者の罪に厳しいくせに、自身の罪には必死に逃げ道を探る浅ましい破戒僧アンブロシオが次に目を付けたのは、なんとアントニア、なのであった。

思い出すだに身ぶるいも出る罪に、私をそそのかしたのはだれだ? おまえのその美しさこそ、恐ろしい魔女ではないか?(下巻 p.233)


 ロレンゾとアントニア、システルナス侯爵とアグネス。この二組の恋人達は、果たして幸せになれるのか否や?
 そして堕落したアンブロシオの行く末は。



 登場する人物たちが誰にも彼も、人間的で血が通っているのが良い。
 アンブロシオの堕落と見苦しいあがきっぷりも、ロレンゾやシステルナス侯爵が相手に恋い焦がれる様も、アントニアの叔母の口数の多さと惚れっぽさも、実に人間らしい。
 その分だけ、ロレンゾ-アントニア、システルナス侯爵-アグネスの二組に訪れる危機には同じ要素が多いのにも関わらず、それらが彼らに及ぼす影響、その積み重ねとしての結末に大きな差があるのが切ない。

 身分を隠しての長旅と冒険、古城に出る幽霊、恐ろしい未来を予知するジプシー女などの「お約束」を踏まえながらも、喜び悲しみ怒り堕落し、幸福になり破滅する滑稽で真摯な彼ら登場人物の一人一人がとても愛おしい作品。
 そこには登場人物たちが演じる、リアリティのありすぎる他者への容赦のなさをも含みたい。


傲慢なご婦人よ、なぜ哀れな不貞の女が近づくと、そう身を避けようとするのか? 彼女の罪で、空気が毒されたか? あなたの清さは、彼女の息を受けて汚れたか?
(略)
ご婦人よ、他人の行為を慈悲をもって見ることは、おのが行為をきびしく見ることに劣らぬ美徳なのですぞ。(下巻 p.313)




シリーズ別:世界幻想文学大系|テーマ別:悪魔
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


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 『マンク』は国書刊行会から新装版が出ている。こちらは上下巻ではなく一冊。

マンク


 私が読んだ世界幻想文学大系の『マンク』は、上巻p.312の7-8行目の「アグネス」は「アントニア」の間違いだと思う。
 アグネスの消息に気をもんでいるところでのこの間違いなのでかなりギョッとするのだが、新装版では直っているのだろうか?


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