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『十蘭錬金術』感想:★★★☆☆

2012.06.24 Sun


十蘭錬金術 (河出文庫)

久生 十蘭 河出書房新社 2012-06-05
売り上げランキング : 117368
by ヨメレバ


 河出文庫から1年に数冊出ている久生十蘭の短編集のうち、今の所最も新しいのが本書。こちらは新字新仮名。
 時折()の中で行われる補足じみたものは、河出文庫から出すにあたって誰かが加えたものなのかどうかが分からない。
 特に断り書きがないところを見ると元からあったもののように思えるが、けれど、こんな補足を作者がするものだろうか。
 国書刊行会からも久生十蘭の全集が現在刊行途中だが、こちらは旧字旧仮名のままらしい。


 本書に収録されている作品は以下。
・「彼を殺したが……」
・「犂氏の友情」
・「勝負」
・「プランス事件」
・「悪の花束」
・「海と人間の戦い」
・「南極記」
・「爆風」
・公用方秘録二件
 「犬 (法朗西御使節モーズ候一件)」
 「鷲 (唐太モイガ御番屋一件)」
・「不滅の花」

 全ては実際に起った事件を題材にしたもの。それ故に「錬金術」とのタイトルが付いているようだ。
 感想は折りたたみ。









――殺してしまえ。(p.11 「彼を殺したが……」)


 初っぱなの「彼を殺したが……」がとても良い。
 船の上の主人公はふと、先ほどから自分が煙草を探していたのだと気が付く。
 だがそれが分かったところで、彼の気持ちは晴れない。それは、今は煙草など吸って良い場面ではないと思ってしまうからだ。
 主人公が今直面している状況はと言えば……。
 とまぁ、そんな風に幕開けする短い一編。短いが故にあまり騙りたくはないので、気になる方は是非とも読んでみてくださいな。


 次の「犂氏の友情」も良い。
 犂氏と、石亭先生の人物像がともに違う意味で鮮やかで、それでいて極端に走りすぎておらず、危ういバランスを保っている。
 石亭先生が主人公に持ち込んだ事の顛末は如何に?


 「勝負」もまた良いのだこれが。
 幼なじみの二人、有本と高須に、高須の細君である四季子。そして主人公。
 父親同士もまた友人である有本と高須の関係は、互いに腹に相手には言えないものを抱えていた。更に四季子の存在が、彼ら二人の関係を危ういものにしているのだった。
 戦争の足音が迫る中、残り時間のカウントダウンから逃れるように、無為にフランスでの日々を過ごす四人。だがやはり、かれらは戦争の荒波に飲み込まれてしまう。
 有本は高須には言うことの出来ぬ心情を主人公に語り、また高須も有本には決して伝えられない心の中を主人公に向かって言葉にする。
 深い仲ではないからこそ、言えることがある。親しいからこそ、決して伝えられないことがある。
 互いの心の内を知る唯一の人物である主人公が目撃するラストとは。
 ただ主人公がどうやって彼ら三人と出合ったのかが気になるところ。


  「悪の花束」は、フランス全域の有名事件全てを手がけたルネ・ゴロンなる刑事が、退官後に記した回想録から三件を紹介する、との形式で書かれた一編。
 ネタ元があるのかないのか、良く分からないのが気に掛かる。


 「プランス事件」、「海と人間の戦い」の二編は、実際に起った事件を記したもの。久生十蘭の創作は入っていない、独自の見解はあろうとも、と思うのだがどうだろう。
 「爆風」は作者の実体験なのだろう。その無駄の無い暮らしっぷりに感服した主人公から、その身のこなしの理由を訊ねられた老兵の、あっさりとした返答が心に響く。
 「南極記」、公用方秘録二件、「「不滅の花」」は実際に起った事件を元に久生十蘭が創作した作品……だと思うのだが、よく分からない。
 どちらも日本人が清く正しすぎて、どんな顔して良いのかもよく分からない。美化しすぎなんじゃ……。


 虚と実の境目が私にはきっぱりハッキリと分からなかったが故に、実にもやもやした気分になってしまったので、個人的評価は星3つで。
 創作なのがはっきりしている頭の三作品は実に面白かったので、他の100%創作のものを読んでみようかな。
 事実100%のものも悪くないのだけれどね。


レーベル別:河出文庫|テーマ別:戦争
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。


関連記事:
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 河出文庫が出している久生十蘭の短編集は、以下のようだ。
・2010年6月『久生十蘭ジュラネスク---珠玉傑作集
・2011年2月『十蘭万華鏡』、9月『パノラマニア十蘭
・2012年1月『十蘭レトリカ』、6月『十蘭錬金術

 2009年5月には岩波文庫から『久生十蘭短篇選』が出ている。

 国書刊行会は2008年10月から『定本久生十蘭全集』を刊行中。今月2012年6月に11巻が発売される。
 1巻から11巻までの帯に印刷されている特典シールを送ると、もれなく特製DVD「挿絵とともに見る『初稿・顎十郎捕物帳』」が貰えるそうな。
 詳しくは国書刊行会の公式ページにて。

定本久生十蘭全集 1


 それにしても、国書刊行会の装幀は良いなぁ。

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