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『ファウスト 第一部・第二部(集英社文庫ヘリテージシリーズ)』感想:★★★★★

2012.05.30 Wed


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 中公文庫の手塚富雄翻訳の第一部に続いて、池内紀翻訳の第一部・第二部読了。こちらは第二部もまだ流通に乗っているので、新本で買える。
 韻文で書かれたゲーテの作品『ファウスト』を、日本語の響きに配慮して翻訳した手塚富雄訳に対して、池内紀訳は分かりやすさを重視した散文形式となっている。
 分かりやすければ良いかと問われれば、必ずしもそんなことはないと答えるが、キリスト以前の神話が乱舞する第二部を韻文で読むと意味不明に陥りそうなので、最初に読んだのが散文だったのは幸運かもしれない。
 ただ第一部の翻訳を比べてみれば、個人的には手塚訳に軍配を上げる。池内訳では場面場面の語り口の違いがよく分からない。



 知識の探求に明け暮れ、結果、大先生と慕われるようにまでになったファウストだが、当の本人は全く満足などしてはいなかった。

この世をもっとも奥の奥で動かしているものは何か、それが知りたい。(p.32, 第一部)

 全てを知りたいとの大きすぎる野望と、それを果たすことの出来ない己の限界とに疲れたファウストの前に、悪魔メフィストフェレスが現れる。
 メフィストフェレスはファウストをサイコロとして、神と賭けをしたのだった。ファウストの魂を手に入れた方が勝ちだ。
 そんなことなど当然知らぬファウストは、メフィストフェレスと契約を交わす。
 そして知識の探求など投げ捨てて、人間に備わったもう一つの能力、愛、を欲したファウストが出会うこととなるのは、マルガレーテ、愛称グレートヒェン。
 そうして彼女の悲劇が幕を開ける。
そのわたしが、いまは罪を犯している。でも――そうなるまでの道筋は、とてもよかった、うれしかった。(p.228, 第一部)


すべて生じてくるものは、当然のことながら滅びていく。だからして生じてこないのが、なおのこといい。(p.79, 第一部)


 さりとて、生じてしまったものを「なかったこと」にすることは出来ない。それはメフィストフェレスにも覆すことは不可能だ。
 幸福だった娘グレートヒェンを悲運に突き落としたファウストは、それでも生きていかなければならないのだ。








 グレートヒェンの悲劇から一転し、二部ではファウストとメフィストフェレスは皇帝に取り入り、彼らの抱える金銭問題を解決してやる。その皇帝の我が侭から呼び出すこととなった絶世の美女ヘレナの姿に、ファウストは恋に落ちる。
 件の女を求めて、古代ワルプルギウスの夜を行くファウストとメフィストフェレス。けれども手に入れた幸せは儚く、ファウストは何かしらの偉大なる行為をやりとげたいとの望みを抱くようになる。

 ファウストの望みが叶ったのかどうか、そして彼の魂の行方がどうなったのかは読んでのお楽しみ。
終わったとは笑わせる。どうして終わるのだ? 終わるのも、何もなかったのも、二つながらに一つのこと。永遠の創造がどうしたというのだ、創られたものを無のかなたへとひっさらう、それが終わりだ。つまりは、どういうことだ? なかったも同然、それがあるかのように堂々巡りをくり返す。永遠の空っぽの方がずっとましよ。(p.408, 第二部)

この自分が地上にしるした足跡は消え失せはしないのだ――。身を灼くような幸せの予感のなかで、今この上ない瞬間を味わっている。(p.407, 第二部)


 ファウストは確かに己の生を後の世代に刻むことが出来たのだろうか。それともメフィストフェレスの言うように、全てはただ虚しいだけなのだろうか。




 ゲーテが安くて粗末な印刷の民衆本で読んだであろう『ファウスト博士』のストーリーを予想よりもずっと忠実になぞっていることに驚いた第二部でした。
 第一部でグレートヒェンがあんなことになった以上、ヘレナは絶対に登場しないと思っていたよ。ワーグナーが出世していたり、ヘレナに一目惚れするまでの流れが民衆本と同じなのは良いね。
 ゲーテが新たに盛り込んだ風刺部分も面白いが。
 グレートヒェン表記だったりマルガレーテ表記だったりと安定しないのは原作からのようだが、この表記の違いに意味があったりするのか。


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テーマ別:ファウスト|テーマ別:悪魔
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 ファウスト映画が上映されるそうだよ。→ファウスト
 原作そのままとはとても言えないようだけれど、2011年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した作品だけに、ちゃんと面白いんじゃないだろうか。
 ただ、上映される映画館数はかなり限定されております。


2012.06.17追記:
 実際に見に行ってきた。感想はコチラから

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