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雑誌「ナイトランド」VOL.1(2012)感想:★★☆☆☆

2012.04.05 Thu


朝松健・森瀬繚・朱鷺田祐介・
立原透耶・鷲巣義明・マット・カーペンター他
トライデント・ハウス 2012
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 「ナイトランド」創刊号をようやっと読み終わった。
 積ん読タワーから1冊崩して予習して臨んだけどさぁ……、との話は後に回してまずは収録作品一覧。縦書き表記なのに目次だけ横書きなのはちょっと違和感。


特集・ラヴクラフトを継ぐ者たち
・「ルイジアナの魔犬」 スコッチ・カースン 田中一江・訳 山田章博・画
・「沼地を這うもの」 ティム・クーレン 夏来健次・訳 楢喜八・画
・「ウェストという男」 グリン・バーラス&ロン・シフレット 金子浩・訳 松山ゆう・画
・「ダイヤー神父の手紙」 レイフ・マグレガー 増田まもる・訳 ひらいたかこ・画
・「扉」 サイモン・ブリークン 田村美佐子・訳 藤原ヨウコウ・画 

名作発掘
・「矮人族」 ロバート・E・ハワード 中村融・訳 グレゴリー・ステープルズ・画
・「コールド・プリント」 ラムジー・キャンベル 野村芳夫・訳 ヴァージル・フィンレイ・画

連載小説
・連作短篇小説「The Faceless City #1 狂雲師」 朝松健 槻城ゆう子・画

エッセイ
・「『魔道書ネクロノミコン』捏造の起源」 コリン・ウィルソン 森瀬繚・訳
・「怪奇の架け橋----『日本怪奇小説傑作集』から『Kaiki: Uncanny Tales from Japan』へ」 東雅夫

連載コラム
・エッセイ「金色の蜂蜜酒を飲みながら」 朱鷺田祐介
・エッセイ「私の偏愛する三つの怪奇幻想小説」 西崎憲
・エッセイ「Asian Horror Now (1)」 立原透耶
・ 「ファンタスティック・シネマ通信(1)」 鷲巣義明
・クトゥルー・インフォメーション(日本編) 森瀬繚
・クトゥルー・インフォメーション(海外編) マット・カーペンター









 創刊号、しかもこのご時世にホラーを掲げる雑誌なのだから、私だってもっとポジティブなことが言いたかったのだけれど、翻訳作品の文章をもうちょっとブラッシュアップして欲しかったな、との思いが募りすぎて如何ともし難い。
 ホラーや怪奇小説に於ける文章は、読み手を非日常の恐怖に誘うためにもそれなりの美しさであって欲しいと思うのですよ。
 何ヶ所か誤字も発見してしまったこととも相まって、「最終稿の一つ前を間違って印刷に出しちゃった☆」と言われたら、私は信じるぞ……。

 一応フォローじみたことを言っておくと、翻訳作品以外はしっかりとした文章で安心。
 たださらに突っ込ませてもらうと、連載コラム「Asian Horror Now(1)」のp.114、中段1行目と2行目の間は本来は一行空ける予定だったんだよね?
 ここで登場する小泉八雲の翻訳を手がけている「私」とは、このコラムの著者である立原透耶ではなく、氏がコラム内で紹介している「女人心」の語り手である「私」だとしか考えられないことだし。
 お陰様で「え、この『私』って誰?」と混乱したじゃないか。紹介終わりには空行が挿入されているのに、なぜ開始時には入れてくれなかったんだ。


 そんな文句を言いつつ、各作品に短い感想でも。
 最初の「ルイジアナの魔犬」は、動物管理官、アメリカ動物愛護局の現場調査官などの経歴を持つ主人公クリス・ジャンセンが、カルト絡みの事件の調査のためにハリーケーン・カトリーナの爪痕の残るルイジアナに降り立った後に起こる騒動の物語。
 主人公が何故呼ばれたのかに関してはタイトルから推測される通り。
 派手なアクションが展開するものだとばかり思っていたら、案外肩すかし。具体的に何が起こったのか、身体の損傷ぶりだけでも記述してくれれば、もう少し緊張感のある作品になったんじゃないかなー、と無責任に思った次第。


 ティム・クーレン「沼地に潜むもの」は素敵。
 ……おい待てよ、出版元のトライデント・ハウスの雑誌詳細ページと実際の雑誌の目次ではタイトルが「沼地を這うもの」になっているのに、扉(p.16)とラブクラフト特集の枕ページ(p.5)、更に特集ラストの解説ページ(p.73)では「沼地に潜むもの」と記載されてるじゃないか。なんでやねん。
 私だけ不完全な見本版のが届いてるとかじゃないよな? むしろ私のだけ間違ってて欲しい気分になってきたぞ。

 話を戻すと、この作品は実に「らしい」雰囲気たっぷりで面白い。贅沢を言えば、翻訳がもう少し美しければ文句ないのに。
 主人公はアマチュア植物学者の「わたし」ことデイヴィッド・バセット。彼は沼の近くでの植物採集に夢中になりすぎた結果、雨と闇に惑わされ崩壊寸前の家に転がり込むこととなる。
 そこの住人は老人が1人だけ。どこか普通ではない彼はバセットに彼の一族の呪いを聞かせる。そしてその夜に……。
 ほら、どこからかこちらを見つめる視線を感じはしないだろうか?
 

 3作目は「ウェストという男」。なにこの駄作。しかも他作品と比べて長いのが苛つく。
 古くさいハードボイルドスタイルの作りは趣味の問題だが、強い男2人それぞれに一人称で交互に語らせる作りならば、もうちょっと上手くやって欲しい。
 対立も共闘も中途半端だ。文章もブツ切り過ぎる。まぁこれは原作からして酷いような気がするが。
 解説によれば、タイトルにもなっているハーバート・ウェストは映画『死霊のしたたり』やキム・ニューマンの『ドラキュラ戦記』にも登場するキャラクターなのだそうだ。なのでそちらで既にファンになっている人には嬉しい1作なのかもしれない。


 レイフ・マグレガー「ダイヤー神父の手紙」は手紙の文面だけ、それも一方通行だ、との設定で成立している作品。訳注も親切で有り難い。
 短い作品でもあるし、是非実物を読んで頂きたいので説明は差し控えることとする。
 史実に虚構を挿入するその手法は見事。ダイヤー神父の文面の変化をもっと入念に描いてくれれば良かったのになぁ。
 レ・ファニュを思い出したのはどうしてだろう。


 ラヴクラフトを継ぐ者たち特集のラストは、サイモン・ブリークン「扉」。これもなかなかに良い。
 「僕」の村には巨大な開かずの扉があった。それがいつからそこに在り、何故この村に在り、そして何のために今も在るのかは誰も知らなかった。けれど、それが開けられてはならないことは全員知っていた。
 だから毎日毎日一日中「僕」らは扉を見張る。火を絶やさぬように注意しながら、ただただその扉が何かを閉じ込め続けるのを見守っていた。
 けれどもついに「その日」が訪れてしまう。

 物語のオチは読める。それをこの「僕」の暮らす場所、時間がどこでいつなのかが分からないという不思議さが補っている。
 ただ私には何故だか文章が滑らかさを欠いているように感じられて、少しマイナス。


 名作発掘の1作目はロバート・E・ハワードの「矮人族」なのだが、なんだこれ。
 舞台はブリテン島は巨石の残る地。何気ない兄妹喧嘩を切っ掛けに、妹ジョーンは巨石の遺跡で一夜を明かして兄に意地を見せようと決意する。兄はそれを思いとどまらせようとするのだが、その甲斐無く……、とのストーリー。
 主人公の兄ちゃんは生白いインテリだと思っていたら、バリバリの肉弾戦野郎で驚愕。
 それよりも理解出来ないのは、どうしてこの兄ちゃんがこんなに襲撃者に対して上から目線なのかと言うところ。その解けない疑問がハワードの原稿が一部欠けていることとも相まって、私の感想を「なんだこれ」にしてしまっている。
 いやホント、なんだこれ。


 もう1つの名作発掘はキャンベルの「コールド・プリント」。立派にクトゥルー作品となっている。
 特殊な趣味を持つ主人公ストラットは、己の好みを満たしてくれる書物を求めていくつもの書店を巡り歩いていた。だが彼の心を満たしてくれる本はなかなか見つからない。
 それでも彼は今日も書店を覗いた。そこで彼に声を掛けてきたのが、乞食の如く汚い男。潔癖症のストラットは嫌悪を覚えるが、しかしその男は言った。ストラットの好みに合う本が手に入る場所を知っている、と。
 男の言葉に従って彼と共に歩き始めたその時、ストラットの運命は転がり始めたのだった。

 ストラットがどうにもこうにも好きになれないからなのか、話全体が冗長に思えてならなかった。
 感情移入できるような、どうかこの人には不幸になって欲しくないなぁ、と思える登場人物がいれば良かったんだけれど。


 以上で収録されている物語は終わり。以下はエッセイ・コラム。
 コリン・ウィルソンの「『魔道書ネクロノミコン』捏造の起源」はタイトル通りのエッセイ。訳注も親切だ。
 『魔道書ネクロノミコン』は日本では1994年に学研ホラーノベルズから、2000年に学研M文庫から出版されている。


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テーマ別:創作神話(CTHULHU)|シリーズ別:ナイトランド(雑誌)
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。





 記事タイトルに雑誌名をどう表記するか悩んだ。「幻想と怪奇」はVOL+NOとの形式にしているので「ナイトランド」も同じ形式にしたかったのだが、この雑誌にはNO表記がなかった。
 VOLだけの表記だと年が変わるとまた1に戻るかもしれないので、その場合も来年のVOL.1と今年のVOL.1の区別が付くように、VOL+(年)の形式とした。来年以降も存続して欲しいな、との願いを込めて。


 しかし創刊号だと言うのに、私のテンションが既にガリガリ削られてしまい辛い……。

Theme:読んだ本 | Genre:本・雑誌 |
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