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『ドラキュラ・ドラキュラ』感想:★★★★☆

2012.04.05 Thu


ドラキュラ・ドラキュラ (1973年)ドラキュラ・ドラキュラ (1973年)
種村 季弘

薔薇十字社 1973
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 『ドラキュラ・ドラキュラ』は1973年に薔薇十字社から、1986年に河出書房新社から河出文庫として出版されている。
 この二つには違いがあり、河出文庫版『ドラキュラ・ドラキュラ』からは薔薇十字社版では収録されているダレルの「謝肉祭」、オーギュスタン・カルメの「吸血鬼」たち、ヴォルテールの「吸血鬼」、日夏耿之介の「吸血鬼譚」が省かれている。
 これら4作が読みたい場合は、薔薇十字社版を買いましょう。私はヴォルテールとカルメが読みたかったのに、河出文庫版を買ってしまい、「載ってないよ?」と首を傾げる羽目になりました。

 ちなみにどちらも現在絶版もしくは重版未定。
 薔薇十字社版はAmazonに表紙イメージすらなくて寂しい。この表紙は、映画ドラキュラ伯爵と言えば彼、なクリストファー・リー、のモノクロの写真を囲むように縁は赤色で、やや野暮ったいとも言えるデザインが逆に良い。


 薔薇十字社版『ドラキュラ・ドラキュラ』収録作品は以下。末尾に(※)マークが付いている作品は、河出文庫には収録されていない。
・「吸血鬼」 ジャン・ミストレル 種村季弘・訳
・「グズラ(抄)」 プロスペル・メリメ 根津憲三・訳
・「吸血鬼」 ジョン・ポリドリ 佐藤春夫・訳
・「吸血鬼の女」――『セラピオン同盟員』より E・Th・A・ホフマン 種村季弘・訳
・「カルパチアの城」――エピソード―― ジュール・ヴェルヌ 安東次男・訳
・「吸血鳥」 マルセル・シュオッブ 種村季弘・訳
・「サセックスの吸血鬼」 コナン・ドイル 延原謙・訳
・「謝肉祭」――「バルタザール」より ローレンス・ダレル 高松雄一・訳(※)
・「吸血鬼」 ルイージ・カプアーナ 種村季弘・訳
・「吸血鬼を救いにいこう」 ベレン 種村季弘・訳、橋本綱・訳
・「受身の吸血鬼」 ジェラシム・ルカ 種村季弘・訳、橋本綱・訳
・「ドラキュラ・ドラキュラ」――トランスシルヴァニアの物語―― H・C・アルトマン 種村季弘・訳
・「吸血鬼たち」 オーギュスタン・カルメ 種村季弘・訳(※)
・「吸血鬼」 ヴォルテール、種村季弘・訳 福井信雄・訳(※)
・「吸血鬼譚」 日夏耿之介(※)
 編纂者は種村季弘。


 扱われているのは全て古き良き吸血鬼たち。登場する吸血鬼たちにはロマンがあり、また土着信仰の香りも完全には失われてはいない。
 作品毎の感想は以下は折りたたみで。








 最初のミストレル「吸血鬼」は、ヴォルテールが文字だけとは言え登場するところのニヤニヤしてしまった。啓蒙の人ヴォルテールとも知り合いらしき現代的な考えの主人公が見舞われる悲劇とは。

 ただこれ、カギ括弧が変。以下に一部を抜粋。
 ――苦しんでいる魂のようですこと」若いエリザベートが言った。
 ――幽霊をお信じになりますか、お嬢さん」私は微笑みを浮かべながらエリザベートに訊ねた。
(p.13, 「吸血鬼」)

  なんで会話の頭がカギ括弧(コレ→「)ではなく、ダッシュ(――)なんだ? 『ドラキュラ・ドラキュラ』に収められている種村季弘翻訳の他作品は普通のカギ括弧なのに。地味に気になる。
 後日出た河出文庫版でもこのままだと言うことは、何かしらの意図があるんじゃないかと思うのだが、サッパリ分からない。

 
 メリメの「グズラ」は吸血鬼関連の本を読んでいる時に何度も言及されていたので、やっと読めて嬉しい。が抄だった。
 これはメリメがイリリア地方の民衆詩の翻訳として発表したが、実は全部メリメの創作なんですよなんてややこしい、そしてイリリア地方の人には良い迷惑な作品。
 ちなみにイリリアってのはイリュリアとも呼ばれ、古代ギリシャ・ローマ地方にバルカン半島の西部に存在した国のことだとwikipediaさんが教えてくれました。


 ポリドリの「吸血鬼」は既に「書物の王国」シリーズの『吸血鬼』で既読だが、翻訳者が今回は佐藤春夫。
 ちょうど先週、同じく「書物の王国シリーズ」の『芸術家』で佐藤春夫の元弟子である稲垣足穂からの追討のようでいてちゃんと追悼になっている「佐藤春夫を送る辞」を読んだばかりだったので、翻訳の正確性に不安を抱いたが、本書の編者である種村季弘にも解説で「この翻訳はかなり杜撰な訳文の脱漏や誤訳が目立つ(p.318)」と言われていた。
 稲垣足穂は前述の追悼の中で佐藤春夫のことを、彼は他人の本をひろい読みしてネタ元にしていると言いながらも、「それでもこれら原料の処理法にまだ先生独自のものがあり、彼こそコックの番人であった。不機嫌な、しかも自分の料理に感心して時々ほろほろと泣くところの(『芸術家(書物の王国・13)』 p.208)」と評しているので、このポリドリの「吸血鬼」も翻訳している間にほろほろ来て筆が滑ったのかもしれない。
 とは言え、なかなか流暢な文章でとても楽しく読めた。不正確に翻訳されることを作者であるポリドリがどう思うかまでは分からないが。
 ちなみに種村が佐藤春夫版をこの本に収録しようと思ったのは「この大正審美主義文学最大の感性が海彼の吸血鬼小説に接触した瞬間の初々しい驚きと共鳴を再現する(p.318-319)」ためとのこと。

 
 ホフマンの「吸血鬼の女」はとても好きだ。最後の一文で私も落ちた。
 花嫁の異変の理由がこれっぽっちも分からないのがどこまでも気になるのだが、この手の幻想小説で理路整然とした説明を求めるのも楽しみ方を間違っている、と言うかむしろその理路整然から逃れるために読んでいる訳ですし。
 これ以上語るとネタバレしてしまいそうなので、ここで止めておく。


 ヴェルヌの「カルパチアの城」、シュオップの「吸血鳥」はあまり趣味ではない。「吸血鳥」はまぁ幻想小説だし?で良いとしても、「カルパチアの城」は起承転結がなんかおかしいぞ。と思ったら、後者は同名小説の一章であって、この後まだまだ続くらしい。
 そういうことは最初に言ってくださいよ。読んだ後に「え、ここで終わるの?」と混乱した私の立場が。
 
 コナン・ドイルの「サセックスの吸血鬼」は本書の中では異色。主人公ホームズが吸血鬼を全否定してくれる。まぁ、天下のホームズに吸血鬼を肯定されても嫌だが。
 お話自体は吸血鬼がネタになってるだけで、普通に短編推理小説。

 
 ダレルの「謝肉祭」は『アレクサンドリア四重奏』から。
 皆が皆、仮面をつけて仮装する謝肉祭との舞台装置だけでも胸躍るものがある。それは誰が誰か分からない非日常。必ず終わる期間限定の異界。けれど仮装の下から覗く手だけは、個人の刻印から逃れられないのだ。
 その手のみを目印に、思い人を待つアマリルの設定が凄く良い。
 だが、この作品で吸血鬼と出会うのは主人公ではない。主人公はただ知り合いの語る、その知り合いの知り合いが出会った吸血鬼の話を聞くだけ。
 噛むことは愛の証だ、ってどこで読んだのかも定かではない言葉が耳の奥で木霊して仕方がなかった。それと『ドイツ怪談集』で読んだシュトローブルの「死の舞踏」が脳に浮かんで消えてくれず、物語が二重写しに見えた。
 
 
 カプアーナの「吸血鬼」は、うーん、科学の勝利なんだか何なんだか。
 ジョルジ夫婦の仲があの一件後も問題なく続いているらしいってことに一番びっくりした。

 ベレンの「吸血鬼を救いにいこう」は打って変わってポップな印象。
 自分でも意味が分からないけれど、「お前は赤川次郎か!」って叫びたくなった。
 
 ルカの「受け身の吸血鬼」は、吸血鬼視線のお話……たぶん。
 全編が詩のような静謐な空気と異常な興奮に満たされている。

 物語編最後はアルトマンの「ドラキュラ・ドラキュラ」。本書のタイトルにもなっている作品なのだが、すいません、正直意味が分かりません。

 
 
 カトリックの高僧カルメによる「吸血鬼たち」は、私が一番読みたかった物。全編ではなく一部の抜粋ならば何度か目にしていたのだけれど。
 ただまぁ、特に新しい発見はないなぁ。
 これは吸血鬼の恐怖(フィクションではなくて、実際に吸血鬼が存在すると恐怖に襲われた時期があったのですよ)に怯えた18世紀前半を越えて、18世紀の後半に出されたカトリックとしての一般解であり、その点で面白い資料。
 カルメは結局は吸血鬼の存在の全てを否定も肯定も出来ず、問題を未来にぶん投げしてるのだが、これはカルメの個人の限界ではなくカルメの置かれた立場の限界なのだろう。メリメは神を殺せないのだ。

 
 次はヴォルテールの「吸血鬼」。これは『百科全書』の一項目。皮肉が効いてはいるけれど、この吸血鬼全否定の姿勢を最初に打ち出したのはヴォルテールではないしね。
 これも読みたかったので、読めて満足だ。


 最後は日夏耿之介の「吸血鬼譚」。
 既に『吸血妖魅考』を読んでいるので目新しさはない。
 が、彼の吸血鬼論が後の世代に色んな影響を与えているんだなぁ、と思うと色々と感慨深い。



 ふぅ、長かった。
 全体としてはとても満足。メリメ、ヴォルテールの2作品が読めたしね。


関連記事:
『吸血鬼(書物の王国・12)』感想:★★★★☆
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『吸血鬼ドラキュラ』感想:★★★★☆
『ヴァンパイアと屍体―死と埋葬のフォークロア』感想:★★★☆☆
『遊女クラリモンドの恋―フランス・愛の短編集』感想:★★★★☆

テーマ別:吸血鬼|ジャンル別:ホラー
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。





 以上、過去の感想サルベージでした。


 薔薇十字社の表紙も良いが、河出文庫の『ドラキュラ・ドラキュラ』の表紙も素敵だ。
 こちらは青色。Amazonにカスタマーイメージが上がっている。


ロマン・ポランスキーの吸血鬼 [DVD]


 書き直してる間に、ポランスキーの映画『吸血鬼』をふと思い出した。
 何故だか私はあれを真面目なホラー映画だと思い込んだまま見始め、そして当然盛大に崩れ落ちたのでした……。
 現在Amazonではもう1,000円切ってるんだなぁ。お買い求めしやすい値段になっちゃってまぁ。
 映画は助手と吸血鬼の息子が追いかけっこするシーンが好き。それと吸血鬼たちの舞踏会(?)での鏡の場面も。

Theme:オススメの本 | Genre:本・雑誌 |
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