RSS|archives|admin


<<自棄買いしてしまったが後悔はしていない:購入履歴・新本編37 | ホーム | 緑色<黄色、な予感:購入履歴・古本編55>>

スポンサーサイト

--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


Category:スポンサー広告 | Comment(-) | Trackback(-) | top↑ |

『ク・リトル・リトル神話集』感想:★★★★☆

2012.03.26 Mon


ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)

H.P.ラヴクラフト,荒俣 宏 国書刊行会 1976-11
売り上げランキング : 135202
by ヨメレバ



 私が持っているのは初版だが、誤字が多い。
 「少しインディアンの血が」となるはずだった箇所が「少レインディアンの血が」となっているところ(p.138, 「イグの呪い」)で、昔懐かしい「インド人を右に!」を思い出してしまった。
 現在流通している版では誤字が直されていますように……。


 収録作品は以下。四部に分かれており、その頭には荒俣宏の手によると思われる短い前書きがついている。
 作品のほぼ全てのタイトル裏に、ヴァージル・フィンレイの挿絵付き。

 序文 荒俣宏
Ⅰ 発端
 ・「アルハザードのランプ」 ラヴクラフト&ダーレス 広田耕三・訳
Ⅱ 超宇宙の邪神
 ・「永劫より」 ヘイゼル・ヒールド 野村芳夫・訳
 ・「インスマスの追跡」 ラヴクラフト&ダーレス 那智四郎・訳
 ・「イグの呪い」 ゼリア・ビショップ 那智四郎・訳
 ・「博物館の恐怖」 ヘイゼル・ヒールド 野村芳夫・訳
Ⅲ 魔書の啓示
 ・「魔女の谷」 ラヴクラフト&ダーレス 広田耕三・訳
 ・「破風の上のもの」 ロバート・E・ハワード 赤井敏夫・訳
 ・「黄の印」 R・W・チェンバース 森美樹夫・訳
 ・「白蛆の襲来」 C・A・スミス 高木国寿・訳
Ⅳ 怪物の侵寇
 ・「地の底深く」 R・B・ジョンソン 赤井敏夫・訳
 ・「墳墓の末裔」 C・A・スミス 広田耕三・訳

 巻末には「ク・リトル・リトル神話事件簿(松井克弘・編)」を収録。
 これはラブクラフトの「ダゴン」、「ランドルフ・カーターの弁明」、「海底の神殿」、「妖犬」、「暗黒の秘儀」、「クートゥリュウの喚び声」、「銀の鍵」、「異次元の色彩」、「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」、「ダンウィッチの影」、「闇に囁くもの」、「インスマウスの影」、「魔女の家の怪」、「銀の鍵を超えて」、「戸口の怪物」、「超時間の影」、「闇に這う者」の作品から、起こった事件その他の出来事を時系列・地域別に分けてまとめたもの。


 感想は折りたたみ。








人間の心というものは、理解力の限度を超えたものごとに対しては、二つの方向に反応する。つまり、それを拒絶してしまうか、ためらいながらも受け入れるかだ。(p.97, 「インスマスの追跡」)


 ク・リトル・リトル、それは"旧支配者"の一つ。
 彼らは人類よりも地球よりも古き存在であり、その名の通り、かつては地球を支配していた。だが彼らは"旧神"に刃向かい、その報いとして地球の人知れぬ場所に、あるいは銀河の遠くへと封印されてしまった。
 けれども"旧支配者"どもは未だ諦めてなどいない。かつての栄光を取り戻すべく、己の手下たちを使い、あるいは人間の信奉者たちを増やしながら、密やかに我ら人類に忍び寄っているのだ。

 絶望的な"旧支配者"と人類の戦いを描いたのがこの「ク・リトル・リトル神話」なのであるとか何たらかんたら。最後まで格好付けようと思ったのだが、力尽きた。


 そもそも「ク・リトル・リトル神話」の根幹を成す宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)とやらがよく分からないのが本音。生物としての根源的な嫌悪、とかなら分かるような気がするが、宇宙的恐怖と言われましても、宇宙? 宇宙線の恐怖や、宇宙から飛来するかもしれない隕石の脅威なら良く分かるが。
 まぁ、それら「理解出来る」ものの全てを否定する、何よりも古く何よりも根源的な理解不能なものどもこそが"旧支配者"と呼ばれる存在であり、その理解不能さを恐れ戦くことこそが「ク・リトル・リトル神話」の楽しみ方なのでありましょう。
 世の中は全て理解出来るものだ、との前提をブチ壊してこその「ク・リトル・リトル神話」であり、つまり前提が強固であればあるほど恐怖は深まるのだろう。そう考えると、人間中心主義を信奉する西洋らしい恐怖なのかもしれない。

 恐ろしすぎて記述出来ない、やら、言葉に表しては読む人の心を壊してしまうだろうから、やらの態とらしい言い回しを鼻で笑ってしまいそうになったことをここに告白しておくが、そこは「そういうお約束なんだ」と思えばだんだんノリノリで読めてしまうから不思議なものだ。
 真っ向から拒絶してしまうことも可能だが、ここは一つためらいながらも受け入れて読んでみた次第。

 ところで何で、「ク・リトル・リトル」神話なんだ?


 以下、各作品に対する感想を。
 
 「アルハザードのランプ」は、「ク・リトル・リトル神話」がどうやって生まれたのか、の物語。
 ク・リトル・リトル神話が巨大化するに従って、ラヴクラフトが神話大系を創造するにいたった過程についても神話化が行われなければな(p.12)らなくなったが故に書かれた一作らしい。その必要性を証明するように、主人公は名前こそ違うがラブクラフトその人を思わせる。

 「永劫より」、「インスマスの追跡」は共に未知なるものと人間が接する羽目になる物語。
 「永劫より」は既に死んだ語り手が残した手記であるとの設定が、また「インスマスの追跡」は主人公である神学生の正義漢ぶりとその若さが話に緊張感を与えていて実に面白い。

 「イグの呪い」は別にク・リトル・リトル神話に入れなくとも良いんじゃないだろうか。
 次の「博物館の恐怖」も面白いのだが、最後の勝者(と言うか唯一正気を保っている人物)が彼なのがやや残念。それが故の恐怖ではあるが。

 「魔女の谷」は熱血先生がその熱血故に、未知なるものと対峙することとなる物語。「インスマスの追跡」でも登場した星形の灰色の護符が再登場。けれど、これだけ数があるとなるとその有り難みが少し……。
 「破風の上のもの」は予想通りの結末ながら、その記述が嫌らしい。
 チェンバースの「黄の印」はク・リトル・リトル神話よりも以前に書かれた作品であるが、後に取り込まれたのだそうな。急転直下の結末が悲しい。
 「白蛆の襲来」はどうしてエヴァグが最後まで残っていたのかが分からない。最初に消されてもおかしくない人物だと思うのに。ご都合主義すぎる。

 R・B・ジョンソン「地の底深く」が個人的には本作ベスト。このまま映画化して欲しい。
 地下に取り残された乗客そこに襲いかかる未知の生物!とのストーリーの映画には見覚えがあるが、「血の底深く」的なのは観たことがない。あぁ、でも例え実写化されても映画館の大きな画面で視聴するのは遠慮させて頂きます。
 と思ったら、既にアメリカで映画化されてるっぽい? 日本公開どころか詳細が引っかかってこないのは私の検索の仕方が悪いのかな。
 「地の底深く」はラストの救いの無さが良い。誰もがニーチェの有名な一文を思い出すことだろう。
 それで、主人公は一体全体どこのどなた? もしや跡継ぎさん?

 ラストの「墳墓の末裔」は、C・A・スミスらしい作品で。「地の底深く」の後では評価がどうしても厳しくなってしまう。
 「イグの呪い」以上に父親は誰なんだと問いたい。



 なんだかんだで詰まるところ、「これはお約束なんだ」と納得できれば普通に面白かった。
 でもやっぱり何故「ク・リトル・リトル」神話なのかは分からず仕舞。


関連記事:
ツルツルしているが、ヌルヌルはしてはいない:購入履歴・新本編34
雑誌「幻想と怪奇」VOL.1 NO.4感想:★★★★☆
『ゾティーク幻妖怪異譚』感想:★★★☆☆
ドラキュラ伯爵とその仲間たち:購入履歴・古本編18
雑誌「幻想と怪奇」VOL.1 NO.3感想:★★★★★


ジャンル別:ホラー|テーマ別:創作神話(CTHULHU)
より詳しくは右カラムのカテゴリから選択してください。





 付いてきたトランシルヴァニア通信はNo.3。1ページ目にはアーカム市の地図が、2,3ページ目には「Cthulhu――発音の謎」と称した荒俣宏の文章が載っている。
 その中で、ラヴクラフトの作品に登場する固有名詞の発音の問題が取り上げられている。インスマウスはインスマスに、ダンウィッチはダニッチで決着がついたと氏は語り、だが一つ難問なのはCthulhuだと述べている。
 ラヴクラフト曰く「人間には発音出来ない」Cthulhuという単語ながら、ラヴクラフト自身はどうやら「クー・ルー・ルー」と発音していたようだと結論を出している。だが結局、氏はラブクラフトのペダントリーにじさわしく、また氏自身が長年親しんできた「ク・リトル・リトル」を採用することとしたのだそうだ。故に本書は『ク・リトル・リトル神話集』とのタイトルになった。


 とのことなのだが、今となっては「ク・リトル・リトル」よりも「クトゥルフ」、「クトゥルー」の方が主流な感があるような。
 他の神の名前に関してもラヴクラフトは凝った読みを考えていたようだ。

 トランシルヴァニア通信はNo.3の最後のページは読者カード紹介。荒俣宏の「Cthulhu――発音の謎」の下に、本書で翻訳を担当した面々の紹介も載せてある。

Theme:オススメの本 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |
<<自棄買いしてしまったが後悔はしていない:購入履歴・新本編37 | ホーム | 緑色<黄色、な予感:購入履歴・古本編55>>
name
title
mail
url

[ ]
Trackback URL
http://kkkate.blog.fc2.com/tb.php/196-92ab8f0e