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雑誌「幻想と怪奇」VOL.1 NO.4感想:★★★★☆

2012.03.07 Wed


 1973年11月号の「幻想と怪奇」はラヴクラフト=CTHULHU神話特集。
 表紙に描かれたスキンヘッド+黄色い目の人間は誰なんだろうとよく見たところ、H.P.Lovecraftなる文字を発見。
 70頁に掲載されているラブクラフトの写真と比べると、うん、似てるような気がしなくも。
 裁断ミスなのか、雑誌の最初と最後の一部分の下部分が数枚切れておらず、袋とじの下だけ残したような状態になっていた。最初の方の袋とじ状態は指でも簡単に綺麗に切れたが、後ろの方は惨事になってしまった……。


 掲載作品は以下。盛りだくさんでございます。

CTHULHU神話特集
・「クトゥルー神話の神々」 L・カーター、大瀧啓裕・訳
・「宇宙よりの影」 ラヴクラフト&ダーレス、島本葵・訳
・「石の民」 H・ヒールド、綾瀬雅之・訳
・「ウボ=サトゥラ」 C・A・スミス、広田耕三・訳
・「ラヴクラフトとかれの昏い友愛団」 荒俣宏

連載
・Fantastic Gallery 「アルフレート・クービン 薄明の世界」 解説・麻原雄
・ホラー・スクリーン散歩4 「ロン・チャニイ・ジュニアの時代」 石上三登志

コラム
・地下なる我々の神々 秋山協介

エッセイ
・「長編怪奇小説」 都筑道夫
・「早すぎた埋葬防止会」 横瀬衛彦

幻想文学レヴュー
・『ウィアード・テールズ』誌復活 石村一男
・『アーサー・マッケン作品集成』 紀田順一郎
・『M・R・ジェイムズ全集』 瀬戸川猛資
・『蜘蛛・ミイラの花嫁』 鏡明
・幻想文学レヴュー・短評 藤沢純

・「首」 K・H・シュトローブル、村山浩・訳
・「モフレーヌの魔宴」 M・シュオッブ、伴俊作・訳
・「カタリーナ」 ヴィリエ・ド・リラダン、秋山和夫・訳
・「道具」 W・F・ハーヴィ、八十島薫・訳
・「呪われた部屋」 A・ラドクリフ、安田均・訳
・「骨牌の城」  岡田夏彦
・「ウィットミンスター寺院の僧房」 M・R・ジェイムズ、紀田順一郎・訳
・「まぼろしの国」 W・モリス、小宮山康弘・訳

メルヘンの世界
・「猫の足 ジンジムの噺」後篇 ジャーク・カゾット、荒井やよ・訳

・「世界幻想文学作家名鑑」4 荒俣宏・編
・新刊資料室=大滝啓裕
・THE YELLOW MASK
・次号予告
・読者欄


 以上、目次に記されている順に記載したが、実際の並びとは異なる。
 実際の雑誌では、エッセイと幻想文学レヴューの一群は「呪われた部屋」と「骨牌の城」の間に収録されている。

 感想は折りたたみ。








 トップバッターの「クトゥルー神話の神々」は、クトゥルー神話に登場するものたちの紹介。
 今まで深く興味を抱いたことのない身には怒濤の如き固有名詞の羅列は辛い。
 とりあえず
人類の発生より以前の太古、この地球を共に治めていた<旧支配者>と<大いなるイースの種族>が、互いに均衡を破って、彼らを創り出した大宇宙の最初の住人である、神秘に覆われた<旧神>にはむかった。(p.14, 「クトゥルー神話の神々」)

ところだけ理解した。
 その結果、<旧支配者>と<大いなるイースの種族>は敗北し、散々な目に遭ったことと、良く聞くナイアルラトホテップが<旧支配者>の中で唯一、<旧神>の手から逃げおおせたらしいことも覚えた。
 読んでいて何か思い出すなと思ったら『スレイヤーズ』だった。そう言えば元ネタはクトゥルー神話だって話は聞いたことがあるなぁ。何もかもが懐かしい、と言うか、思えば遠くに来たものだすぎる。
 ところで「旧」の文字が乱舞してるけれど、「現」は何なんだ?

 「宇宙よりの影」、「石の民」、「ウボ=サトゥラ」の3作品は小説。
 「宇宙よりの影」に登場する<偉大なる種族>は、「クトゥルー神話の神々」の<大いなるイースの種族>と同一と見て良いのだろうか。良いのなら統一して欲しかった。
 こちらは<偉大なる種族>の姿を描く一作。
 「石の民」ではクトゥルーの神々は脇に控え、人間たちの愛憎劇が展開する。
 最初の不可解な状態の理由が明かされていく様、特に間で状況が一転する流れが素晴らしい。
 「ウボ=サトゥラ」はタイトル通り、<旧支配者>にして原始の存在であるウボ=サトゥラに焦点を当てている。

 荒俣宏の「ラヴクラフトとかれの昏い友愛団」は、ラブクラフトの作家性と彼が産み出した創作神話CTHULHUに関しての考察。
 彼の言い分がどれほど的を射ているのかは知らないが、それでも私が今までこの神話に心惹かれなかった理由が分かった気がした。
 ラブクラフトは、もうひとつの夜を創造した作家だ。ぼくたちは、その夜のなかで眠ることができない。なぜなら、ラブクラフトの物語に展開する光景(略)は幻影ではないのだ。幻影は、眠りのなかに現われる。そしてラブクラフトの住まう夜は、(略)眠りを許さない夜なのだ。(p.74-75, 「ラヴクラフトとかれの昏い友愛団」)

 私は眠りたい。どこまでも深く。それは死への接近と、そして死との絶対的な差を私の身に知らしめる。私は死を欲しており、そして同時に生きていたいとも思っているのだ。
 その点、ラブクラフトとその友人と後継者たちが産み出した神話は、私に終わりという幻想も深い夢をも与えてくれないように見える。
 原始がどうのこうのと言う話の優先度は私の中では低い。原始が何であろうが私は私として今現にここに存在している以上、他に何が必要なのか。知りたいのは終わりであり、黄昏れる未来であり、陥る夢の深度なのだから。


 以上がラヴクラフト=CTHULHU神話特集でした。
 「ラヴクラフトとかれの昏い友愛団」の末尾には、この時点で確認出来たCTHULHU神話作品のリストが掲載されている。ファンには便利だっただろう。

 シュトローブルの「首」は面白いのだが、この手がどこからやって来て、そして友人とわたしとそれにわたしの見知らぬ男(p.96)がどうなるのか記されておらず、気になる。
 この「首」は「死霊祭」の中の一作だと記されているから、「死霊祭」に収録されている他の話を読めば分かるのだろうか。

 「モフレーヌの魔宴」は清く正しくと言いたくなるほどに、魔女裁判華やかなりし頃に信じられた魔女の集会=サバトを描いている。
 正統派すぎて意外さに乏しいのが惜しいところか。

 リラダン「カタリーナ」には「――ヴィクター・ワイルダー氏に――」とのサブタイトル(?)が付いている。
 正直に言うと、意味が分からない。

 「道具」のオチは正直どうなのよ。
 主人公が神職者である以上、まぁそうなのかもしれないけれど。

 今回収録されているアン・ラドクリフ「呪われた部屋」は、「ユドルフォの秘密」から最も有名な部分を抜いたもの(p.132)とのこと。
 最も有名な部分なぞ知らないので、良く分からない部分がある。
 そしてこれもまたオチが、オチが……。

 藤沢純による幻想文学レヴュー・短評で取り上げているのは以下。
 『日夏耿之介全集<全八巻>』、『コレクション・ジュラネスク』、『夢を喰ふ人』
 『日本反文化の伝統』、『ドラキュラ・ドラキュラ』、『魔女と黒魔術』
 『ボルヘスとの対話』、『迷宮と神話』、『初期キリスト教異端思想の諸相』
 『オルレアンのうわさ』、『日本不思議物語集成<全十一巻>』、"FOLKLORE, MYTHS AND LEGENDS OF BRITAIN"
 1頁に3レヴューという割合。

 M・R・ジェイムズの「ウィットミンスター寺院の僧房」は、語り口が風変わりな作品。
 一体何が起こったのかは明示されないが、それが故に怪奇小説の雰囲気を保っている。
 終盤で登場するミセス・メイプルのキャラクターが良い。

 「まぼろしの国」は影を背負ったファンタジー。
 どこにでもありどこにもないホロウ・ランド。騎士である主人公は、そこで運命の女と出会う。けれどもそこはホロウ・ランド。
 前号に掲載されていたジョージ・マクドナルドの「黄金の鍵」を思い出した。
 ただ惜しむらくは、「ホロウ」との文字を見た瞬間から漫画『BLECH』の虚(ホロウ)の姿が視界をウロウロしてしまい、もうそれ以外を連想出来ない……。

 前号でやきもきさせてくれた「猫の足 ジンジムの噺」は、今月号に後篇が載り、無事に完結。
 前篇ではどこが風刺なのかサッパリ分からなかったが、今回はいくつか分かった。
 皮肉の効いた文章と、主人公アマディルが彼の望みを叶えるために満たさなければならない条件が実に良い。
 ただ翻訳がちょっと。文章の硬さがあまりにも一貫していないように思える。
 この「猫の足 ジンジムの噺」、バベルの図書館シリーズの19巻『悪魔の恋』に収録されているんだそうな。ただし翻訳者は異なり、渡辺一夫と平岡昇。


 ふぅ、長かった。
 ナチュラルに文句を言ってしまったが、CTHULHU神話をもう少し読んでみようかなと思う。
 私は眠れる夜が好きだが、眠れない夜を知るのも悪くないだろう。


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シリーズ別:幻想と怪奇(雑誌)|テーマ別:創作神話
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