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『鳥はいまどこを飛ぶか(山野浩一傑作選・Ⅰ)』感想:★★☆☆☆

2012.02.20 Mon


鳥はいまどこを飛ぶか (山野浩一傑作選Ⅰ) (創元SF文庫)

山野 浩一 東京創元社 2011-10-28
売り上げランキング : 156316
by ヨメレバ


 二分冊で刊行された山野浩一傑作選の一冊目。
 著者あとがきによると、Ⅰは「失踪=不在」との一貫したテーマで、Ⅱには単行本未収録の4作品を含む変化に富んだ作品が収録されているんだそうな。

 「失踪=不在」をテーマとするⅠの収録作は以下10作。
・「鳥はいまどこを飛ぶか」
・「消えた街」
・「赤い貨物列車」
・「X電車で行こう」
・「マインド・ウインド」
・「城」
・「カルブ爆撃隊」
・「首狩り」
・「虹の彼女」
・「霧の中の人々」


 感想は……、正直「ツマラン」の一言に尽きる。
 何がつまらないかと言えば、基本的にどれも同じフォーマットに沿っているように思え、しかもその形式が私は好きではないからだ。








 主人公は現在(もしくは過去)サラリーマンである。給料を得るために日々日々ごく普通の仕事をし、そしてそんな毎日にどこか「ズレ」を感じている。あるいは、感じるようになる。
 小さなキッカケからそのズレは大きくなり、ついには主人公はもはや普通のサラリーマンでは居られなくなる。けれども、彼はどこにも行けない。普通から逸脱しても、遠くに飛べるわけではない。遠くに飛ぶことを望みながら、主人公は自分自身が飛べないことを知っているのだ。だから飛べない。
 飛び立っていく人を横目で見ながら、普通のサラリーマンが普通の日々を過ごし普通の平和を謳歌するのを眺めながら、どちらにもなれぬ主人公はただ、その狭間で両者を眺め続けるのだ。
 彼はもう、普通でもなければ異端でもない。


 ……つ、辛い。辛いよ。
 現在にどこかやり切れなさを感じながらも、「ここ」以外に行く場所がないことなど、言われなくとも知っている。「ここ」ではない「どこか」なんてものが、存在しないことは、よく分かっている。例え、「どこか」が存在したとしても、私には行くことが出来ないことも、理解しているのだ。それは否定出来ない実感として。
 さらに言えば、「ここ」が安住の地でもなければ、永遠に私のために用意されている席でもないこともまた、知っている。

 分かっているからこそ、夢を見たい。知っているからこそ、目を逸らしたい。気が付かないフリをしていたい。今だけ。この一時だけは。道化を演じていたい。
 この逃避こそがズレを拡大し、私の今持つ「ここ」を危うくする行為であることを理解していながら。それでも息抜きをしなければ、生きてなどいけない。生きる意味が無い。
 他者の書いた文章を読むという行為は、主人公に感情移入をするということは、他人の考えをなぞることは、私が私ではなくなる僅かな間だけの変化なのだ。
 私は「ここ」から逃げられなくとも、「どこか」を眺めることは出来る。その「どこか」が実存しているのか単なる幻なのかは、問題ではない。どちらにしろ行けはしないのだから。
 だと言うのに、本書の主人公は私に似ている。私と同じで、どこにも行けない。逃げ出した先の袋小路。


 ……なにが楽しくて、袋小路に自分から飛び込まなくちゃならんのさ。求めてない、心の底からこれっぽっちも求めてないよ。そこまで地味なマゾスティック気質は有しておりません。マゾならもっと痛いのが良い。極端大好きだからね。

 それでも最後まで読み終えたのは、同じフォーマットが繰り返し登場する短篇集ながら、時折面白いガジェットが登場するからだ。
 表題作の「鳥はいまどこを飛ぶか」は、ラストがやや急展開すぎる気がするものの、好きだ。ネタは今となっては平凡にも思えるが、鳥を使うアイデアは素晴しい。
 「首狩り」、「虹の彼女」も好み。自分の平々凡々さを思い知り、同時に自分が「飛べない」人間であることが心に凍みるが、それに対して牙を剥いて反抗するほどには、もう私は若くない。それが大人になったということなのか、堕落したということなのかは、知らない。
 後者が原型となっているという長編『花と機械とゲシタルト』が気になるのだが、Amazonの中古価格が8,000円で即刻諦めた。近所の図書館にもないことだし。
 というか、市場にあんまり出回ってない感じがする。どこか復刊して下さらないかしら。ここまで文句を言っておいてアレなんですけど。



 総括としては、私のように現実に対してどこか違和感を覚えている人間ではないならば、極々普通に楽しめる短編集なのだろう。
 ⅡはⅠとは違い変化に富んだ作品たちが収録されているそうなので、次は私も極々普通に楽しめると良いな。



関連記事:
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ジャンル別:SF小説|出版社別:東京創元社
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 どうでも良いが、作者のかつての生活圏と私のそれがかなり被っているような気がした。能勢電鉄が紙面に登場した瞬間に、思わず笑ってしまったよ。
 そういえば、どうして阪急と同じ車両なんだろう能勢電。阪急電車の第二の人生が能勢電なの?
 ついでに言うと、ワンマンがone manだと理解したのは実は結構最近だったりします……。
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