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『アンティーク・レース 16世紀~18世紀 富と権力の象徴』感想:★★☆☆☆

2012.02.08 Wed


アンティーク・レース―16世紀~18世紀 富と権力の象徴

吉野 真理 里文出版 2007-03
売り上げランキング : 242379
by ヨメレバ


 私が読んだのは新装版。
 Amazon情報によると25.6cmx19cmの大きめな本ながら、ソフトカバーな上に100ページほどと薄いので、重すぎて腕が疲れる心配は無用。
 中に収録されているレースの写真はほぼ全てがモノクロだが、レースのほぼ全てが白色なので特に問題を感じない。


 内容としては、サブタイトルが全て。16世紀から18世紀に一大産業となり、機械化によって駆逐されることとなる手編みレースを、写真と文章で説明した本である。レース自体は作者のコレクションから選ばれているようだ。
 レースの編み図は全く収録されていない。そもそもからして、収録されているレースは私たちが普通に連想するかぎ針で編むレース(クロッシェレース)ではなく、ニードルレースとボビンレースの2種類である。
 クロッシェレースも16世紀頃から家庭で楽しまれていたそうだが、この本で扱っているのは当時の貴族階級が身につけたトップクオリティのレースのみ。
 ニードルレースとボビンレースの説明は本書内で成されているので割愛。と言いますか、私自身がよく分かっていないもので。

 レースの写真は大きくて柄が分かりやすく、なかなか良い。
 対して説明が分かりにくいが、そう感じるのは、私の頭の問題なのかもしれない。前に『手芸の文化史』を読んだ時も同じように感じたことだし。
 類書も余りない希少な分野の本だとは思うが、この本は18世紀フランスの歴史に特に拘りがなく、横書き縦書き混合の構成に耐えられる人じゃないと辛い。
 以下理由。ほぼ文句と化しているので折りたたみ。









 レースの文化が花開くのは17世紀後半のバロックから18世紀ロココにかけてだ。表紙を飾っている小鳥のレース(刺繍じゃないのですよコレ)は、かの有名なポンパドゥール夫人が作らせたとされる物。
 この可愛いレースについての解説が本書冒頭の「序に代えて」で成されているのだが、いきなり「このレースは、そのポンパドゥール夫人がルイ十五世との結婚式の時に着るためにと、特別に作らせたものだと思われます(p.5)」との記述で吹っ飛んでしまった。
 ポンパドゥール夫人は平民出である以上、流石の野心家とは言えフランス王との結婚が実現するとは考えてはいなかったのでは。
 辛うじて可能なのは秘密結婚であるが、その場合は貴賤結婚となるので、こっそり妻にはなれても、やはり公式な妻、つまりはフランス王妃にはなれない。けれどフランス王が実は夫なのだ、との満足感は得られるやも。
 と、無理矢理に納得しかけた思った矢先に飛び込んで来た文章が、「侯爵夫人、公爵夫人と、順に称号を与えられていた彼女は、将来、ルイ十六世の妃、フランスの女王になることを夢見ていたのではないでしょうか(p.7)」。
 いや、だから無理だと思うんだ。秘密結婚が関の山だろう。

 その後も、夫人の死語、ルイ十六世の王妃であるマリー・アントワネットの物になったであろうこのレースが策略によって不当に安い値段でアントワネットの手から買い取られ、それが回り回ってアントワネットをギロチン台に押しやった……、なんて話が展開されたりするわけだが、アントワネットがレースを格安で手放してしまった理由がポンパドゥール夫人への嫉妬心からだとするのも、うーん?
 ウィーンの王宮で育った彼女にとって、フランス王宮の公妾制度が酷く汚らわしいものに感じられたとの話はそれなりに有名であり、それが事実であるならば、彼女の失態は嫉妬ではなく嫌悪や憎悪のせいである方が納得出来る。


 以上に少し書いた通りに、基本的に歴史に関してはこんな感じでお送りされております。言葉は悪いが、ドリーム入りまくり。
 私ですらその威力に吹っ飛んでしまった以上、もっと歴史が好きな人が読むとどうなってしまうことやら。
 とは言え、歴史について記述されているのは頭の「序に代えて」と最後の方の「レース、その始まりの謎」程度のものなので、この箇所だけ目を瞑って走り抜けても、本書の主題であるレースの説明が分からなくなる心配はない。

 それに、これは歴史本ではないのだから、作者の歴史観など実はどうでも良いのだ。「ドリーム入りまくり」とまで書いておいて申し訳ないが。
 作者の歴史観よりも格段問題なのは、本書の構成そのものだ。
 最初の「序に代えて」は縦書きとなっているが、その後の「第一章 レースの種類」は横書きに変更される。続く第二章は縦書きに戻る。この縦横混成の構成が心底気持ち悪く、そして何よりも読みにくい。
 しかも横書きで組まれている第一章が事実上のメインであり分量も多いと言うのに、本自体は縦書きの本と同じ作りなのだ。つまり頁は右から左に読み進むように出来ている。
 ……何が悲しくて、横書きの文章を右頁から左頁へと読み進まないといけないのだろうか? 構成決めたヤツは誰だ!
 横書きの文章を読めば目は勝手に右下へ右下へと進んで行くのに、実際は頁の端で左上に飛ばなくてはならない。慣れた目の運動を妨げられるこの苛立ちは強烈だ。
 いや、本当に、これ頁組を考えた人は何も思わなかったのか? 読みにくくなかったの?
 縦書き部分も、大きい本なのに一段組みで、目の移動が非常に長くて疲れる。



 そんな訳で、本題であるレースとは関係ないところで大幅減点。
 読みにくいってのは一番ダメでしょう。手芸本だと主張するならばまだしも、一応は読み物を志しているようなのにさ。



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テーマ別:近世フランス|テーマ別:レース
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