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『かくれんぼ・白い母 他二篇』感想:★★★★★

2012.01.26 Thu


かくれんぼ・白い母―他二篇 (1953年) (岩波文庫)
かくれんぼ・白い母―他二篇 (1953年) (岩波文庫)ソログープ 中山 省三郎

岩波書店 1953
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 旧字旧仮名。
 収録されているのは、以下の4作品。
・「かくれんぼ」
・「白い母」
・「光と影」
・「小羊」

 一番長い作品である「光と影」でもせいぜい50ページ、最も短い「小羊」になると僅か6ページ。翻訳者のあとがきを入れてもトータルで117ページの薄い1冊ながら、読後に残す印象は鮮やかな白と黒。
 鋭いくせに繊細で、触ると溶けてしまいそうな儚さを有するソログープの短篇たちは、実に寒い冬に相応しい。と、個人的には思う。

 そんなわけで、復刊しましょうよ岩波文庫さん。もうすぐ青空文庫で読めるようになりそうだけどさぁ。








 影をうつすいろんな物は、もはやワローヂャの興味を惹かなかつた。彼は殆どそれらの物を見なかつた。彼のあらゆる注意力は、それらの影に集中された。(p.86, 「光と影」)


 この4作に登場するそれぞれの主人公たちの人生は、物語の始めと終わりで変わる。
 己の確かな道を歩いていた筈の彼らは、ふとしたことを切っ掛けに隣の道に迷い込む。そして最後には、誤って迷い込んだはずの道を、自分の道として歩き出すのである。二度と以前の「自分の道」には戻れない。

 「かくれんぼ」では、幼い娘レレチカに全ての愛情を注ぐセラフィマ・アレクサンドロヴナが、レレチカの好きなかくれんぼ遊びについて忠告を受けたことから、過度の不安に駆られることになり、「白い母」の主人公サクサウロフはたまたま出会った少年に過去の思い人の影を見たことをきっかけに大きな決断をする。
 「光と影」では偶然目にした冊子から少年ワローヂャは影絵遊びに没頭し、その影は彼どころか彼の母親をも飲み込んでしまう。「小羊」に於いては、幼子の遊び心が彼らに結末をもたらす。

 幸せは外部から客観的に測られる性質を有してはおらず、自身の主観が決定するものである以上、以前の彼らと以後の彼らのどちらが幸福かを簡単に決めることは出来ない。
 ただ、彼らが今までの道から外れる契機は、実にささやかだ。けれど、実際、そんなものなのかもしれない。
 迷うことなく穏やかに緩やかに道を辿っているつもりでも、取るに足らないような出来事をきっかけに、その足は途端に行き先を変え、全く違う風景と結末へと人を連れ去るものなのだろう。そして、そのきっかけは、どこにだって転がっているのだ。ただ気付くか気付かないかの差だけで。

あそこにだつて壁はありますよ。どこにだつて壁はあります。(p.91, 「光と影」)



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 ちょっとソログープの他の作品を探す旅に出てくる。
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