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『太陽の塔』感想:★★☆☆☆

2011.11.25 Fri

太陽の塔 (新潮文庫)

森見 登美彦 新潮社 2006-05
売り上げランキング : 3338
by ヨメレバ


 ないようがないよう。

 太陽の塔、それは謎めいたな構造物である。それが立つ万博公園には子供の頃何度も行っており、塔は私に身近な存在のはずであった。
 だが、ある日。珍しく大阪モノレールに揺られていた私は、晴れた日中の心地よい微睡みから目覚めた。ふと顔を上げたのは万博記念公園駅でのこと。
 そこで私は目が合った。太陽の塔と。正確には、太陽の塔の複数ある顔の一つと、目が合った。太陽の塔の金色の顔は、故意になのだろうか、モノレールと同じ高さなのである。なのでバッチリ目を合わせることが可能となっている。
 うたた寝から目覚めて直後に受けたその衝撃は、言葉に表しにくい。私は何かを叫ばなくてはならない衝動に駆られたが、「気持ち悪い!」では太陽の塔が確かに有する何らかの偉大さを表現出来ず、「凄い!」ではこの気味の悪さを排除することとなり、「意味分からん!」ではこの構造物が持つ奇妙な親近感を追い出すことになる。
 すっかり深い悩みの中に落ち込み、何を叫ぶべきなのか分からずに口を半開きにした私を乗せて、モノレールは万博記念公園駅を出発した。
 青い空、すぐそこで煌めく太陽の塔の金色の顔。あの光景を私はきっと忘れないだろう。
 後に「モノレール乗ってたら太陽の塔と目が合った」と知人に語ったところ、彼女は「前に見た時はライトアップされてたよ」との恐ろしい情報をくれた。夜空に浮かび上がる光る金色の顔。泣く。私はきっと泣く。
 ……私は兎も角として、子供の心に深い傷を残しそうな気がするのだが、大丈夫か。


 とまぁ、太陽の塔は奇妙奇天烈で理解不能なクセに、妙に馴れ馴れしい顔をして私の記憶に座を占めている。だが、そんな強烈な構造物の固有名を冠した本書は、私にとって「ないようがないよう」状態である。








 主人公である「私」は京都大学は五回生。六年制ではない。農学部の研究室から逃走し、今は休学中の身なのである。
 そんな「私」には、水尾さんという恋人がいた。いた。過去形である。過去完了形である。彼は振られてしまったのだ。
 だが彼が着手した「水尾さん研究」はまだ終わっていない。彼は恋人に未練があるからではなく、彼の研究を完成させるために水尾さんを観察する。ストーカーでは断じてない、とは彼の弁。どう考えても詭弁である。

 だが安心して欲しい。主人公たる「私」は自我が異常に肥大し、現代資本主義社会と恋愛礼賛主義に適応出来ないだけの、極々普通のそこらへんに転がっている留年生である。
 「私」は同じく極々普通の留年生たちと友情を温めては泥沼により深く嵌まり込んでみたり、「水尾さん研究」に邁進しようとして愛車(自転車)を盗まれたり、水尾さんに恋する男に贈ったクリスマスプレゼントを突き返されて部屋に生命が充ち満ちたりするだけである。
 その世界は非常に日常サイズ。独特な味のある文体で綴られる物語は、幻想風味と文学的味付けに富んではいるが、どこまでも日常である。自転車で充分に暮らしていけるほどの距離で完結している。だからこそ、「ないようがないよう」。


 ただ弁解するならば、この「ないようがないよう」には、読者である私の問題が大きいように思う。
 1冊まるまると展開され続ける独特の文体に、私は舞城王太郎の『煙か土か食い物』を連想したのだ。だからきっと、この三歩進んで二歩下がる的な面倒な展開の末に、何か劇的な発展が待っているのだと期待してしまった。
 けれども本書はどこまでも平和な日常の物語である。小さな箱庭のお話なのだ。
 何かを読むときには常にその内容に脳髄ブチ抜かれたいと希求する私は、本書をただ「ないようがないよう」と呟きながら読み終えることしか出来なかった。


レーベル別:新潮文庫|受賞作:日本ファンタジーノベル大賞
その他は右カラムのカテゴリから選択してください。

Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星2つ:★★☆☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |
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