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『月桃夜』感想:★★★☆☆

2011.11.17 Thu

月桃夜

遠田 潤子 新潮社 2009-11-20
売り上げランキング : 269102
by ヨメレバ


 奄美の海をただ流されるままのカヤックの中で、茉莉香は溜め息を吐いた。海から続く空に浮かぶのは下弦の月。
 死を覚悟して漂う彼女のカヤックに降り立ったのは、大きな鷲だった。曲がった嘴、強靱な爪。片眼の潰れた鷲は茉莉香に語りかける。
 それは今は遠い昔、彼の島が薩摩の支配にあった時代の、生まれながらの奴隷である少年と、奴隷に身を落とした少女の物語。少年の名前はフィエクサ、意味は鷲。少女の名前はサネン。月桃の意味だ。
 幼くして両親を亡くした彼らは兄妹のように育った。フィエクサにとってサネンはただ一つの生きる理由であった。だが彼らの成長と共に、二人だけの幸福な関係は色を変えていく。
 そして、茉莉香にも大きな秘密があった。
 どうして鷲は世界の終わりを願い、茉莉香は海を漂流することとなったのか。その理由が明かされた時、長い長い夜が終わる。


 兄妹の恋愛モノは今も昔も一定の人気を誇るジャンルのようだ。血が繋がった者の間に芽生える禁断の愛のテーマに魅せられる人は多いのだろう。確か今放送中のドラマ『蜜の味』も兄妹でこそないが、叔父と姪の禁断の恋がテーマなようだし。
 本書『月桃夜』も兄妹間の禁断の関係がテーマとなってはいるが、その問題が表面化するのはかなり後半になってからである。

 それよりも目を惹くのは江戸時代末期に於ける奄美大島の実情である。砂糖の生産を強制される島と、そのために生み出されたヤンチュと呼ばれる奴隷。貧しい者から順々にヤンチュへと身を落とし、ヒザと呼ばれるヤンチュの子供は生まれた瞬間から死ぬまでずっと奴隷だ。本書に登場するフィエクサはヒザであり、サネンはヤンチュである。
 苛酷な環境で生まれた上に幼くして両親を亡くし、すっかり心を閉ざしてしまったフィエクサが、同じく独りぼっちのサネンと出会い、彼女が自分を見てくれること、自分に語りかけてくれることを支えに、彼女のために生きて行こうと決意する様が悲しく切ない。またその願いが彼の、そしてサネンの人生を大きく変えてしまうのである。








 見慣れぬ江戸時代の奄美大島を扱っていると言うのに、文章は読みやすくスルスルと進む。だがそれ故に、登場人物たちに大きな転機が訪れてもスルスルと流れていってしまう。
 サネンによってフィエクサにもたらされた「変化」こそが本書のキモであろうに、彼らの周囲の人間もまたフィエクサの成長と共に違う側面を見せる、つまりはフィエクサの目に今までとは「変わって」映るようになるのが残念だ。これではサネンのもたらした変化の価値が埋没してしまう。
 最初と最後まで変わらない人物が少ないことは、物語から強度をも奪っているように感じられる。「変わる」人物はもう少し限定した方がスッキリしたと思うのだが。


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ジャンル別:ファンタジー|受賞作:日本ファンタジーノベル大賞
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 本書の舞台は奄美大島。私の両親の出身もまた奄美大島である。
 とは言え、私にとって奄美はもはや「行く」場所であって、「帰る」場所ではない。私のアイデンティティはここ、大阪にある。私はこの地で生まれ、育ったのだから。
 だが両親にとっては奄美こそが「帰る」場所なのだろう。もう大阪で暮らした時間の方が長いのだが、それでも故郷は奄美なのである。
 ちなみに恐らくは私の両親が、奄美方言を話せる最後の世代になるのだろう。ほぼ同い年の二人だが、既に父親は方言を知らない。父は比較的都会で育っているからだろう。
 しかしあれは方言なのだろうか。正直、同じ日本語カテゴリーなのかすら怪しいと思えるほどに、聞いていても意味不明なのだが。

 まぁ、そんな訳で訊いてみた。「カサムチって知ってる? 黒糖が入っていて、サネン葉で包まれているお餅らしいんだけど」
 そうしたら、驚愕の答えが。「カサモチ(カサ「ム」チではなく、カサ「モ」チと聞こえた)? よもぎ餅のことでしょ。アンタも食べたことあるじゃない。あの葉っぱに包まれたの。イモも入ってるんだよ」
 ……葉っぱに包まれたよもぎ餅? それはもしかして、笹の葉っぽい葉に包まれたアレのことか。電子レンジで温めすぎると柔らかくなりすぎて葉っぱ除去の難易度が急上昇する、妙に緑緑したよもぎ餅のことか! やたらともらう、あの細長い餅のことなのか! 真空パック(たぶん)!! なるほど、カサムチ→クサモチか。
 夢が壊れた。なんとなく。白っぽくて掌サイズのお餅をイメージしていた。まぁ私の知っているカサムチも手の平には載るが、掌だけではなく指まで使っている。
 我が家が貰うのはおそらく花田ミキ・お土産店のもの。サイトはこちら。商品一覧の2の一番上の「6.母ちゃんの餅」が私の母親の言う「カサムチ」。
 私が笹の葉の一種だと思っていたのは、実はサネン葉だったそうな。硬い葉を加工して柔らかくしているのだと思い込んでいたが、最初から柔らかいらしい。
 ちなみに今では祝いの席ではなく、端午の節句に食べるものだそうな。まぁいつでも出回ってはいるようだけれど。
 サネンが今も使われる言葉だと言うことも分かったので、フィエクサも訊いてはみたが母親には「鷲は鷲です。他の言い方は知りません」と言われて終了してしまった。


 思い出したので書いておくが、私の母親は「ケンムン」に遭ったことがあるらしい。
 ケンムンは『月桃夜』では山に住まう毛むくじゃらの恐ろしいものとして登場し、頭の上の皿に水を入れていることから、「さかだちしてみろ」と言うと逃げていくとされているが、私の母はそんな伝承は知らないと言った。
 母が言うには、ケンムンは山の神様で毛むくじゃら。それが通るときには臭うのだそうだ。けれども彼の存在の前で「臭い」との発言は禁忌である。その言葉を聞かれると酷い目に遭うと言われている。
 まだ子供だった母はその禁忌を破った。だから座っていた大きな岩ごと坂下に突き落とされた。「あの大岩が子供の体重ごときで動くわけがない。臭いと言ったから、怒られたのだ」とは母親の弁。
 「臭い」の他に「帰る」も御法度なのだとか。山の神様は気難しい。


Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
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ブログ村から飛んで来ました

私も本作を読んだことがあるので、やっぱり、人によって読み方が違うよね、と思いながらレヴューを読ませて頂きましたが、

>思い出したので書いておくが、私の母親は「ケンムン」に遭ったことがあるらしい。

途端、雑記調のレヴューに吹き出しました。二段構えのレヴューは面白いですね。
- | Medeski | URL | 2011.11.18(Fri) 04:46:27 | [EDIT] | top↑ |

Re: ブログ村から飛んで来ました

Medeskiさんコメントありがとうございます。

 基本的に二段というか、点線以下は感想ではなくて雑記の扱いなのです。
 今回は雑記の方が長いなんて謎仕様になっていますが。
 読んでいただきありがとうございました。
- | 春色 | URL | 2011.11.19(Sat) 18:30:23 | [EDIT] | top↑ |

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