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『民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化』感想:★☆☆☆☆

2011.11.14 Mon

民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化

ロベール マンドルー 人文書院 1988-09
売り上げランキング : 320888
by ヨメレバ


 本棚を見れば相手の人となりが分かる、と言ったのは誰だったか。はぐれ刑事純情派の安浦刑事だっただろうか。
 個人の本棚からその人の趣味嗜好が分かるならば、ある時代、ある身分の人物の本棚を覗いて回れば、当該の時代・身分の人たちが何を好み、何を欲していたかの平均値が分かるのではないか、と言うのが出発点であり、今回マンドルーが対象とした「ある時代、ある身分」とは17・18世紀の、人数的には大多数を占めていた「民衆」である。

 ただ貧しい彼らは高価な本を買うことは出来ない。彼らが所有していたのは僅かな金で買える粗悪な青表紙の本のみであり、通称「青本」と呼称されたそれらには資産としての価値は無く、従って死後の遺産目録に記載されることはない。
 ならばどうやって当時の民衆が所有していた本を知ることが出来るだろうか? 調べるためには元となる資料が必要である。
 マンドルーが目を付けたのは、民衆相手の粗悪本を売っていた版元兼印刷所であった。トロワ市立図書館にたまたま寄贈されていた約450点の青本を手がかりに、マンドルーはそれらの内容を分類し、民衆の好みを知ろうとした。








 その結果マンドルーが見いだしたのは意外な事実であった。
 17、18世紀と言えば、アンシャンレジームが終焉へと向かい新しい時代が用意されつつある時期である。それなのに民衆はその変化を知らず、もしくは敢えて背を背け、中世から続く変わらぬ生活を嗜好していたのだ。
 現代を生きる我々は「変化する」ことに慣れている。時代は変わる。それも目まぐるしく。初めて我が家にやって来たパソコンはWindows98だか95であり、インターネットは電話と競合し通話中は使えず、月10時間で3,000円だった。右下にネット接続時間をカウントするwordのうざったいイルカに似たキャラクターが常駐していたことを思い出す。
 それが今やネットは使い放題が通常となり、もはや無線の時代である。携帯電話はパソコンと差が分からなくなりつつあり、「着メロが16和音になったよ!」と感動した時代が酷く遠くに思える。
 だがこの進歩の速度こそが異常なのだ。人間の欲望が「技術革新」の四文字に全て注がれたが故の成功であり、その幸運はそろそろ尽きるのかもしれない。

 この異常な時代に生まれて育った私の常識を、過去の民衆たちに当て嵌めることは出来ない。マンドルーの彼らへの指摘もやや厳しすぎるように思えるし、悲観的すぎるようにも感じられる。
 そして何よりも、マンドルーが用いた資料数はあまりにも少なすぎる。この少数の、しかも地域性を有する資料から導かれた結論を、飲み込むことは私には出来ない。
 彼の用いた方法にも仮定にも異論の余地はある。だがその方向性は間違ってはいないだろう。だからもっと多くの資料を用いた研究を、と期待したのだが、彼は本書を書いた後に病に倒れた。もっと彼の研究を読みたかった。



 身分の格差で断絶されていた民衆と上流階級ではあるが、良家の子供の世話をした下層出身の乳母たちの語りを通じて、その一部は文学の中へと取り込まれ、青本が新聞によって駆逐された後もその痕跡を留めた。
 そもそもの「民衆本」が古い上流階級の文学の一部を取り込んでいたことを思えば、単に彼らに回収されたとも言えるのかもしれない。


テーマ別:民衆本|テーマ別:近世フランス
その他は右カラムのカテゴリから選択してください。





 しかし私が感じたように、当時の民衆が変化に不慣れであったとしたら、アンシャンレジームの終焉に瀕して、彼らは一体どのような感情を抱いたのだろう。どんな未来を夢見たのだろう。そもそも現状をどう受け止めていたのだろうか。
 私という存在が歴史的な刻印に深く囚われている以上、当時をそのまま理解することなど当然出来はしないだろうが、とても気になる。


 全く関係ないが、イヴァン・イリイチの『H2Oと水 「素材(スタツフ)」を歴史的に読む』が読みたいと思い立ったのだが、絶版なのは良いとして、ネットで検索しても古書がサッパリ引っかかってこないのは何でなんだ?
 国会図書館行けってことかしら……。いやそこまでしたくないです。


Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
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