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『吸血鬼カーミラ (世界恐怖小説全集・1)』感想:★★★★★

2011.11.07 Mon

吸血鬼カーミラ (1958年) (世界恐怖小説全集〈第1〉)
吸血鬼カーミラ (1958年) (世界恐怖小説全集〈第1〉)S・レ・ファニュ 平井 呈一

東京創元社 1958
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 3回目のカーミラ。今回は世界恐怖小説全集の栄えある第1巻目。現在絶版。タイトル作を含む5作品を収録。
 収録作は以下。
 「白い手の怪」
 「緑茶」
 「仇魔」
 「判事ハーボットル氏」
 「吸血鬼カーミラ」

 私が以前読んだ、現在でも入手可能な創元推理文庫の『吸血鬼カーミラ』の収録作は以下。
 「白い手の怪」
 「墓掘りクルックの死」
 「シャルケン画伯」
 「大地主トビーの遺言」
 「仇魔」
 「判事ハーボットル氏」
 「吸血鬼カーミラ」

 「緑茶」が読めない以外は創元推理文庫の方がお得。
 創元推理文庫の方を読んだ時には、「傑作と名高いらしい『緑茶』をなんで入れなかったの?」と思ったけれど、読んでみるとその理由が分かる気がする。日本人には身近すぎる、緑茶は。
 身近過ぎて正直「緑茶disってんじゃねーよ」なんて気持ちになった上に、ちょっと飲むの嫌になったんですけども。どうしてくれるんですか、レ・ファニュさん。
 ……でもまぁ、そんな気持ちにさせてこそ「恐怖小説」だよなぁ。つまりは作者の勝利だ。








 本書収録の5作品の内、最初の「白い手の怪」以外は『曇りガラスの中』からの収録であり、1つのシリーズを成している。
 それら4作品は全て、ドイツ人医師であるマルチン・ヘッセリウス博士が遺した診断記録から、博士の弟子である「私」が素人が読んでも面白いものを抜粋した、との体で書かれている。
 医学上の理由からならまだしも、面白いからって診断記録を公開するなんてアホか。氏名等を変更してあるからと書いてあるけれど、それでも無いわー。……とつい真面目に思ってしまったが、勿論全部フィクションであります。

 本書のキモはこの「診断記録からの抜粋」との建前にある。抜粋とは言ってもその実は、当事者あるいはその周囲の人間による手記なのであるが、この建前が実に効いてくるのである。これこそが「恐怖」に繋がる仕掛けなのだ。
 診断記録に記された主人公、つまりは患者たちは怪奇現象に見舞われ、健全な世界からこぼれ落ちては、奇妙な世界の住人と化し、そして一人一人破滅していく(「吸血鬼カーミラ」は除く)。
 その様は読み手の私にとっては単なる他人事であり、怪奇現象に囚われ破滅していく彼らと私とは違う人間だと、そう素朴に安心していられる。

 けれどもヘッセリウス博士は物語の最後に、彼ら哀れな狂人たちを冷静に「説明」するのである。説明され得る現象はもはや怪奇ではない。怪奇ではないならば、彼ら哀れな犠牲者たちは奇妙な世界の住人などではなく、健全な世界の一部なのである。それは私と同じに。
 そこまで理解した瞬間に、私の安心は打ち破られ、一転して不安へと姿を変えるのである。



 ……くっそ、見事だわ。レ・ファニュの手の上で、その目論見通りにステップ踏んでダンスを踊らされてしまった。

 しかも何が悔しいって、過去に読んだ時はヘッセリウス博士の記述なんて時代遅れだと鼻で笑って完全スルーしてしまったことだ。
 霊だの流動体だのといった単語が飛び交うヘッセリウス博士の説明は、書かれた当時と比べれば現在ではその有効性を大幅に低下させてしまっていることだろう。
 だがそれでも彼は今日もまだ読者に説明している。彼の短い説明はその短さに反して、私の生きる世界が纏う「普通」の仮面の薄さを、怪異はすぐ傍に佇んでいるのだと言うことを強烈に伝えているのである。博士はただ淡々と患者の症状を説明しているに過ぎないと言うのに!
 ヘッセリウス博士の言い分を聞かせるという意味では「緑茶」は非常に良い話だ。身近な緑茶がテーマであること、またその記述が不穏で苛つくあまりに、真面目にヘッセリウス博士の説明を聞いてしまった故に。



 とベタ誉めしたが、翻訳は誤字が飛び交っております。
 「吸血鬼カーミラ」に至っては、カルンスタイン伯爵夫人の名前がミルカラだったりマーカラだったりする始末。まぁ、些末な問題と言えばそれまでではあるが。
 平井呈一の解説が楽しそうで、今まで読む気になれなかった「オトランド城奇譚」が読みたくなってしまった。紹介上手だなぁ。


関連記事:
『吸血鬼カーミラ』感想:★★★☆☆
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一人じゃ寂しいかなって思ったんだ:購入履歴・古本編15


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 昨日の記事で100記事目だった。結構書いたもんだ。
 まぁ、そのほぼ半分が積ん読記録なんですけどね。

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