『民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化』感想:★☆☆☆☆
2011.11.14 Mon
民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化 | ||||
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本棚を見れば相手の人となりが分かる、と言ったのは誰だったか。はぐれ刑事純情派の安浦刑事だっただろうか。
個人の本棚からその人の趣味嗜好が分かるならば、ある時代、ある身分の人物の本棚を覗いて回れば、当該の時代・身分の人たちが何を好み、何を欲していたかの平均値が分かるのではないか、と言うのが出発点であり、今回マンドルーが対象とした「ある時代、ある身分」とは17・18世紀の、人数的には大多数を占めていた「民衆」である。
ただ貧しい彼らは高価な本を買うことは出来ない。彼らが所有していたのは僅かな金で買える粗悪な青表紙の本のみであり、通称「青本」と呼称されたそれらには資産としての価値は無く、従って死後の遺産目録に記載されることはない。
ならばどうやって当時の民衆が所有していた本を知ることが出来るだろうか? 調べるためには元となる資料が必要である。
マンドルーが目を付けたのは、民衆相手の粗悪本を売っていた版元兼印刷所であった。トロワ市立図書館にたまたま寄贈されていた約450点の青本を手がかりに、マンドルーはそれらの内容を分類し、民衆の好みを知ろうとした。
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