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『ゲオルクの死』感想:★★★☆☆

2012.01.10 Tue


ゲオルクの死

リヒャルト ベーア=ホフマン 鳥影社ロゴス企画 2009-07
売り上げランキング : 437258
by ヨメレバ


 原文と日本語の相性が悪いのだろうが、とりあえず読みにくい。薄い本なのに妙に時間が掛かってしまった。


 物語の主人公はパウル。特に記述はされないが、恐らく彼は働かずとも食べていける身の上である。
 彼には何もする必要がない。仕事に急かされることも、隣近所とのつきあいにストレスをためることも、思い通りにならぬ他者に激怒することも、試験の期日に汲々とする必要性も全くない。
 彼の生活は彼一人で完結しており、彼は世間と隔たっている。それは彼が望んだことでもあり、彼の身の上が彼に促したことでもあるのだろう。
 彼の暮らしには荒れ狂うストレスや苛立ちと言った、尖った感情は皆無である。言うならば彼は、薄く快適で暖かく、けれども凹凸に乏しく単調な触り心地の夢想と言う名前の布にくるまれて生活しているのだ。
 その繭の中ではパウルは支配者であった。彼にとって周囲の全ては彼のためだけに存在し、彼に過去や新たな思想を与えてくれる切っ掛けでしかなかった。全ては無害で、彼の好みに合わせて姿を変えた。彼の世界は彼一人で完結していたのである。そこに些かの物足りなさを含有しながらも。

 そんなぬるま湯の中で暮らすパウルの前に、久々にゲオルクが訪ねてきた。彼もまたパウルと同じ階層の人間であるが、ゲオルクには医者という仕事があり、その職分によって数多の人々の生活に直に関与していた。
 ゲオルクは教授の職を得たばかりであった。その顔は陽に良く焼け、彼の人生は前途洋々なようにパウルには思えた。
 彼は確かに「生きて」いた。己の想像力で作り上げた繭の中ではなく、もっと広い場所に彼は根を張っていたのだ。パウルと取るに足らない話をしていたその夜までは。
 それなのに彼は突如死んだ。その死はパウルに、彼の支配が及ばない物事があることを知らせた。
 死。そして老い。生物であるからには避けられぬこれらには、パウルの美しい夢想も無力である。どう変形しようとも老いは老いであり、死は死でしかない。いつか死ぬ。生きていれば、老いる。そしてやはり死ぬ。

 ゲオルクの死を切っ掛けに、パウルの暮らしていた独りぼっちで完結した世界は姿を変え始める。





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