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『不実な美女か貞淑な醜女か』感想:★★★★★

2014.10.04 Sat


不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

米原 万里 新潮社 1997-12-24
売り上げランキング : 6760
by ヨメレバ


 1997年に新潮文庫入り、初出は徳間書店で1994年の作品ながら、今でも人気を誇る一冊。その前評判の通りにとても面白かった。

 タイトルの「不実な美女か貞淑な醜女か」とは、翻訳文のこと。原文に忠実を誓えば日本語としては不自然な代物に、美しい日本語にしようとすれば少なくとも原文の一部に背くことになる。そのことを表した一文なのである。
 当然ながら貞淑な美女が望ましいのは言うことは無い。けれども英語を含むヨーロッパ言語と日本語との距離は遠く、大抵の場合においてどうしようもない。
 だがその「どうしようもない」事情なぞ通訳を頼む側にはどうでも良いこと。成らぬ事を成し、異なる言語を一致させる無理を通してこそ通訳。
 そんな通訳の悲喜劇をユーモラスに、かつ通訳という仕事への愛情を込めて語ったのが本書。


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Theme:オススメの本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
Category:星5つ:★★★★★ | Comment(0) | Trackback(1) | top↑ |

『ファウスト 悲劇第一部』感想:★★★★★

2012.05.16 Wed


ゲーテ 中央公論新社 1974-10
売り上げランキング : 243084
by ヨメレバ


 「面白いと感じる」ことは、一体どういうことなのだろう。

 ゲーテが当時の世相を皮肉る様は、お世辞にも理解出来たとは言えない。戯曲形式で描かれる物語は、はっきり言って読みにくい。幕間でどれほどの時間が経過したのかもさっぱりだ。
 数多の登場人物が入り乱れる場面の必要性が分からない。山場であるはずのメフィストフェレスとの契約の場面も、グレートヒェンの破滅の場面もあっさりだ。しかも今気が付いたが、最初はマルガレーテ表記だったのが途中でグレートヒェンになっているじゃないか。

 と、色々と突っ込みたいところもあるものの、それらが全く瑕疵に見えないのほどに魅力的だった。
 

いや。われわれの陥っているこの間違いだらけの境涯から、
いつかは脱け出せると思い込んでいられるものは、しあわせだ。
われわれは、必要なことはいっこう知らず、
知っていることは何の役に立てることができないのだ。
(p.80)


 住民達から尊敬されるファウスト博士は、けれども己の限界に煩悶していた。弟子のワーグナーに羨ましがられても少しも嬉しくはない。
 祖父から父へ、父から己へと引き継がれた知の遺産。その上に立ったところで、見えるものとて何もない。彼が所有するのは手を触れたこともない実験器具と、虫食いだらけの書物の山だけ。
 追い詰められたファウストは、ついにはノストラダムスの書物から偉大なる地霊を呼び出すも、そのあまりの偉大さに自身の矮小さを知らされるばかり。
 全てに絶望した彼は、かつて産み出した褐色の液体により己の命を絶とうとするが、その行為は天使の合唱と鐘の音により阻まれる。そして物語はメフィストフェレスとの出会いへと展開する。


 自分自身に絶望し、悪魔の手を取ったファウスト博士は何を得ようとするのだろうか。
 己の器の小ささに苦しみながら、大いなる階段を上ろうと足掻く彼は何者か。
 そんなファウストにメフィストフェレスが応えて曰く。

あなたは、やっぱり――あなたですよ。
何百本の髪の毛を植えた仮髪をかぶっても、
一メートルもある高下駄をはいても、
あなたは、あなたであることに変わりはない。
(p.127-128)



 さてさて、悪魔の言葉は真実や否や?
 愛しい愛しいグレートヒェンを悲劇に突き落としたファウストは、彼の望み通りのものを手に入れることが出来るのか?

 続きは『ファウスト 悲劇第二部』で、……と言いたいところだが、何故だか二部は上下共に絶版もしくは重版未定で、本屋には置いておりません。ご購入は古書店で!
 



Theme:読んだ本 | Genre:本・雑誌 |
Category:星5つ:★★★★★ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |