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『不実な美女か貞淑な醜女か』感想:★★★★★

2014.10.04 Sat


不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

米原 万里 新潮社 1997-12-24
売り上げランキング : 6760
by ヨメレバ


 1997年に新潮文庫入り、初出は徳間書店で1994年の作品ながら、今でも人気を誇る一冊。その前評判の通りにとても面白かった。

 タイトルの「不実な美女か貞淑な醜女か」とは、翻訳文のこと。原文に忠実を誓えば日本語としては不自然な代物に、美しい日本語にしようとすれば少なくとも原文の一部に背くことになる。そのことを表した一文なのである。
 当然ながら貞淑な美女が望ましいのは言うことは無い。けれども英語を含むヨーロッパ言語と日本語との距離は遠く、大抵の場合においてどうしようもない。
 だがその「どうしようもない」事情なぞ通訳を頼む側にはどうでも良いこと。成らぬ事を成し、異なる言語を一致させる無理を通してこそ通訳。
 そんな通訳の悲喜劇をユーモラスに、かつ通訳という仕事への愛情を込めて語ったのが本書。


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『夏の夜の夢・あらし』感想:★★★★★

2012.12.27 Thu


夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

シェイクスピア 新潮社 1971-08-03
売り上げランキング : 13158
by ヨメレバ


 「夏の夜の夢」(もしくは「真夏の夜の夢」とも)と、「あらし」(「テンペスト」の方が通りが良いか?)の2作品を収めた1冊。
 そのどちらにも人間の英知の及ばぬより大きな存在の気配が満ち、人間の限界を認めると共にそれ故のおおらかさをも有する、豊穣でしなやかな世界が広がっている。
 その淡く切なく不格好に美しい古き良き世界は、極端と奇異を良しとする私にとっては否定したくて堪らない存在ではあるのだが、それでも作者の豊かな手腕を認めないのは、それはそれで醜悪だ。
 個人的な葛藤は後に回すとして、以下2作品のあらすじ。


 「夏の夜の夢」で舞台となるのは、アセンズ(アテネ)の地。
 アセンズの大公シーシアスは、アマゾン族の女王であるヒポリタとの婚礼を目前に控えていた。
 そんな中、アセンズに住まうイジアスは娘のハーミアをデメトリアスと結婚させようとしていた。その話にハーミアを愛するデメトリアスは大いに乗り気であるが、しかし何とハーミアはライサンダーを愛していると、それもライサンダーも自分を愛してくれている、つまりは両思いなのだと言い出す。
 父親の意に背く結婚はアセンズの法律違反。自分たちの気持ちを貫き通すために、ハーミアとライサンダーは駆け落ちを決意する。その前準備として、アセンズの近くの森へ逃げ出すことに。
 しかし彼らの計画を知ったハーミアの友人でありデメトリアスに恋するヘレナは、それをデメトリアスに教えてしまうのだった。



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『オセロー(新潮文庫)』感想:★★☆☆☆

2012.12.07 Fri


オセロー (新潮文庫)

シェイクスピア 新潮社 1973-06
売り上げランキング : 32966
by ヨメレバ



 METライビビューイングの『オテロ』を観に行く前に予習がてら読んだのが、オペラの原作シェイクスピアのこの『オセロー』。
 けれど悲劇としての出来映えならば、原作よりもオペラの方が良い。
 それは偏に原作『オセロー』では、悲劇のヒロインとなり愛する夫の手で殺される無垢なる妻デスデモーナと、唆されて嫉妬に狂い妻を殺す悲劇の主人公オセローの結婚そのものに既に「罪」が含まれているからだ。



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『黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集Ⅰゴシック編』感想:★★★☆☆

2012.12.03 Mon


黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

エドガー・アラン ポー 新潮社 2009-03-28
売り上げランキング : 116559
by ヨメレバ


 新潮文庫のポー短編集Ⅰは「ゴシック編」と題して、6作品を収録。
・「黒猫」
・「赤き死の仮面」
・「ライジーア」
・「落とし穴と振り子」
・「ウィリアム・ウィルソン」
・「アッシャー家の崩壊」

 どれも既読、だけどもポーの怪奇幻想な作品がオーソドックスに集まっている点は高評価。
 しかし、どうにもこうにも、久しぶりにこう言いたくて堪らなくなってしまった。「日本語でおk」

 何だか変だよ日本語が。折角のゴシック風味なポーの作品なのに、もはや日本語しか気にならないよ。
 それも、どいつもこいつも奇妙な日本語なら慣れもするのに、作品によって日本語の奇妙さレベルが違うのがまた耐えられない。これ同じ人が訳してるんだよね?
 翻訳者が様々な創元推理文庫の『ポオ小説全集』シリーズの方が違和感が断然マシなのは、どうしてだ。
 あちらもあちらで、古すぎて日本語に苔が生えてる気配すら見られるし日本語としてどうなのと思う箇所もあったが、それでもこの奇妙に捻れた日本語よりは良い。

 しかも何が怖いって、この手の文句を言っている人がざっと検索した限りでは見つからなかったという事態。
 この日本語の奇妙さが、私の書く文章の奇妙さとどこか似ているから、一種の自己嫌悪で私はここまで過剰に反応してるとでも言うのだろうか。
 まぁ何にせよ、違和感にのたうち回ったのが私だけなら、それは幸いなことだ。
 作品のラインナップとしては、初ポーな人にとても良いと思うしね。



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『モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集Ⅱミステリ編』感想:★★★☆☆

2012.10.19 Fri


モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)

エドガー・アラン ポー 新潮社 2009-04-25
売り上げランキング : 19102
by ヨメレバ



 文字が妙に大きくて読みにくい……のは、この本の前に読んでいたのが昔の岩波文庫だからそう感じるのも仕方が無いとして、翻訳された文章が妙に引っ掛かり何度も途中で躓いてしまった。
 ポーの翻訳物でここまで「ううん?」と思わされたことってないのだけれど、一体何が違うのだろう。と言うか、私だけ?


 新潮文庫のポー短編集Ⅱは「ミステリ編」と題して、6作品を収録。
・「モルグ街の殺人」
・「盗まれた手紙」
・「群衆の人」
・「おまえが犯人だ」
・「ホップフロッグ」
・「黄金虫」


 この短編集で気になったのは、「語り手」。
 どの作品も全て三人称ではなく、作中の一人が語り手となり彼の視点から物語は綴られていく。けれども彼はあくまでも「語り手」であり、物語の主人公ではない。
 語り手は作品によっては結局誰なのかすら分からないままに終わることすらある。ワトソン役を通り越して、黒子役に近い。



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『水中都市・デンドロカカリヤ』感想:★★★★☆

2012.03.22 Thu


水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

安部 公房 新潮社 1973-07
売り上げランキング : 262044
by ヨメレバ


 現状への不満と、理不尽な変身と、けれども変身しても得られない満足と、そして戦争の臭いと貧しさの音が聞こえる短篇集。

 Amazonから引いてきた上記の画像は青竹色の背表紙の旧版のもの。現在出回っている背表紙が銀色の新装版の表紙は異なる。
 収録されている作品に変更はない。収録作品は以下の11作。

・「デンドロカカリア」
・「手」
・「飢えた皮膚」
・「詩人の生涯」
・「空中楼閣」
・「闖入者」
・「ノアの方舟」
・「プルートーのわな」
・「水中都市」
・「鉄砲屋」
・「イソップの裁判」


 感想は折りたたみ。



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『壁』感想:★★★☆☆

2012.03.10 Sat


壁 (新潮文庫)

安部 公房 新潮社 1969-05-20
売り上げランキング : 29069
by ヨメレバ


 纏わり付くは既視感。記述される全ては奇想天外なのに。
 そのせいか、第一の感想は「物語が長い、長すぎる。もっと短篇にしてくれ」。


 本書、『壁』は安部公房の短篇集。収録作品は以下。
  第一部 S・カルマ氏の犯罪
  第二部 バベルの塔の狸
  第三部 赤い繭
   赤い繭
   洪水
   魔法のチョーク
   事業


  「S・カルマ氏の犯罪」は第25回芥川賞を、「赤い繭」は第2回戦後文学賞をそれぞれ受賞した。
 感想は折りたたみ。
 我ながら長すぎると思うの。って、いつもか。



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『太陽の塔』感想:★★☆☆☆

2011.11.25 Fri

太陽の塔 (新潮文庫)

森見 登美彦 新潮社 2006-05
売り上げランキング : 3338
by ヨメレバ


 ないようがないよう。

 太陽の塔、それは謎めいたな構造物である。それが立つ万博公園には子供の頃何度も行っており、塔は私に身近な存在のはずであった。
 だが、ある日。珍しく大阪モノレールに揺られていた私は、晴れた日中の心地よい微睡みから目覚めた。ふと顔を上げたのは万博記念公園駅でのこと。
 そこで私は目が合った。太陽の塔と。正確には、太陽の塔の複数ある顔の一つと、目が合った。太陽の塔の金色の顔は、故意になのだろうか、モノレールと同じ高さなのである。なのでバッチリ目を合わせることが可能となっている。
 うたた寝から目覚めて直後に受けたその衝撃は、言葉に表しにくい。私は何かを叫ばなくてはならない衝動に駆られたが、「気持ち悪い!」では太陽の塔が確かに有する何らかの偉大さを表現出来ず、「凄い!」ではこの気味の悪さを排除することとなり、「意味分からん!」ではこの構造物が持つ奇妙な親近感を追い出すことになる。
 すっかり深い悩みの中に落ち込み、何を叫ぶべきなのか分からずに口を半開きにした私を乗せて、モノレールは万博記念公園駅を出発した。
 青い空、すぐそこで煌めく太陽の塔の金色の顔。あの光景を私はきっと忘れないだろう。
 後に「モノレール乗ってたら太陽の塔と目が合った」と知人に語ったところ、彼女は「前に見た時はライトアップされてたよ」との恐ろしい情報をくれた。夜空に浮かび上がる光る金色の顔。泣く。私はきっと泣く。
 ……私は兎も角として、子供の心に深い傷を残しそうな気がするのだが、大丈夫か。


 とまぁ、太陽の塔は奇妙奇天烈で理解不能なクセに、妙に馴れ馴れしい顔をして私の記憶に座を占めている。だが、そんな強烈な構造物の固有名を冠した本書は、私にとって「ないようがないよう」状態である。



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『月桃夜』感想:★★★☆☆

2011.11.17 Thu

月桃夜

遠田 潤子 新潮社 2009-11-20
売り上げランキング : 269102
by ヨメレバ


 奄美の海をただ流されるままのカヤックの中で、茉莉香は溜め息を吐いた。海から続く空に浮かぶのは下弦の月。
 死を覚悟して漂う彼女のカヤックに降り立ったのは、大きな鷲だった。曲がった嘴、強靱な爪。片眼の潰れた鷲は茉莉香に語りかける。
 それは今は遠い昔、彼の島が薩摩の支配にあった時代の、生まれながらの奴隷である少年と、奴隷に身を落とした少女の物語。少年の名前はフィエクサ、意味は鷲。少女の名前はサネン。月桃の意味だ。
 幼くして両親を亡くした彼らは兄妹のように育った。フィエクサにとってサネンはただ一つの生きる理由であった。だが彼らの成長と共に、二人だけの幸福な関係は色を変えていく。
 そして、茉莉香にも大きな秘密があった。
 どうして鷲は世界の終わりを願い、茉莉香は海を漂流することとなったのか。その理由が明かされた時、長い長い夜が終わる。


 兄妹の恋愛モノは今も昔も一定の人気を誇るジャンルのようだ。血が繋がった者の間に芽生える禁断の愛のテーマに魅せられる人は多いのだろう。確か今放送中のドラマ『蜜の味』も兄妹でこそないが、叔父と姪の禁断の恋がテーマなようだし。
 本書『月桃夜』も兄妹間の禁断の関係がテーマとなってはいるが、その問題が表面化するのはかなり後半になってからである。

 それよりも目を惹くのは江戸時代末期に於ける奄美大島の実情である。砂糖の生産を強制される島と、そのために生み出されたヤンチュと呼ばれる奴隷。貧しい者から順々にヤンチュへと身を落とし、ヒザと呼ばれるヤンチュの子供は生まれた瞬間から死ぬまでずっと奴隷だ。本書に登場するフィエクサはヒザであり、サネンはヤンチュである。
 苛酷な環境で生まれた上に幼くして両親を亡くし、すっかり心を閉ざしてしまったフィエクサが、同じく独りぼっちのサネンと出会い、彼女が自分を見てくれること、自分に語りかけてくれることを支えに、彼女のために生きて行こうと決意する様が悲しく切ない。またその願いが彼の、そしてサネンの人生を大きく変えてしまうのである。



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