RSS|archives|admin


スポンサーサイト

--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


Category:スポンサー広告 | Comment(-) | Trackback(-) | top↑ |

『パウリーナの思い出に』感想:★★☆☆☆

2013.08.02 Fri


パウリーナの思い出に (短篇小説の快楽)

アドルフォ・ビオイ=カサーレス 国書刊行会 2013-05-30
売り上げランキング : 4685
by ヨメレバ


 日本初のビオイ=カサーレス短編集。収録作品は以下。

・「パウリーナの思い出に」
・「二人の側から」
・「愛のからくり」
・「墓穴掘り」
・「大空の陰謀」
・「影の下」
・「偶像」
・「大熾天使」
・「真実の顔」
・「雪の偽証」

 個人的な感想は「この作者はきっと凄く良い人なんだろうな」に尽きる。
 どの作品の根底にも肯定の意思が流れており、そこには否定や排除といった冷たい要素は存在しない。作中で起こる怪異あるいは不思議すらも、あるがままの大きさで受け止められている。
 その何事も受け入れるおおらかさと、不可思議な出来事をも平気で育み動じない様は、いかにも異国的であり、そこが魅力でもあるのだろう。
 作者の意図するところもキッチリと語られるあたりに、書き手の優しさを感じないではいられない。


 ……なんかもう行間から滲み出ちゃってる気がするのでとっとと白状しておくと、私はあまりこの手の作品が好きではない。
 私が求める読書体験はあくまでマゾヒスティックなものであって、いわば極寒もしくは灼熱をこそ熱望しているのであります。こんな生温い快適温度は欲していないのですよ。
 いちいちキッチリハッキリ作品意図を解説してくれるサービスも欲しくない。その態度が鼻に付くとまでは言わないが、お楽しみを減じられた感はある。
 「この作品って何? 作者は何が書きたかったの?」と読後に妄想するのも読書の愉しみでございましょうに、その方向性の愉悦はほぼ生き残ってはいない。興ざめと表現するのが一番近いだろうか。
 読後の妄想なだけに、その馳せる先が書き手の意図と遥かに離れるどころか正反対にすらなることもあるだろうが、そんなところまで関与される覚えはない。一度読まれた物が、読み手の中でどう消化吸収され再構成されるかは、読み手の勝手でありましょう。

 ただこれも私個人の好みでしかないのも分かっている。
 熱帯の植物の如く逞しい生命力を根底に響かせながら、優しく奇想天外に紡がれる物語たちには確かに魅力があるし、曖昧模糊としながらも突如鮮やかな「意外」を見せる文体もなかなかに得がたい体験だ。
 以下、各作品についてつらつらと。



スポンサーサイト
Theme:読んだ本 | Genre:本・雑誌 |
Category:星2つ:★★☆☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『鏡 科学的伝説についての試論、啓示・SF・まやかし(バルトルシャイティス著作集4)』感想:★★★★☆‏

2012.10.02 Tue


鏡 バルトルシャイティス著作集(4)

ユルギス バルトルシャイティス 国書刊行会 1994-12
売り上げランキング : 702799
by ヨメレバ


 途中から、花粉症のせいで「下を向いたら死ぬ(鼻水的な意味で)」状態の中で読む羽目になった、バルトルシャイティスの『鏡』をようやく読み終えた。

 内容はタイトル通り「鏡」をテーマに、ヨーロッパを舞台に紀元前から現代までを縦横無尽に横切りながら、「鏡」の持つ魅力とそれが喚起するイメージ、ありのままの真実を映す「鏡」または真実をゆがめて嘘だけを映し人を騙す「鏡」を語り、人間が「鏡」をどう見つめたか、そこに何を見ようとしたのかを記した書。
 特別結論じみたものは存在せず、変化自在な万華鏡を覗くかの如きめくるめく想像力と理性の一冊。


 感想としては3つ。
 1.頭の良い人ってこういう話し方するよね。
 2.物理的に重たすぎるから電子書籍にしようよ! 図版も好きに拡大出来て便利だろうし。
 3.「伝説」に復活の余地を与えるな。殺せ。ゾンビ化断固反対。


 2は実際に持ってみれば分かるが、妙にこの本は重たい。角張ってもいるので、読んでいると節々が痛くなってくる。
 こういう本こそ電子書籍にすると良いんじゃないかな。写真や図ももっと詳細なのを載せられるよ。
 って確実に赤字になるから、誰もやらないよね分かります。

 1に関しては、本書では語り手たるバルトルシャイティスは決して親切なガイドとは言えず、最低限のパンくずしか残してくれていない。
 点々と落ちているそれを手がかりに、彼の歩む道を追うのは辛い。他の本で鏡にまつわる情報を仕入れていたからまだ何とか落第せずに済んだけれど、それでも途中でドロップアウトしかけまくったよ。
 ただ豊かに飛翔する姿は実に見事で、その様を見られるならば全身筋肉痛になりながらも付いていくだけの価値はある。逆に理解出来なかった時の疲労感が凄い。
 パンくずの落とし方にはやはりある程度の規則性のようなものがあり、最初は面食らっても我慢して黙々と歩き続ければ、その内にコツを掴んで難易度は下がるのだけれど、そこまで行くのがまた辛い。



Theme:読んだ本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『マンク』感想:★★★★★

2012.07.01 Sun


世界幻想文学大系 第2巻 A マンク 上

井上一夫,マシュ-・グレゴリ・ルイス
国書刊行会 1985-08
by ヨメレバ


 読んだのは、国書刊行会から出された世界幻想文学大系のもの。
 ただし出版は上のデータと異なり、1976年3月。



 舞台となるのは、中世スペインはマドリッド。当地に建つカプチン教会は人間の熱気で充ちていた。
 そう宗教熱心とは言えないはずの人々がここまで多く集っているのは、ひとえにカプチン教会の若き僧院長であるアンブロシオの人気故なのだった。
 彼は未だ物心もつかぬ赤ん坊の頃にカプチン教会の前に捨てられ、その後は修道院の中で育てられ、今や院長にまで上り詰めていた。
 修道院の世界しか知らぬ彼は、徳の厚さと信仰心の確かさで知られ、その説教には説得力があり、更には見目も麗しく、マドリッド中の尊敬と崇拝の的となっているのだ。

 そんな彼の修道院に、二人の女が入ってきた。未だ己の美しさすら知らぬ純潔なる娘アントニアと、その叔母だ。
 アントニアは彼女の両親の望まれぬ結婚の末に、今や親族中から縁を切られ、貴族の娘の身分ながらそれに見合う扱いを受けられずにいた。
 そんな現状を打破し、少しでも生活を助けて貰うため、アントニアの父の弟にして現在のシステルナス侯爵を訪ねるためにマドリッドに出てきたのだ。

 アントニアは初めて聞くアンブロシオの説教に心を振るわせる。そしてそんな彼女に、マドリッドの有力貴族であるロレンゾは心を奪われ、システルナス侯爵と面識のある彼は、アントニアのために力を貸すことを約束するのだった。
 その一方で、ロレンゾの妹で、今はカプチン教会の隣にある聖クラレの尼僧院に入っているアグネスと、システルナス侯爵の間にも恋の炎が燃え立っていたのであった。
 こうして、ロレンゾとアントニア、システルナス侯爵とアグネスの二組の恋の物語が始まる。



Theme:最近読んだ本 | Genre:本・雑誌 |
Category:星5つ:★★★★★ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『ク・リトル・リトル神話集』感想:★★★★☆

2012.03.26 Mon


ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)

H.P.ラヴクラフト,荒俣 宏 国書刊行会 1976-11
売り上げランキング : 135202
by ヨメレバ



 私が持っているのは初版だが、誤字が多い。
 「少しインディアンの血が」となるはずだった箇所が「少レインディアンの血が」となっているところ(p.138, 「イグの呪い」)で、昔懐かしい「インド人を右に!」を思い出してしまった。
 現在流通している版では誤字が直されていますように……。


 収録作品は以下。四部に分かれており、その頭には荒俣宏の手によると思われる短い前書きがついている。
 作品のほぼ全てのタイトル裏に、ヴァージル・フィンレイの挿絵付き。

 序文 荒俣宏
Ⅰ 発端
 ・「アルハザードのランプ」 ラヴクラフト&ダーレス 広田耕三・訳
Ⅱ 超宇宙の邪神
 ・「永劫より」 ヘイゼル・ヒールド 野村芳夫・訳
 ・「インスマスの追跡」 ラヴクラフト&ダーレス 那智四郎・訳
 ・「イグの呪い」 ゼリア・ビショップ 那智四郎・訳
 ・「博物館の恐怖」 ヘイゼル・ヒールド 野村芳夫・訳
Ⅲ 魔書の啓示
 ・「魔女の谷」 ラヴクラフト&ダーレス 広田耕三・訳
 ・「破風の上のもの」 ロバート・E・ハワード 赤井敏夫・訳
 ・「黄の印」 R・W・チェンバース 森美樹夫・訳
 ・「白蛆の襲来」 C・A・スミス 高木国寿・訳
Ⅳ 怪物の侵寇
 ・「地の底深く」 R・B・ジョンソン 赤井敏夫・訳
 ・「墳墓の末裔」 C・A・スミス 広田耕三・訳

 巻末には「ク・リトル・リトル神話事件簿(松井克弘・編)」を収録。
 これはラブクラフトの「ダゴン」、「ランドルフ・カーターの弁明」、「海底の神殿」、「妖犬」、「暗黒の秘儀」、「クートゥリュウの喚び声」、「銀の鍵」、「異次元の色彩」、「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」、「ダンウィッチの影」、「闇に囁くもの」、「インスマウスの影」、「魔女の家の怪」、「銀の鍵を超えて」、「戸口の怪物」、「超時間の影」、「闇に這う者」の作品から、起こった事件その他の出来事を時系列・地域別に分けてまとめたもの。


 感想は折りたたみ。



Theme:オススメの本 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『アルラウネ』感想:★★★☆☆

2011.12.19 Mon


世界幻想文学大系〈第27巻 A〉アルラウネ (1979年)
世界幻想文学大系〈第27巻 A〉アルラウネ (1979年)H.H.エーヴェルス 麻井倫具 平田達治

国書刊行会 1979-08
売り上げランキング : 504377


Amazonで詳しく見る
by G-Tools



 かの有名なドイツ生まれの悪魔メフィストフェレスは、海を渡った先のイギリスでマーロウの手を借りて嘆く。
君は、神の顏をみたわたし、天國の永遠の悅を味わつたわたしが、かうして無限の祝福を奪われて、幾千の地獄の苦痛を受けないと思ふのか。(『フォースタス博士』 p.19, クリストファー・マーロウ 松尾相・訳)

 フォースタス、即ちファウストの慰めもメフィストフェレスの心にまで届かない。彼にとって天国は、神は、この上なく素晴らしい存在なのである。
 そんなにも素晴らしい神とは何なのだろうか?

善なるものはこの世の掟、あらゆる法則と厳格な規律のすべては善いものです。これらの規則を創り、法律と掟を創り給うた偉大な神は善なる存在です。そして、それらのもろもろを尊敬し、己の信ずる善の神に忠実に従いながら、謙遜と忍耐によって己の道を往くのが善良な人間というもの。(『アルラウネ・上』 p.8)


 神とは、あらゆる法則と規律、掟の父親だとエーヴェルスは記す。そしてそれに従うのが「善良な」人間なのだと。
 善良。善。なんだかとても、押しつけがましくはないだろうか。善? 規律は善。本当に? 忠実に生きることだけが我々の生なのか。それは罪人の如く個々人の脚に付けられた鎖に過ぎないのではないのか。
 むくむくともたげるのは反抗心。神の手によって綺麗に創られた善なる掟とやらに逆らってみたくはないだろうか。足首に巻き付く鎖から解放されてみたくはないだろうか。


 本書でそんな邪な反抗心を発揮するのは、フランク・ブラウンである。
 彼がその「着想」を得たのは、法律顧問官ゴントラム氏の屋敷で行われた宴会でであった。たまたま、そうたまたま、氏が祖先から受け継いだアルラウネが、飾られていた壁から落ちてきたのだ。アルラウネ、別名マンドラゴラが。
 アルラウネは絞首刑に処された罪人が最期の瞬間に零す精液と、大地との結びつきから生まれるのだ。それは持ち主に幸運と、そしてついには不幸を運ぶ。
 フランク・ブラウンが抱いた「着想」とは、アルラウネを人間の手で人間の姿として生み出すことであった。縛り首にされる罪人の死の間際の精液を、大地の如き淫乱な娼婦の子宮に人工授精させるのだ。
 彼は伯父である医学博士ヤーコプ・テン・ブリンケンをけしかける。
あなたには可能性が授けられた――神を試みるという能力がですよ! もしも神、あなたの神が生きておられるならば、この傲慢な問いにたいして答えて下さるにちがいありません(傍点省略)(『アルラウネ・上』 p.82)

 神を試みる。フランクが自ら言っているように、それは傲慢な問いかけである。そして、その試みの行き着く先は。
 悪魔メフィストフェレスの手を取ったマーロウのファウスト、フォースタス博士は遂には彼の手先であったはずのメフィストフェレスに引き裂かれて死ぬ。アルラウネは、持ち主に幸運と、不幸をもたらす。
 人間の手で生み出された少女アルラウネは、それを生み出した博士、周囲の人間、そしてフランク・ブラウンの人生を変える。アルラウネに近づきすぎた人間は、彼女の手の上で踊り、おぼれ、死ぬ。それも彼女を愛しながら。

 フランクが問うた傲慢さに、果たして神は答えるのだろうか。神はまだ生きているのだろうか。
 神に対する反抗には破滅以外の結末は存在し得ないのか。
掟は善、あらゆる厳しい規則は善なるもの。そして、それらを創り給うた神も、ともに善の世界のものであります。しかし、無恥な手で、永遠の掟の鉄の結合に掴みかかろうとする者、それは悪魔の子でなくて何でありましょう。
乱暴な主人である彼に手をかす者は、邪悪な人間です。この助けによって、彼は己の高慢な意志の命ずるがままに――あらゆる自然に反して――創造を企てるかもしれぬ。彼の創造したものは四天に聳え立つ、とはいえ、たちまち崩れ去り、それを考え出した厚顔無恥な愚か者を瓦礫の下に埋めてしまう――
(『アルラウネ・下』 p.285)




Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星3つ:★★★☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『クラーベルト滑稽譚 麗しのメルジーナ』感想:★★☆☆☆

2011.11.20 Sun


noimage.gif


 Amazonには登録がないものの、bk1やその他のネット書店にはちゃんと情報があるのだが、上手く引っ張ってこれずにNO IMAGEな上にNO DATA状態に。


 本書は国書刊行会から出版された「ドイツ民衆本の世界」シリーズのⅠ。収録されている作品は、タイトルが示す通り「クラーベルト滑稽譚」と「麗しのメルジーナ」それと、翻訳者でもありこのシリーズの責任者でもある藤代幸一の解説「ドイツ民衆本への招待」である。
 後者の解説はマンドルーの『民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化』のドイツ版補講といった赴き。
 下層の民のために生まれた粗悪な商品だったはずの民衆本が、その廉価さ故に若かりしゲーテの娯楽になっていたというくだりや、民衆本が中世の姿を留めているとしてロマン派に愛好された話など面白い。
 とは言え、民衆本の題材が全て中世に準拠している訳ではなく、十八世紀に入ってからもなお新作も生まれていたのだが。


 「クラーベルト滑稽譚」の主人公ハンス・クラーベルトは、別名「マルクのオイレンシュピーゲル」と呼ばれている。マルクとはマルク・ブランデンブルクのことであり、地名である。
 良くも悪くも奇異を珍重したヨーロッパの宮廷では、「普通とは違う人」を道化として眺めて、もしくは何かしらの芸をさせて楽しむ習慣があり、件のクラーベルトもその一人である。が、彼は身体的な差異や精神的な遅れにより道化とされたのではなく、一種の職業として道化を演じた人物である。
 彼を採用したのはブランデンブルク選帝侯であり、また彼が暮らした小さな都市トレッピンとその隣のツォッセンを治める伯も彼を愛でた。
 本書に収められているのは、彼が行ったとされる悪ふざけとその顛末を小話の形で記し、その末尾に教訓を書き加えた物語集である。全三十五話。
 職業的道化であるクラーベルトは色々と問題を起こすものの最後には丸く収め、市民として極々普通に人生を全うする。そこには笑いによって苛酷な現実を克服するような強靱さは見られず、いかにも小市民的である。
 ちなみにこのクラーベルト、実在した人物だそうだ。


Theme:本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
Category:星2つ:★★☆☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『ファウスト博士 付人形芝居ファウスト』感想:★★★☆☆

2011.10.27 Thu

ドイツ民衆本の世界 3

松浦 純 国書刊行会 1988-11
売り上げランキング : 742386
by ヨメレバ



 ファウスト博士は十六世紀に実在した人物である。彼が具体的に誰なのかは未だに判然としないのだが、その足取りは公的文書に残されている。以下、解説から。
足跡を辿ってみれば、ほぼ確実なところでは、一五〇六年ゲルンハウゼン、おなじころヴェルツブルク、一五〇七年クロイツナハ、一五一三年エルフルト、一五二〇年バンベルク、一五二八年インゴルシュタット、一五三二年ニュルンデルク。(p.302、解説)

 彼は街から街へと放浪する、流浪の人。それは職業と土地に結びつけられていた当時の「普通」の人間とは違う、特別な存在であった。
つけられた称号はインゴルシュタットでは「占師」、ニュルンベルクでは「男色家、妖術師」。(p.302、解説)

 良くも悪くも人とは異なるファウストなる人物は、人々の尊敬と蔑視を同時に受けながら、この時代を生きて死んだようだ。その生き様と共に死に様もまた特別だったようで、故に彼は物語・伝説となり、限りある命しか持たぬ一人の人間から、語られ伝えられる空想の存在へと変貌することとなった。


 ドイツの民衆の間ですっかり人気となったファウストの物語は、過去の他の話をも取り込んで人々の手で大きく育てられていく。
 口で語られるだけであったファウストの物語は、いつからか文字の形を取り始める。その書物たちの中で最も広く流布し、ドイツ語から他の言語に翻訳されフランス・イギリス他にまで広がる礎となったのが、今回の『ファウスト博士 付人形芝居ファウスト』収録の「実伝 ヨーハン・ファウスト博士」である。時は1587年。
 実伝と銘打ってはあるが、その実体は様々な言い伝えのごった煮に過ぎない。欲張りに面白可笑しい話を盛り込んだために、あちこちで小さな破綻が起こってしまっているが、まぁそんな節操の無さもまた魅力である。

 長くなったので、ここで折りたたみ。



Theme:本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
Category:星3つ:★★★☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『植物(書物の王国・5)』感想:★★☆☆☆

2011.09.30 Fri
植物 (書物の王国)

オスカー ワイルド 国書刊行会 1998-05
売り上げランキング : 749452
by ヨメレバ


 各巻異なるテーマを掲げ、それに合う物語、エッセイ、評論などを収録するシリーズ「書物の王国」の第5巻『植物』が今回。
 同シリーズの内、私が既読な『吸血鬼』『人形』に比べると収録されている物語数が少ない印象。個人的にはエッセイや評論ではなく、物語を期待して読んでいるので、感想はどうしても辛めに。
 まぁ、面白ければ何でも良いんですけれどね。


 収録作品は以下。編纂責任者は須永朝彦。

・「花の教」 クリスティナ・ロセッティ、上田敏・訳
・「植物の眠り」 ファーブル、日高敏隆・林瑞枝・訳
・「望樹記」 幸田露伴
・「毒よりの脱出」 一戸良行
・「新曼陀羅華綺譚」 須永朝彦
・「疾める薔薇」 ブレイク、日夏耿之介・訳
・「ナイチンゲールと薔薇」 ワイルド、矢川澄子・訳
・「神秘のばら」 ピエール・ルイス、釜山健・訳
・「花魄」 袁枚『子不語』、前野直彬・訳
・「藤の奇特」 井原西鶴『西鶴諸国ばなし』、須永朝彦・訳
・「菊」 内田百聞
・「花のこころ」 小松左京
・「白いダリア」 ラスカー・シューラー、川村二郎・訳
・「相思」 王維、須永朝彦・訳
・「かざしの姫君」 「御伽草紙」、須永朝彦・訳
・「柳の精」 『裏見寒話』、須永朝彦・訳
・「清貧譚」 太宰治
・「牡丹と耐冬」 蒲松齢『聊斎志異』、増田渉・訳
・「晶子牡丹園」 興謝野晶子
・「零人」 大坪砂男
・「人間華」 山田風太郎
・「毒の園」 ソログープ、昇曙夢・訳
・「柏槇の話」 グリム兄弟、金田鬼一・訳
・「受難華」 ベッケル、高橋正武・訳
・「乳母ざくら」 小泉八雲、上田和夫・訳
・「百合」 川端康成
・「風景」 山村暮鳥
・「玉川の草」 泉鏡花
・「庭樹」 鏑木清方
・「サフラン」 森鴎外
・「銀杏とGinkgo」 木下杢太郎
・「植物の閨房哲学」 荒俣宏
・「巨樹の翁の話」 南方熊楠
・「蓮喰いびと」 多田智満子

 全部で34作品。
 例によって長くなるので、以下は折りたたみ。



Theme:読んだ本。 | Genre:本・雑誌 |
Category:星2つ:★★☆☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『人形(書物の王国・7)』感想:★★★★☆

2011.09.04 Sun
人形 (書物の王国)
人形 (書物の王国)種村 季弘 エルンスト・テーオドア・アマデーウス

国書刊行会 1997-12
売り上げランキング : 500707


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


  テーマに沿った小説、詩、エッセイを集めるシリーズ「書物の王国」から、今回は『人形』を。
 前に読んだ『吸血鬼』は今も昔も人気のテーマだけれど、それに比べて人形はどうかなーと思っていたのだが、不要な心配だったようだ。


 責任編集者は服部正。収録作品は以下。

・「人形幻想」 種村季弘
・「蒲団の国」 スティーヴンソン、水谷まさる・訳
・「クルミ割り人形とネズミの王様」 ホフマン、前川道介・訳
・「しっかり者の錫の兵隊」 アンデルセン、大畑末吉・訳
・「マルスリーヌ」 レニエ、志村信英・訳
・「彫像の呪い」 ハーディ、高畠文夫・訳
・「代書人」 ゲルドロード、酒井三喜・訳
・「女王人形」 フエンテス、木村榮一・訳
・「人形つくり」 北原白秋
・「泥人形の兄」 紀昀『閲微草堂筆記』、武田武彦・訳
・「人形奇聞」 高古堂主人『新説百物語』、須永朝彦・訳
・「承久二年五月の夢」 明恵上人『明恵上人夢日記』、服部正・訳
・「人形つかい」 日影丈吉
・「雛がたり」 泉鏡花
・「人形」 江戸川乱歩
・「ものいう人形」 柴田宵曲
・「マリオネット劇場について」 クライスト、佐藤恵三・訳
・「悪魔の創造」 澁澤龍彦

 全部で19作品収録。
 感想は続きを読む以下で。


Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『吸血鬼(書物の王国・12)』感想:★★★★☆

2011.07.04 Mon
吸血鬼 (書物の王国)
吸血鬼 (書物の王国)エドガー ポオ 須永 朝彦

国書刊行会 1998-11
売り上げランキング : 339580


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 この「書物の王国」は一冊ごとのテーマに沿う、様々な作家の手による作品を集めたシリーズ。収録する作品は西洋東洋を問わず、詩や評論までもが対象……らしい。
 本書収録の作品は以下。

・「コリントの花嫁」 ゲーテ、竹山道雄・訳
・「断章」 バイロン、南條竹則・訳
・「吸血鬼」 ポリドリ、今本渉・訳
・「ドラキュラの客」 ストーカー、桂千穂・訳
・「ベレニス」 ポオ、大岡昇平・訳
・「月のさやけき夜」 ウェルマン、紀田順一郎・訳
・「仮面舞踏会」 ダーレス、森広雅子・訳
・「吸血鬼は夜恋をする」 ウィリアム・テン、伊藤典夫・訳
・「血の末裔」 マチスン、仁賀克雄・訳
・「クラリモンド」 ゴーティエ、芥川龍之介・訳
・「ラテン系ユダヤ人」 アポリネール、鈴木豊・訳
・「刺絡」 シュトローブル、森鴎外・訳
・「夜ごとの調べ」 ステンボック伯爵、加藤幹也・佐藤弓生・訳
・「死者の訪ひ」 スロヴァキア古謡、須永朝彦・訳
・「吸血鬼の茶屋」 紀昀、前野直彬・訳
・「紫女」 井原西鶴、須永朝彦・訳
・「春の歌」 円地文子
・「吸血鬼」 日影丈吉
・「支那の吸血鬼」 山尾悠子
・「樅の木の下で」 須永朝彦
・「室内楽」 寺山修司
・「吸血鬼幻想」 種村季弘
・「狼の血と伯爵のコウモリ」 長山靖生
・「アイリッシュ・ヴァンパイア」 下楠昌哉
・「夜の末裔たち」 菊地秀行

 責任編者は須永朝彦。


 たっぷり詰まって26作品。「吸血鬼幻想」以下の4作品は評論・エッセー。
 個人的には物語と詩が収録されていると思っていたので、ちょっと後半はガッカリ。物語が読みたくて買ったもので。
 ちなみに本書に使われている紙はかなり厚め。けれど2段組みなので、本自体はそう分厚くもない。
 以下、個人的感想。



Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |