『吸血鬼イメージの深層心理学 ひとつの夢の分析』感想:★★★★☆
2013.09.26 Thu
吸血鬼イメージの深層心理学: ひとつの夢の分析 | ||||
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作者本人が末尾で言ってしまっているが、なんとも対象読者を絞る本である。帯に短し襷に長しと言うか、紐とテープの狭間的な中途半端さ言うか。
タイトルである『吸血鬼イメージの深層心理学』の「深層心理学」部分に惹かれた人には吸血鬼話に付き合う覚悟が、「吸血鬼イメージ」部分に惹かれた人間には心理学の説明と遭遇する覚悟が必要となっております。
ちなみに私は、後者のグループでございます。
そんな後者の方のために言っておくと、吸血鬼イメージの変遷に興味があり既に何冊か読んでいるのならば、取り立てて目新しい話題はない。新しい本だけあって、対象となる小説・漫画・映画が最近の物まで含んでいるのは利点だが、まぁその程度である。
モンタギュー・サマーズ原著と言いながらその実、日夏耿之介がメイン執筆者と化している『吸血妖魅考』、みなさまご存知、種村季弘『吸血鬼幻想』、作者の論考よりも引用にこそ価値が光る『ヴァンパイアと屍体 死と埋葬のフォークロア』、これら三冊をまだ読んでいないのならば、本書を読む時間をこれらの捜索に充てた方が断然良い。
とは言えど、対照実験と再現性に拘泥する私にとっては、その二つにそれほど重きをおかない心理学の話はなかなかに興味深かった。
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