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『十蘭錬金術』感想:★★★☆☆

2012.06.24 Sun


十蘭錬金術 (河出文庫)

久生 十蘭 河出書房新社 2012-06-05
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 河出文庫から1年に数冊出ている久生十蘭の短編集のうち、今の所最も新しいのが本書。こちらは新字新仮名。
 時折()の中で行われる補足じみたものは、河出文庫から出すにあたって誰かが加えたものなのかどうかが分からない。
 特に断り書きがないところを見ると元からあったもののように思えるが、けれど、こんな補足を作者がするものだろうか。
 国書刊行会からも久生十蘭の全集が現在刊行途中だが、こちらは旧字旧仮名のままらしい。


 本書に収録されている作品は以下。
・「彼を殺したが……」
・「犂氏の友情」
・「勝負」
・「プランス事件」
・「悪の花束」
・「海と人間の戦い」
・「南極記」
・「爆風」
・公用方秘録二件
 「犬 (法朗西御使節モーズ候一件)」
 「鷲 (唐太モイガ御番屋一件)」
・「不滅の花」

 全ては実際に起った事件を題材にしたもの。それ故に「錬金術」とのタイトルが付いているようだ。
 感想は折りたたみ。




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『さかしま』感想:★★★★☆

2012.05.11 Fri


J.K. ユイスマンス 河出書房新社 2002-06
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by ヨメレバ


 さかしま、原題は"A REBOURS"、見ての通り英単語ならばreverseが相当するのだろう。
 何がどうリバースなのかと言えば、主人公であるデ・ゼッサントの理想が、である。


 貴族の末裔である彼、デ・ゼッサントは、自由に使える富を有する恵まれた人間であった。
 成人を迎えた彼は、自分と同じく古くからの貴族と付き合ってはその時代遅れの度合いに失望し、今度は自分と良く似た環境の青年と交流してはその愚鈍さに幻滅し、文学者と語らっては彼らの売り上げ主義に不愉快になり、ブルジョアと交わってはその厚顔ぶりに匙を投げた。次には女に走ってみたものの、その快楽にも飽きが来た。
 それどころか、こんなくだらない生活がデ・ゼッサントの健康を害し始めたのだった。

 他人に自分と同等の感情を見いだすことに限界を感じた彼は、パリを離れ小さな一軒家に引き籠もり、一人だけの「理想の世界」を作り上げることを決意する。
 壁紙の色や質感に拘り、部屋を引き立てる置物代わりに亀を購入してはその背を宝石で飾らせ、好みの絵を飾ってはそれらがもたらす感動や空想に一人身を任せる。本棚に己の趣味の書物だけを並べ、またその一冊一冊を特別に仕立て上げさせる。
 たった一人の、誰にも邪魔されない、理想の世界。それは他者にはたった一軒の田舎の家に過ぎないが、デ・ゼッサントにとっては己の空想を自由に羽ばたかせることの出来る果ての無い空間だったのだ。
 だがそんな幸福なはずの生活にも終わりが訪れる。その終止符を打つのは、この生活を始める切っ掛けとなったのと同じく……。


 以下、ネタバレ気味。
 



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Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『ロシア怪談集』感想:★★★☆☆

2011.07.11 Mon
ロシア怪談集 (河出文庫)
ロシア怪談集 (河出文庫)沼野 充義

河出書房新社 1990-05
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 『東欧怪談集』と同じく、編集は沼野充義。『東欧怪談集』の感想はコチラ
 収録作品は以下13作品。

・「葬儀屋」 プーシキン 神西清・訳
・「思いがけない客」 ザゴスキン 西中村浩・訳
・「ヴィイ」 ゴーゴリ 小平武・訳
・「幽霊」 オドエフスキー 浦雅春・訳
・「吸血鬼の家族――ある男の回想より」 A・K・トルストイ 栗原成郎・訳
・「不思議な話」 ツルゲーネフ 相沢直樹・訳
・「ボボーク――ある人物の手記」 ドストエフスキー 川端香男里・訳
・「黒衣の僧」 チェーホフ 池田健太郎・訳
・「光と影」 ソログープ 貝沢哉・訳
・「防衛――クリスマスの物語」 ブリューソフ 草鹿外吉・訳
・「魔のレコード」 グリーン 沼野充義・訳
・「ベネジクトフ――あるいは、わが人生における記憶すべき出来事(植物学者Xによって書かれたロマンティックな中編小説)」 チャヤーノフ 沼野恭子・訳
・「博物館を訪ねて」 ナボコフ 諫早勇一・訳


 『東欧怪談集』とは違い、好みの作品を見つけられなかった1冊。
 これは私がロシア語圏の小説を読むのがほぼ初めてで、人名表記などにストレスを感じてしまったのが大きな原因なのかもしれない。うーん。
 個人的感想は折りたたみ。


Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星3つ:★★★☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『東欧怪談集』感想:★★★★★

2011.06.19 Sun
東欧怪談集 (河出文庫)
東欧怪談集 (河出文庫)沼野 充義

河出書房新社 1995-01
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 読み終わったのはいつだよ、な感じの遅すぎる感想。
 河出の怪談集シリーズの例に漏れず、本書もまた怪談と言うよりも幻想小説の傾向が強い。
 ちなみに、「東欧」とはなんぞや? との問いに関しては、本書の編集をした沼野充義氏はあとがきで以下のように述べている。
僕にとってこの「東欧」とは、単なる地理的な概念でもなければ、政治的な色分けでもない。それはしいて言えば、文学的想像力のあり方に関わることなのだ。アジアに向き合ったときはヨーロッパ的な文化の強力な擁護者として立ち現れるものの、西欧に対してはどうしても「田舎くさい」非ヨーロッパ的な闖入者のように見えてしまい、西方的な洗練された形式と、東方的などろどろした混沌のあわいに、捉えどころのない姿を変幻自在に見せては、また深い裂け目の中に消えていく幻影のようなもの。(p.423)

 ヨーロッパを美化しすぎじゃないですか、と思わないでもないが、つまりは西欧とアジアの狭間ってところですかね。
 そんな訳で、ロシアからも1作品が収録されております。
 
 収録されているのは以下26作品。

・ポーランド
「『サラゴサ手稿』第五十三日 トラルバの騎士分団長の物語」 ヤン・ポトツキ 工藤幸雄・訳
「不思議通り」 フランチシェク・ミランドラ 長谷見一雄・訳
「シャモタ氏の恋人」 ステファン・グラビンスキ 沼野充義・訳
「笑うでぶ」 スワヴォーミル・ムロージェック 沼野充義・訳
「こぶ」 レシェク・コワコフスキ 沼野充義・訳 芝田文乃・訳
「蠅」 ヨネカワ・カズミ 坂倉千鶴・訳
・チェコ
「吸血鬼」 ヤン・ネルダ 石川達夫・訳
「ファウストの館」 アロイス・イラーセク 石川達夫・訳
「足あと」 カレル・チャペック 栗栖継・訳
「不吉なマドンナ」 イジー・カラーセク・ゼ・ルヴォヴィツ 石川達夫・訳
「生まれそこなった命」 エダ・クリセオヴァー 石川達夫・訳
・スロヴァキア
「出会い」 フランチシェク・シヴァントネル 長與進・訳
「静寂」 ヤーン・レンチョ 長與進・訳
「この世の終わり」 ヨゼフ・プシカーシ 木村英明・訳
・ハンガリー
「ドーディ」 カリンティ・フリジェシュ 岩崎悦子・訳
「蛙」 チャート・ゲーザ 岩崎悦子・訳
「骨と骨髄」 タマーシ・アーロン 岩崎悦子・訳
・ユダヤ
「ゴーレム伝説」 イツホク・レイブシュ・ペレツ 西成彦・訳
「バビロンの男」 イツホク・バシヴィス(アイザック・シンガー) 西成彦・訳
・セルビア
「象牙の女」 イヴォ・アンドリッチ 栗原成郎・訳
「『ハザール事典』 ルカレヴィチ、エフロシニア」 ミロラド・パヴィチ 工藤幸雄・訳
「見知らぬ人の鏡 『死者の百科事典』より」 ダニロ・キシェュ 栗原成郎・訳
・マケドニア
「吸血鬼」 ペトレ・M・アンドレエフスキ 中島由美・訳
・ルーマニア
「一万二千頭の牛」 ミルチャア・エリアーデ 直野敦・訳
「夢」 ジブ・I・ミハエスク 住谷春也・訳
・ロシア
「東スラヴ人の歌」 リュドミラ・ペトルシェフスカヤ 沼野恭子・訳

 目次では国別に書いてあるが、本文では「この作品からマケドニア」と言った記載は全くない。
 ポーランドの作品多いなーと思っていたら、気が付いたらチェコの後半にさしかかっていてビックリした記憶が。
 まぁ、作品の頭に載せられている著者略歴から気が付けって話ですが。

 ちなみに本書のウリは、パヴィチの「『ハザール事典』 ルカレヴィチ、エフロシニア」以外の全てを原語から直接訳したことなんだそうな。
 この本が出た1995年の時点では、東欧のようなマイナーな原語に於いては、一度英訳されたものから日本語に訳す重訳がまかり通っていたらしく、沼野充義氏は他の原語を介さずに直接日本語にすることに拘ったのだと「編者あとがき」で述べている。

 以下は、収録作品に対する私の感想。



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