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『原子の帝国』感想:★★★☆☆

2013.12.26 Thu


原子の帝国 (創元SF文庫)

A.E. ヴァン・ヴォークト
東京創元社 1966
売り上げランキング : 88128
by ヨメレバ



 表題作「原子の帝国」に加えて、「見えざる攻防」を収録。

 「原子の帝国」、主人公となるのはクレイン。
 舞台は人類が太陽系の各惑星にまで生息域を広げた遠未来。だが、原子力その他の科学の原理は忘れられてしまっていた。
 クレインはリン帝国の皇帝の息子夫婦の子として生まれたが、しかし、母親の不注意故にミュータントとしてこの世に生を受けることとなった。
 生まれた彼を即刻抹殺しようとする皇帝一族の意向を覆すべく、奮闘したのは神殿科学者のジョクイン。
 ジョクインはミュータント、神の子、に普通の教育を施せばどうなるのか試してみたかったのだ。ミュータントは仲間から迫害されるが故なのか、どれも短命でまともな大人には育たたないのが通例であったから。
 彼の命がけの抗議により生きることを許可されたクレインは、ジョクインの教育の元に成長し、ジョクインや皇帝をも驚かすほどに利発な青年へと変貌を遂げつつあった。
 リン帝国に脅威が忍び寄る中、望まれぬ存在であったクレインは、帝国の存亡のために動き出す。


 「見えざる攻防」で主人公となるのは、マイクル・スレード。
 彼はある日、交通事故に遭った。額に負った大きな切り傷の下から見付かったのは、第三の目。
 スレードは長らく、己の額になにやら柔らかい部分があることを知ってはいたが、それが「目」であることを事故によって初めて知ったのだ。
 三ツ目の夫に驚愕したスレード夫人は、皮膚移植により三つ目の目を隠すことを願うが、スレード本人は新たな目の視力矯正を試みることを決意する。
 この目の存在により妻や今までの人間関係を失いつつあるスレードは、その一方で三つ目の目により新たな次元の地球を見いだしつつあった。
 その次元の地球では、他人の血を啜る人間が跋扈していた。しかもスレードは、その世界を一変させる鍵を握っていると言われ……。


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『ブラインドサイト』感想:★★★★★

2013.12.17 Tue

ブラインドサイト<上> (創元SF文庫)ブラインドサイト<下> (創元SF文庫)


 我々人間は、果たして「最適解」なのか?
 客観的なる意見など持ちようがない。そういう風に我々は作られてはいないのだ。
 私の見る世界は、どこまでも私本位なものである。私が見たいものしか、私が予測し得るものしか私は見ることが出来ない。
 ブラインドサイト現象もその一つだ。
 視覚野は見ているのに、脳は見ていない状態を指す。目という入力端子から確かに信号は送られているのだが、しかし、脳はそれを認識出来ない。見えているのに、見えないのだ。

脳は生存エンジンであって、真実発見器ではない。自己欺瞞が適応性を促進するなら、脳は嘘をつく。不適合なものを――知覚しなくなる。真実はどうでもいい。適応性だけ。きみたちは存在するがままの世界を体験しない。経験するのは推測に基づくシミュレーションだけ。ショートカット。嘘。種全体が最初から失認症。(下巻 p.140)



 私にはこんな経験がある。
 小学生だったある夏の日、私は学習机に向かって勉強をしていた。すると消しゴムがないのだ。確かに先ほどまではあったはずなのに。
 消しゴムが勝手に動くはずはなく、そして私もまた机から離れてはいない。ならば近くにあるはずだと探し回ったが、ない。
 途方に暮れる中でふと気が付いた。左の手のひらがなんだか暑い。汗をかいている。
 見れば私の左手は握られていた。一体いつから握っていたのか分からぬままに手を開けば、そこにはあれほど探し回った消しゴムが。
 探す過程で何度か視野に左手は入ったはずなのに、それが不自然に握られていることに気が付かなかった。握り締めた手の中に何かがあることを、一度も意識しなかった。
 この経験はなかなかに強烈であって、今でも私は探し物をする際にはまず手を広げてチェックしてしまう。

 他にも、お団子にした髪の毛に鉛筆を差し込んだのを忘れて探し回ったこともある。何故か右手に持った教科書を必死に探したこともある。
 私ほどではなくとも、誰にだってこの手の失態はあるのではないだろうか。
 情報は入力されているにも関わらず、意識されない。この欠陥。
 果たして人間は、本当に優秀なのであろうか。生物として「最適」な進化を遂げた存在なのであろうか?


 人間の設計はただの自然の気まぐれであり、他にもっと素晴らしい解答があるのではないか。知能にはもっと別の姿があるのではないか。
 本書はそう問いかける。
 本書は決して読みやすくはない。登場人物もことごとく人間から逸脱した存在である。
 読む人を選ぶのは確かだが、しかし、一度チャレンジしてみる価値はあると私は思う。


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『殺人者の空(山野浩一傑作選・Ⅱ)』感想:★★☆☆☆

2012.03.03 Sat


殺人者の空 (山野浩一傑作選Ⅱ) (創元SF文庫)

山野 浩一 東京創元社 2011-10-28
売り上げランキング : 296530
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 二分冊で刊行された山野浩一傑作選の二冊目ながら、どうしてそうなった……としか言いようのない一冊。
 Ⅰはまだ作品群が好きになれない理由が比較的明確だったのに、今回はもうどうしていいやら。

 とりあえず収録作一覧。
 末尾に※印が付いているのは、単行本初収録作品。著者のあとがきを参照している。
・「メシメリ街道」
・「解放時間」(※)
・「闇に星々」
・「Tと失踪者たち」
・「φ(ファイ)」(※)
・「森の人々」(※)
・「殺人者の空」
・「内宇宙の銀河」(※)
・「ザ・クライム(The Crime)」


 物語が開始され、それが変速するまでは「おっ!」と感動の声を上げるほどに面白いのに、結末に至ると「そっかー」くらいしかもはや私に言葉が残されていない。
 展開が私の好みじゃないとか、そんな次元ではなく、もう本当に何でこうなった。



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『鳥はいまどこを飛ぶか(山野浩一傑作選・Ⅰ)』感想:★★☆☆☆

2012.02.20 Mon


鳥はいまどこを飛ぶか (山野浩一傑作選Ⅰ) (創元SF文庫)

山野 浩一 東京創元社 2011-10-28
売り上げランキング : 156316
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 二分冊で刊行された山野浩一傑作選の一冊目。
 著者あとがきによると、Ⅰは「失踪=不在」との一貫したテーマで、Ⅱには単行本未収録の4作品を含む変化に富んだ作品が収録されているんだそうな。

 「失踪=不在」をテーマとするⅠの収録作は以下10作。
・「鳥はいまどこを飛ぶか」
・「消えた街」
・「赤い貨物列車」
・「X電車で行こう」
・「マインド・ウインド」
・「城」
・「カルブ爆撃隊」
・「首狩り」
・「虹の彼女」
・「霧の中の人々」


 感想は……、正直「ツマラン」の一言に尽きる。
 何がつまらないかと言えば、基本的にどれも同じフォーマットに沿っているように思え、しかもその形式が私は好きではないからだ。



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『マインド・イーター[完全版]』感想:★★★★★

2011.11.27 Sun

マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫)

水見 稜 東京創元社 2011-11-19
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 「日本SFが成し遂げた最高の達成」との帯に踊っていた煽り文句は伊達でも酔狂でもなかった。
 本書は1982年から84年にかけて発表された水見稜の、「マインド・イーター(以下M・E)」に纏わる連作を全て収めた1冊。

 収録作は以下8作品。
・「野生の夢」
・「サック・フル・オブ・ドリームス」
・「夢の浅瀬」
・「おまえのしるし」
・「緑の記録」
・「憎悪の谷」(初出時のタイトルは「スクリーム」)
・「リトル・ジェニー」
・「迷宮」

 「サック・フル・オブ・ドリームス」と「夢の浅瀬」は、過去1984年に発行されたハヤカワ文庫の『マインド・イーター』には収録されなかった。
 今回この2作品を収録し、これをもって「完全版」とのこと。ちなみにハヤカワ文庫でこれらの作品が排除されたのは、単にページ数の問題だったようだ。
 しかし個人的には「野生の夢」の直ぐ後が「おまえのしるし」だなんて、情報過多で破裂してしまいそうな並びに思えてならない。




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『結晶世界』感想:★★★★☆

2011.10.13 Thu
結晶世界 (創元SF文庫)

J・G・バラード 東京創元社 1969-01-10
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by ヨメレバ


 頁を繰ってびっくり、文字小さい! 印刷の濃さも一定じゃない。初版が1969年とは言え、ちょっと驚いた。

「先生、気の小さい乗客がたが気づいていないことは、あなたの病院の外の世界だって、ひとまわり大きな癩病院にすぎんということなんですよ」(p.15)


 かつて関係を持っていた人妻スザンヌから手紙を受け取ったサンダーズは、一ヶ月の休暇を取りカメルーン共和国を訪れた。目的地は彼女とその夫がいると思われるモント・ロイアル。
 けれど赤道直下であるはずのカメルーンでは、同じ太陽の下にあるはずの街は光を失い陰鬱な雰囲気を漂わせ、ただ森の木々だけが生気に溢れていた。
 港町で足止めを喰らい続けるサンダーズは、同じホテルに宿泊する記者ルイーズと共に、川を利用してモント・ロイアルを目指す。だがその途中でサンダーズは、怪しい生気に充ち満ちた森へと足を踏み入れることとなる。そこで彼を待っていたのは、結晶化しつつある森であった。その勢力は広がり続けており、しかもその現象に遭遇しているのはカメルーンだけではなかった。

 尾を引いて輝くエコー彗星。時間を超越して生きるウイルス。サンダーズの専門である癩病も時間を反映させる存在だ。煌めく結晶化した生物。春分の日。一日が昼と夜に二分される日。
 黒の僧衣を纏う神父バルザス。医師であるサンダーズは白。白いスーツ姿のベントレス。黒い革の胴着のソーレンセン。夜を愛するスザンヌ、白いワンピース姿のルイーズ。
 主人公サンダーズは、進行する結晶化現象を食い止めるなどの英雄的行為とはほど遠い人物である。彼は輝く森と生物と遭遇し、己の内なる欲望と対面するだけだ。彼はひたすら自分のためだけに生きる。
 森の中で繰り広げられる、一人の女を巡るベントレスとソーレンセンの争い。サンダーズにとってのスザンヌとルイーズ、それぞれの重み。
 陳腐な恋愛模様など知らぬ結晶化現象は、彼らとは違う次元でただただ進行していく。人間同士の対立も、その存在の中では強い光に撹乱され、ただ潮解するのみ。
 歯車を踏み外した世界は止まること無く転がり続けていく。けれども、その中にはまだ結晶のプリズムに魅入られていない、今まで通りの人間もまた存在しているのである。


 結晶化した生物が放つ幾重もの光。変わりゆく世界で、サンダーズは内なる自分の願望の声を聞き、健全なるルイーズは変わらずに以前と同じ日常に立ち続ける。
 著者バラードが執拗なまでに描き出した美しい結晶世界に取り込まれるか、その世界を認識することも出来ずに今までと同じ世界に留まるか。それは読者の素質次第、なのだろう。



 以下、ネタバレ気味。


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