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『ファウスト 第一部・第二部(集英社文庫ヘリテージシリーズ)』感想:★★★★★

2012.05.30 Wed


ゲーテ 集英社 2004-05-20
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by ヨメレバ


 中公文庫の手塚富雄翻訳の第一部に続いて、池内紀翻訳の第一部・第二部読了。こちらは第二部もまだ流通に乗っているので、新本で買える。
 韻文で書かれたゲーテの作品『ファウスト』を、日本語の響きに配慮して翻訳した手塚富雄訳に対して、池内紀訳は分かりやすさを重視した散文形式となっている。
 分かりやすければ良いかと問われれば、必ずしもそんなことはないと答えるが、キリスト以前の神話が乱舞する第二部を韻文で読むと意味不明に陥りそうなので、最初に読んだのが散文だったのは幸運かもしれない。
 ただ第一部の翻訳を比べてみれば、個人的には手塚訳に軍配を上げる。池内訳では場面場面の語り口の違いがよく分からない。



 知識の探求に明け暮れ、結果、大先生と慕われるようにまでになったファウストだが、当の本人は全く満足などしてはいなかった。

この世をもっとも奥の奥で動かしているものは何か、それが知りたい。(p.32, 第一部)

 全てを知りたいとの大きすぎる野望と、それを果たすことの出来ない己の限界とに疲れたファウストの前に、悪魔メフィストフェレスが現れる。
 メフィストフェレスはファウストをサイコロとして、神と賭けをしたのだった。ファウストの魂を手に入れた方が勝ちだ。
 そんなことなど当然知らぬファウストは、メフィストフェレスと契約を交わす。
 そして知識の探求など投げ捨てて、人間に備わったもう一つの能力、愛、を欲したファウストが出会うこととなるのは、マルガレーテ、愛称グレートヒェン。
 そうして彼女の悲劇が幕を開ける。
そのわたしが、いまは罪を犯している。でも――そうなるまでの道筋は、とてもよかった、うれしかった。(p.228, 第一部)


すべて生じてくるものは、当然のことながら滅びていく。だからして生じてこないのが、なおのこといい。(p.79, 第一部)


 さりとて、生じてしまったものを「なかったこと」にすることは出来ない。それはメフィストフェレスにも覆すことは不可能だ。
 幸福だった娘グレートヒェンを悲運に突き落としたファウストは、それでも生きていかなければならないのだ。



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