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『血のアラベスク 吸血鬼読本』感想:★★☆☆☆

2012.01.29 Sun


血のアラベスク―吸血鬼読本

須永 朝彦 ペヨトル工房 1993-04
売り上げランキング : 755201
by ヨメレバ


 例によって絶版もしくは重版未定な1冊。Amazonに表紙イメージすらない。
 私が読んだのは1993年ペヨトル工房から再版された物だが、オリジナルは1978年に新書館から出された『血のアラベスク ―吸血鬼読本(For ladies)』。ペヨトル工房のは新書館の増補新版になるんだそうで。
 
 内容は、読みやすい「です・ます」調で書かれた吸血鬼入門書。タイトルに偽りは一切ございません。
 素朴な民族信仰の中から発した「吸血鬼」の存在が、ハプスブルク家が東欧の一部をも影響圏に収めたことから西欧にもたらされ一大センセーションを巻き起こした末に、完全なるファンタジーに堕すまでの流れを平易に説明してくれている。
 更には、吸血鬼モノの小説・映画の説明、また吸血鬼に影響を与えた他の存在までをもカバー。情報が古いのはまぁ、1993年発行なので仕方がないところ。


 既に、慣れない中で歯を食いしばって『吸血鬼幻想』なんかの関連本を読み終わった身には「今更……」感が半端無かったものの、これからチャレンジする方の最初の1冊にはなかなか良いんじゃないだろうか。新本で購入不可とは言え、それなりに数は出回っているようだし。



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『女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち』感想:★★★★★

2011.11.24 Thu

女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち

バーバラ ドゥーデン 藤原書店 2001-11
売り上げランキング : 788076
by ヨメレバ


 皮膚とは何かと問われれば、それは外界と「私」とを分け隔てる決定的な境界線であり絶対的な防護壁だ、と私は答える。
 なんらかの障害物により外界から隔てられた内世界の確保は生物の絶対的条件の一つであり、さらにその内世界に一定の恒常性(ホメオスタシス)を有し、自力でDNAを複製する能力を有するものを「生物」と呼ぶことになっている。
 DNAの複製能力が生物に必須の条件であるかについては、私は正直疑問である。この定義だとウイルスは生物とは呼べないこととなるが、DNAないしRNAを利用する以上、生物の枠組みに入れてやりたい気もする。そもそもこの、DNAと遺伝の関連が発見されたのはまだ比較的近年のことでもあるし、定義が確定しないのも当然かと思われる。
 だが外界と己の境界線(人間にとっては皮膚)の保持に関しては、絶対的で恒常的な、現代だけではなくもっと昔から変わらぬ当然の認識だと、私は本書を読むまで信じていたのだ。何の確証もないのに。いや、確証など必要としないほどに自明のことだと思っていたのだ。
 私にとって皮膚は、「恐ろしい」外界から私の中身を守ってくれる素晴らしい守護者であり、「私」という物理的な存在の揺らぐ余地のない外枠でもあった。
 皮膚が破れて中身がこぼれ落ちることが恐怖ならば、皮膚が開かれ外部から何かが侵入するのもまた恐怖である。
 だが一体いつから外部は「恐ろしい」存在になったのだろうか。そもそもそれは何故、恐ろしいのだろうか。
 私が想像するのは、空気中に漂う目に見えないウイルスや細菌たちである。だが彼らが発見されたのはそう過去のことではなく、それ以前は空気中には彼らは「存在しなかった」のである。認識されない存在は、存在しないのと同義なのだから。


 本書でドゥーデンが取り上げたのは、サブタイトルが示すように十八世紀をドイツはアイゼナッハとゴータで生きた内科医であるシュトルヒが記した、彼が後輩の内科医のためにと出版した書物である。シュトルヒは彼の住まう街とその周辺の患者を診たが、本書の対象となったのは女性患者たちの治療である。
 未だウイルスも細菌も発見されていない当時に於いては、外部は恐ろしい存在ではなく、皮膚もまた絶対的な守護者ではない。それどころか、皮膚は外部と「私」を隔てる障害物ですらないのである。



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『クラーベルト滑稽譚 麗しのメルジーナ』感想:★★☆☆☆

2011.11.20 Sun


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 Amazonには登録がないものの、bk1やその他のネット書店にはちゃんと情報があるのだが、上手く引っ張ってこれずにNO IMAGEな上にNO DATA状態に。


 本書は国書刊行会から出版された「ドイツ民衆本の世界」シリーズのⅠ。収録されている作品は、タイトルが示す通り「クラーベルト滑稽譚」と「麗しのメルジーナ」それと、翻訳者でもありこのシリーズの責任者でもある藤代幸一の解説「ドイツ民衆本への招待」である。
 後者の解説はマンドルーの『民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化』のドイツ版補講といった赴き。
 下層の民のために生まれた粗悪な商品だったはずの民衆本が、その廉価さ故に若かりしゲーテの娯楽になっていたというくだりや、民衆本が中世の姿を留めているとしてロマン派に愛好された話など面白い。
 とは言え、民衆本の題材が全て中世に準拠している訳ではなく、十八世紀に入ってからもなお新作も生まれていたのだが。


 「クラーベルト滑稽譚」の主人公ハンス・クラーベルトは、別名「マルクのオイレンシュピーゲル」と呼ばれている。マルクとはマルク・ブランデンブルクのことであり、地名である。
 良くも悪くも奇異を珍重したヨーロッパの宮廷では、「普通とは違う人」を道化として眺めて、もしくは何かしらの芸をさせて楽しむ習慣があり、件のクラーベルトもその一人である。が、彼は身体的な差異や精神的な遅れにより道化とされたのではなく、一種の職業として道化を演じた人物である。
 彼を採用したのはブランデンブルク選帝侯であり、また彼が暮らした小さな都市トレッピンとその隣のツォッセンを治める伯も彼を愛でた。
 本書に収められているのは、彼が行ったとされる悪ふざけとその顛末を小話の形で記し、その末尾に教訓を書き加えた物語集である。全三十五話。
 職業的道化であるクラーベルトは色々と問題を起こすものの最後には丸く収め、市民として極々普通に人生を全うする。そこには笑いによって苛酷な現実を克服するような強靱さは見られず、いかにも小市民的である。
 ちなみにこのクラーベルト、実在した人物だそうだ。


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『民衆バロックと郷土―南東アルプス文化史紀行』感想:★★★★☆

2011.11.03 Thu

民衆バロックと郷土―南東アルプス文化史紀行

L. クレッツェンバッハー 名古屋大学出版会 1988-10
売り上げランキング : 1340909
by ヨメレバ


 その生きている間からペテン師として、また同時に錬金術師として名高かったファウスト博士は、その有名さから死後、既に存在した物語たちと融合し、彼の地獄行き物語はドイツにおいて民衆間で人気となる。
 ファウストの物語は『実伝 ヨーハン・ファウスト博士』とのタイトルの本で他国にまで広まり、イギリスで『フォースタス博士』
との名で劇化された後、ドイツへと逆輸入され(マーロウの『フォースタス博士』以前もドイツで生き延びており、この逆輸入によりドイツ従来とイギリスからの輸入物が融合したとも言われる)、ファウスト博士はドイツの民衆間で生き続けた。
 ゲーテにより文学と化す前の素朴なファウスト人形劇は、1846年にカール・ジムロックによって編纂された『人形芝居 ヨハネス・ファウスト博士』が今も存在してはいるが、成立が後世に過ぎる。
 もう少し古いのはないの? あ、勿論、日本語で。と考えたところで思い出したのが、本書『民衆バロックと郷土―南東アルプス文化史紀行』なのでした。
 Amazonの注文履歴によると、どうも去年の夏に買ったようだ。頭1/3くらい読んだっきり、積んでいた。

 本書は民族学者クレッツェンバッハーが1960年前後に大学で講義用に使おうと書いた草稿を下敷きに書かれており、私のような分野外の人間にも比較的分かりやすく作られている。
 サブタイトルが示す通り、本書がカバーするのは南東アルプス、つまりは主にかつてのハプスブルク家の支配地域である。宗教革命の後、領主主導による反宗教革命が行われ、そしてついにはカトリックが勝利を収めた地域である。
 当初は上からの押しつけでしかなかった反宗教革命が民衆間に根付き(反宗教革命に耐えられなかった人々は他地域に逃げたのだろうが)、そして彼らの手により生み出された祈りや信心の結実が「民衆バロック」であり、それが本書の主題である。この地で生き続けたファウスト人形劇もまた、その一つである。



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『近世の文化と日常生活』感想:★★★★★

2011.09.10 Sat
近世の文化と日常生活 1 『家』とその住人ー16世紀から18世紀まで
近世の文化と日常生活 1 『家』とその住人ー16世紀から18世紀までR.v.デュルメン 佐藤正樹

鳥影社 1993-10-25
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 昔書いた感想文をサルベージ。
 これは6ヶ月くらいかけてダラダラ読んだ3巻組み。専門外の私が言っても何の説得力もないけれど、これは名著。個人的にはここ数年内でもかなりのヒット作。
 最初はあまりの目の滑りっぷりに「3巻まとめて一気に買っちゃったんですけど……、終わりが、終わりが見えない」と心が折れそうになったこともあったが、最後まで喰らいついて良かった。
 たまにこういうホームランにかち合うから、読書ってのは止められない。何の生産性もない趣味だってのにね。

  以下の3巻でワンセット。
近世の文化と日常生活 1 『家』とその住人――16世紀から18世紀まで
近世の文化と日常生活 2 村と都市――16世紀から18世紀まで
近世の文化と日常生活 3 宗教、魔術、啓蒙主義――16世紀から18世紀まで

近世の文化と日常生活 2―村と都市-16世紀から18世紀まで-  近世の文化と日常生活 3―宗教、魔術、啓蒙主義-16世紀から18世紀まで-


 ただこれ、判型がと言うか文字組がと言うかがイマイチだと思う。文章が縦に長くて目の移動距離がパない。絵なり図の挿入があるページは耐えられるが、何もないページは滑る滑る目が。


 なんて愚痴を言いつつ、続きは長いので折りたたみ。


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『阿呆物語』感想:★★★★★

2011.07.18 Mon
阿呆物語 上 (岩波文庫 赤 403-1)
阿呆物語 上 (岩波文庫 赤 403-1)グリンメルスハウゼン 望月 市恵

岩波書店 1953-10-05
売り上げランキング : 146289


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 腹を抱えて大爆笑して、そして後に笑った分だけ呻吟する羽目になる面白くて恐ろしい本。

 三十年戦争はドイツに多大な被害を与えた。
 ドイツ国民の1/3が死んだとも言われ、生き残った人々とて心は荒涼し、大地も荒れ果てた。そしてドイツは紛れもない二流国に落ちぶれ、それ以後フランスの不格好なフォロワーとして機能しない体を引き摺りながら生き続けることとなる。
 フランスの偽物・亜流が跋扈する惨状のドイツにあって、唯一そのオリジナル性が評価されていたのがこの『阿呆物語』なのである。

 主人公はジムプリチウス。ラテン語で「阿呆」との意味である。
 ジムプリチウスは純真で何も知らない阿呆者。そんな彼が三十年戦争に巻き込まれ、兵士として成り上がり、人間として落ちぶれ、そして立ち直り、己の生まれを知り、結婚し浮気し、また軍隊に雇われてロシアに行き、その後日本を含む世界一周の大旅行の末にドイツに戻り、隠者になり、巡礼としてイギリスを旅したと思ったら無人島に流れ着き、そしてそこで一人ぼっちで敬虔に暮らし続けることを決める。
 ……と言うのがストーリーだが、無垢な少年が成長の過程で悪に染まりつつも、最終的には敬虔な大人になるなんて在り来たりな成長物語ではない。
 一応はその形式を取ってはいるのだが、ジムプリチウスが最後に敬虔に暮らせていたのは彼が一人だったからであり、最後の最後に彼の住まう孤島に流れ着いたオランダ人たちから別れの土産に色々と物を貰ったからには、またぞろ堕落しかねないと私は思う。
 作者であるグリンメルスハウゼン(名前長いよ!)はそんな素直な性格をしていないだろうし、一度悟りを開けたらそれが一生持続するほど人間は善に満ちた生き物ではないだろう。現にジムプリチウスは作中で何度も失敗しているのだから。



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