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『水中都市・デンドロカカリヤ』感想:★★★★☆

2012.03.22 Thu


水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

安部 公房 新潮社 1973-07
売り上げランキング : 262044
by ヨメレバ


 現状への不満と、理不尽な変身と、けれども変身しても得られない満足と、そして戦争の臭いと貧しさの音が聞こえる短篇集。

 Amazonから引いてきた上記の画像は青竹色の背表紙の旧版のもの。現在出回っている背表紙が銀色の新装版の表紙は異なる。
 収録されている作品に変更はない。収録作品は以下の11作。

・「デンドロカカリア」
・「手」
・「飢えた皮膚」
・「詩人の生涯」
・「空中楼閣」
・「闖入者」
・「ノアの方舟」
・「プルートーのわな」
・「水中都市」
・「鉄砲屋」
・「イソップの裁判」


 感想は折りたたみ。



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Theme:読んだ本の紹介 | Genre:本・雑誌 |
Category:星4つ:★★★★☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『アルラウネ』感想:★★★☆☆

2011.12.19 Mon


世界幻想文学大系〈第27巻 A〉アルラウネ (1979年)
世界幻想文学大系〈第27巻 A〉アルラウネ (1979年)H.H.エーヴェルス 麻井倫具 平田達治

国書刊行会 1979-08
売り上げランキング : 504377


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 かの有名なドイツ生まれの悪魔メフィストフェレスは、海を渡った先のイギリスでマーロウの手を借りて嘆く。
君は、神の顏をみたわたし、天國の永遠の悅を味わつたわたしが、かうして無限の祝福を奪われて、幾千の地獄の苦痛を受けないと思ふのか。(『フォースタス博士』 p.19, クリストファー・マーロウ 松尾相・訳)

 フォースタス、即ちファウストの慰めもメフィストフェレスの心にまで届かない。彼にとって天国は、神は、この上なく素晴らしい存在なのである。
 そんなにも素晴らしい神とは何なのだろうか?

善なるものはこの世の掟、あらゆる法則と厳格な規律のすべては善いものです。これらの規則を創り、法律と掟を創り給うた偉大な神は善なる存在です。そして、それらのもろもろを尊敬し、己の信ずる善の神に忠実に従いながら、謙遜と忍耐によって己の道を往くのが善良な人間というもの。(『アルラウネ・上』 p.8)


 神とは、あらゆる法則と規律、掟の父親だとエーヴェルスは記す。そしてそれに従うのが「善良な」人間なのだと。
 善良。善。なんだかとても、押しつけがましくはないだろうか。善? 規律は善。本当に? 忠実に生きることだけが我々の生なのか。それは罪人の如く個々人の脚に付けられた鎖に過ぎないのではないのか。
 むくむくともたげるのは反抗心。神の手によって綺麗に創られた善なる掟とやらに逆らってみたくはないだろうか。足首に巻き付く鎖から解放されてみたくはないだろうか。


 本書でそんな邪な反抗心を発揮するのは、フランク・ブラウンである。
 彼がその「着想」を得たのは、法律顧問官ゴントラム氏の屋敷で行われた宴会でであった。たまたま、そうたまたま、氏が祖先から受け継いだアルラウネが、飾られていた壁から落ちてきたのだ。アルラウネ、別名マンドラゴラが。
 アルラウネは絞首刑に処された罪人が最期の瞬間に零す精液と、大地との結びつきから生まれるのだ。それは持ち主に幸運と、そしてついには不幸を運ぶ。
 フランク・ブラウンが抱いた「着想」とは、アルラウネを人間の手で人間の姿として生み出すことであった。縛り首にされる罪人の死の間際の精液を、大地の如き淫乱な娼婦の子宮に人工授精させるのだ。
 彼は伯父である医学博士ヤーコプ・テン・ブリンケンをけしかける。
あなたには可能性が授けられた――神を試みるという能力がですよ! もしも神、あなたの神が生きておられるならば、この傲慢な問いにたいして答えて下さるにちがいありません(傍点省略)(『アルラウネ・上』 p.82)

 神を試みる。フランクが自ら言っているように、それは傲慢な問いかけである。そして、その試みの行き着く先は。
 悪魔メフィストフェレスの手を取ったマーロウのファウスト、フォースタス博士は遂には彼の手先であったはずのメフィストフェレスに引き裂かれて死ぬ。アルラウネは、持ち主に幸運と、不幸をもたらす。
 人間の手で生み出された少女アルラウネは、それを生み出した博士、周囲の人間、そしてフランク・ブラウンの人生を変える。アルラウネに近づきすぎた人間は、彼女の手の上で踊り、おぼれ、死ぬ。それも彼女を愛しながら。

 フランクが問うた傲慢さに、果たして神は答えるのだろうか。神はまだ生きているのだろうか。
 神に対する反抗には破滅以外の結末は存在し得ないのか。
掟は善、あらゆる厳しい規則は善なるもの。そして、それらを創り給うた神も、ともに善の世界のものであります。しかし、無恥な手で、永遠の掟の鉄の結合に掴みかかろうとする者、それは悪魔の子でなくて何でありましょう。
乱暴な主人である彼に手をかす者は、邪悪な人間です。この助けによって、彼は己の高慢な意志の命ずるがままに――あらゆる自然に反して――創造を企てるかもしれぬ。彼の創造したものは四天に聳え立つ、とはいえ、たちまち崩れ去り、それを考え出した厚顔無恥な愚か者を瓦礫の下に埋めてしまう――
(『アルラウネ・下』 p.285)




Theme:読書感想 | Genre:本・雑誌 |
Category:星3つ:★★★☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

『植物(書物の王国・5)』感想:★★☆☆☆

2011.09.30 Fri
植物 (書物の王国)

オスカー ワイルド 国書刊行会 1998-05
売り上げランキング : 749452
by ヨメレバ


 各巻異なるテーマを掲げ、それに合う物語、エッセイ、評論などを収録するシリーズ「書物の王国」の第5巻『植物』が今回。
 同シリーズの内、私が既読な『吸血鬼』『人形』に比べると収録されている物語数が少ない印象。個人的にはエッセイや評論ではなく、物語を期待して読んでいるので、感想はどうしても辛めに。
 まぁ、面白ければ何でも良いんですけれどね。


 収録作品は以下。編纂責任者は須永朝彦。

・「花の教」 クリスティナ・ロセッティ、上田敏・訳
・「植物の眠り」 ファーブル、日高敏隆・林瑞枝・訳
・「望樹記」 幸田露伴
・「毒よりの脱出」 一戸良行
・「新曼陀羅華綺譚」 須永朝彦
・「疾める薔薇」 ブレイク、日夏耿之介・訳
・「ナイチンゲールと薔薇」 ワイルド、矢川澄子・訳
・「神秘のばら」 ピエール・ルイス、釜山健・訳
・「花魄」 袁枚『子不語』、前野直彬・訳
・「藤の奇特」 井原西鶴『西鶴諸国ばなし』、須永朝彦・訳
・「菊」 内田百聞
・「花のこころ」 小松左京
・「白いダリア」 ラスカー・シューラー、川村二郎・訳
・「相思」 王維、須永朝彦・訳
・「かざしの姫君」 「御伽草紙」、須永朝彦・訳
・「柳の精」 『裏見寒話』、須永朝彦・訳
・「清貧譚」 太宰治
・「牡丹と耐冬」 蒲松齢『聊斎志異』、増田渉・訳
・「晶子牡丹園」 興謝野晶子
・「零人」 大坪砂男
・「人間華」 山田風太郎
・「毒の園」 ソログープ、昇曙夢・訳
・「柏槇の話」 グリム兄弟、金田鬼一・訳
・「受難華」 ベッケル、高橋正武・訳
・「乳母ざくら」 小泉八雲、上田和夫・訳
・「百合」 川端康成
・「風景」 山村暮鳥
・「玉川の草」 泉鏡花
・「庭樹」 鏑木清方
・「サフラン」 森鴎外
・「銀杏とGinkgo」 木下杢太郎
・「植物の閨房哲学」 荒俣宏
・「巨樹の翁の話」 南方熊楠
・「蓮喰いびと」 多田智満子

 全部で34作品。
 例によって長くなるので、以下は折りたたみ。



Theme:読んだ本。 | Genre:本・雑誌 |
Category:星2つ:★★☆☆☆ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |